第102話 辺境伯の街の商会(商業ギルドの受付)
side 主人公
目の前には商業ギルドがある。わたしは店主さんにもらった紹介状を持ってやって来た。
あの後店主さんからは危うくお店の信用と存続、顧客への被害の未然防止のお礼として謝礼金を渡されていた。
わたしとしては、縁もゆかりもない初対面の子供のほぼ保証人のように紹介状を用意してくれたこと。また商品についてや商いについて教えてくれたことは、お金にかえられない善意だと思った。
なので店主さんのように世間的に評価されている地位にいる人物からの貴重な教えと人脈で十分なのではと思っていたのだが、事態はもう少しわたしの予想より大きかったようだ。
わたしはありがたくお礼を受けた。これからも物入りだと思うし、ひとりで街に来たばかりの子供なら断るべきではないはずだ。
商業ギルドの中は、格式と品位を保ったまま優美な内装で少し緊張する。出入りする者たちはある程度以上の身なりをしていた。
受付に歩いて行くだけで注目を浴びてしまうのは仕方がないのだろう。ここは冒険者ギルドとは違い、子供の姿をあまり見かけない。
見習いはいると思うし、お使いに出されることもあるはずだがただ単に時間帯の問題かもしれない。
せっかくなので登録したいこと、と紹介状があること、先日の宝飾品の模造品の入れ替え騒ぎの関係者であることを受付に伝えるとしばらく待つように言われた。
すると秘書のような綺麗な女性が現れて奥に案内された。案内されたそこは落ち着いた印象の部屋で、待っていたのは商業ギルドのギルドマスターともう1人の年配の男性だった。
座るように言われたので素直に着席すると、先ほどの女性がお茶とお菓子を用意してから下がっていった。
「よく来てくれたね、先日は情報提供してくれて助かった、ありがとう。今日は登録に来たようだけれど、自分で商売をはじめたいのかな?」
「お時間をいただきありがとうございます。今すぐのことではありません。この街にも来たばかりですし、冒険者ギルドにも登録しました。採取で生活できそうなら、それでもいいと思っています。ただいつまでも冒険者でいられるとも思えませんし、生活手段はいくつか用意しておきたいと考えています。まず自分の能力についてもきちんと知っておけば、後になっても役にたつと思いますので。」
「まだ小さいのにしっかりしているんだね、とても感心したよ。先日も思ったが、君なら冒険者以外の仕事でもすぐに習得できそうだね。君もよく分かっていることだと思うけれど、冒険者の仕事は健康で堅実であればなんとか生活していけるだろう。でも歳をとっても続けられる者は少ないね。だからある程度の年齢になると引退して転職するのだが、ギルドなどに勤められるなら運がいい方だろうね。下積みや経験の必要な職人のような技術職にはつけないだろうし、そもそも職人になりたければ、冒険者にはならないだろうし。ただ弟子入りできる親方がいなかったとか、空きがなかったとか希望とそわなかった場合もあるだろう。それに冒険者にしてもランクが上がらなければ、生活は楽ではないと思う。やはり、何かしらの副業を用意する方が確かだね。君はお店に作った品物を見せに行ったのだと思うが、どうだったのかな。」
「はい、見ていただきました。そして助言やお知恵をいただきました。細工物では難しいようです。ですので、ご相談もできればと思っています。」
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