第101話 辺境伯の街の商会(持ち込み)
side 主人公
今日は仕切りなおしでお店に来ている。この間はとんだ騒ぎに巻き込まれてしまった。ハッハッハッ…いや、あれはわたしがきっかけなので、騒ぎを起こした!が正解かも。
お店に入るとこの間話を聞いてくれたお店の人がすぐに気づいてくれて、ちょっと待っててと言うので隅の方で商品を見て待っている。
店主さんを呼んでくれたのか奥に通された。
「この間はバタバタしていてすまなかったね。お礼が遅くなったけれど、本当にありがとう。教えてくれなかったら、お店も娘も大変なことになっていた。改めて心からお礼を言わせて欲しい、ありがとう。」
「よかったです、子供の言うことを信じてもらえるか不安だったのに、ちゃんと聞いてくださいました。まったく取り合ってもらえないかもしれないと覚悟していたので。」
「それはうちの家人が取り次いでくれたことももちろん大きい。あの者も本当によくやってくれたと思うよ。でも小さいのに高い鑑定のレベルを持っていて、鑑定したことの意味を分かっていることがとても重要だ。正直商業ギルドでさえ、高レベルの鑑定持ちはごく少数だから驚いていたよ。」
「ありがとうございます。わたしは街に来たばかりなので、どうやって稼げばいいかと悩んでいたのですが鑑定持ちならお仕事はあるでしょうか?」
「もちろんだよ。今回の件もあり商業ギルドも興味を示していたから、今なら雇ってもらうこともできるかもしれない。紹介状をわたしが書いてあげてもいいよ。だが君は確か装飾品を作ったので見てほしいと言っていたと思う。君はどうしたいのかな?」
わたしは少し考えた。
「あの…作った物を見ていただいて、その結果に関わらず商業ギルドへの紹介状もお願いできないでしょうか?なにしろ素人の作った物ですから、売り物にしてもいいかを教えて頂ければと思っていました。でもできたら図々しいとは思うのですが、売れる場合どこに持ち込めばいいかも教えて頂ければと思います。」
「ハッハッ、いいだろう。ではまず品物を見てみようかね。」
わたしはアイテムボックスから布に包み、木箱に入れた何点かの試作品を店主さんに見せる。
「…アイテムボックスまで持っているのか?拝見するよ。…なかなかよく出来ていると思う。しかしこれは…。他のものはある?」
わたしは失敗作も含めて全部ひろげてみた。店主さんは鑑定持ちだ。テーブルにひろげた物をさっとふたつに仕分けしてみせた。
このふたつの違いが分かるかい?とわたしに質問する。改めて見比べると、魔力を付与した物とそうでない物の違いだろうか?
店主さんはその通りとうなづき、魔力が付与されていない品物ならだいたいこのくらいで売れるだろうと目安を教えてくれた。
またこの品くらいの素材と出来なら、お店を構えている商会よりも露店で各自が売ることの方が多い。露店を出すなら商業ギルドに登録して、出店の許可をとれば商売できる。
一度きちんと登録すれば、例えば売る商品が変わってもそう手間ではないこと。どういう事かと言うと、今回は身近な装身具だが次の商売が食べ物かもしれないといった場合だ。
商売などの商いは、そんなにすぐに軌道に乗るものではない。当然、いろいろ試したり、品物を取っ替え引っ替えしたりすることもままある。
とくに素人が採取したり、手作業で作った品物であれば一定しないことの方が多いので商業ギルドとしては商う内容よりも登録する人間の方で管理をしているということなのだろう。
とにかくそういうわけで、試しに作ったこの装身具は素材も珍しい物ではないし、仕上がりも普通なので元がとれるかどうかだろうと。
しかし魔力を付与したこちらは護身具という扱いで、商うのは魔道具店になる。
たぶん同じ素材を使って作ればこちらの方が高く売れると思う。ただ専門ではないから幾らくらいになるかは分からない、すまないねと。
魔道具であれば、商業ギルドに仲介を依頼して取引した方がいいかもしれないこと。ちなみにあくまで店主さんの見立てでは、あまりわたしは職人の才能は感じられないということだった。
もちろんこの先も精進したとしたら、一人前の域に達することができるかもしれないし、自分の見立て違いという場合もあるので職人を希望するならこの際その事も商業ギルドに相談してみればいいのではないか、ということだった。
わたしは紹介状を手に商業ギルドに行くことにした。
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