第24話 神の御使
side ある帝国の若者???
あの日辺境伯のところで起こった奇跡は、スラムの奇跡と変わらない。
しかし、その後が大きく違っていた。空を埋め尽くす光文字は今も消えていない。そして、街中に現れたスケルトンナイト。
これから何が起こるのか、この世の終わりかもしれないと不安になる。
でもいつもと変わらない様子のリーダーを見ると、大丈夫な気がしてくる。
リーダーは、ギルドマスターやその場にいる人たちに声をかけて退出することを告げていた。これから広場に向かうらしい。早速はじめるのだ。
Sランク冒険者たちも一緒に御前を下がるらしい。広場に知り合いを連れてきたいとリーダーに頼んでいる。もちろんリーダーは断らない。
リーダーが事前に話してくれた切符とは何か気になるが、それがなければ回復できないということにしたらしいので、果たして広場は今どんな感じなのだろう。
広場にはすごい人数が集まっていた。家族が付き添っている者たちも多い。
リーダーについてわたしも進みでる。リーダーは白いフード付きマントを被り、18歳くらいの娘姿、わたしも同じ白いフード付きマントで中身も変身後の北部の青年の姿である。
白いフード付きマントの姿を簡単に真似されるわけにはいかないというリーダーのこだわりのため、なんだかキラキラが効果としてついている。ナンダロウ、コレ?
浄化の光が超微細な粒子として、リーダーが羽織っているとき限定で常時発動するらしい。ちなみにわたしも光っているのは、リーダーのマントと連動しているから。ナニソレ!
このマントを羽織っていれば、ちょっとした負のエネルギーは自然分解されていくという。つまりリーダーとわたしが歩きまわれば、それだけで浄化される場所が増えると。
ほんと、なにそれ。やっぱりリーダーは神の御使なのでは?違う?いや、もう誰も信じないと思いますよ。だってこんな派手な見た目で、これから広場で大騒ぎするのですよね。
どれだけ目立つか。そのための変装?なんだか、そんなにうまくいくか不安になってきた。いや、回復はうまくいくだろうけれども、わたしたちがどんなことになるやら。あぁ、なんだか胃がいたい?
広場の中央までくると、怪我人や病人を確認する。皆一様に静かにこちらを見てくる。
広場から視線を転じれば、続々と道を歩いてくる怪我人たち。
リーダーは、サッと手を振り上げると広場に光が降り注ぐ。光を浴びた者たちは瞬く間に回復していく。回復した者たちは、みな深く礼をとるとすぐに広場をあとにする。
その間にもどんどん怪我人がやってきては回復を受けていく。それにしてもしずかだった。ひっきりなしに人が押し寄せているのに、光を浴びて回復するや速やかに広場から立ち去って行くのだ。
心配していたような混乱や興奮が少ない。もちろん付き添ってきた者たちと喜び合ってはいたが、とても落ち着いて皆行動している。
夕暮れが近付いた頃、やっと広場に集まる人の列が途絶えた。
わたしは念の為気配探査で、誰かまだこちらに来るような気配がないかを確認したのち撤収することにした。
今回広場に集まった者は皆、宝珠を所持していた。もちろん何もしなければ、そんなに都合よく宝珠を持つ者だけ集まるなどということはない。
つまり宝珠を持たない者も広場に来ようとはしていた。
ではなぜ、広場にいなかったのか?それはスケルトンナイトたちのおかげである。
彼らはリーダーが召喚したので、リーダーの意思にそって行動する。彼らは宝珠を持つ者たちが広場に集まりやすいように動き、逆に宝珠を持たない者たちを妨害するように動いたのだ。
そのおかげで邪魔されることもなく、広場に来た者たち全員を回復することができた。
さて、表向きの活動はうまく行った方だろう。なにしろ、驚くほどわたしたちは目立っていないのだ。変装の魔法まで考えたのに、いらなかったのでは?と思うほど注目されていない。きっと光り輝く天空の文字と金色に光るスケルトンナイトたちのおかげだろう。
さてこの後は裏の活動のお時間だ。もうすでに始まってしまったのだ。わたしたちが遅れるわけにはいかない。
では颯爽と白いマントの2人組は撤収しよう。
広場から最後の人影が遠ざかるのを見届けてふたりは天高く舞い上がった。まさに空に吸い込まれていくかのように消えてしまった。と皆思うだろう。
白いマントの無駄に派手な2人組が予定通り広場で注目を集めている頃、他の場所ではすでに静かに人の移動が始まっているはずだ。
side ある帝国の若者???
拍子抜けなほど混乱がなかったし、もっと距離を詰められると警戒していたというのに杞憂だった。
上空のとても目視できないくらいの高さまで上昇すると一瞬で森に転移した。
リーダーはもう魔法を解いて元の姿になった。白いマントは各自で保管するか、リーダーが管理するか決まらず今のところはリーダーに任せることになった。
拠点にしている洞穴で食事を摂り、一息入れたら島に様子を見に行くという。
しかし、いつもの転移ではない。高速飛翔で行くという。内心えぇ〜と思ったが、いつか自分も飛べるようになって自分にあった速度で飛んでやると心に誓う。
思ったとおり、高速飛翔は魔物狩りを兼ねていた。どんどん魔物を狩っていく。この間からずっと暇をみては狩っているので、テンポがよくなっている気がする。
とにかくポンポン狩っていく。ずっと思っているが、魔物狩りはこんなポンポンできるものではないはずだ。誰か、誰でもいい、わたしと想いを同じくする者がいてくれたらと思う。
基本的にはリーダーがどんどん見つけてどんどん狩る。ウーン、そう、どんどん、ポンポン。
でも時にはわたしも参加する。あっちに打て、こっちに打てと指示されて。なんだろう、経験があるわけではないのだが、まるで漁でもしているような気分なのだ。それも銛を打つのではなく、投網でも投げているような気分。
そうだ、わかったぞ。大漁!という気分なのだ。スッキリした。それなのにどこか負けたような。
とにかく、狩った獲物をいつものようにどこかの集落に配りながら島へ向かう。
リーダーは高速で移動しているというのに、的確に見つける。しかも毎回違う道?を通っている。
獲物を獲る場所も配る場所も偏らないようにしているのだろう。それだけどこを通ったかまで把握してるということだ。
夜も更けてきた。やっと島に向かうようだ。
なんだろう。島?島が明るい?
「ギリギリ間に合ったみたい。やっぱり、二の島、三の島、四の島を用意していて正解だったみたい。」
すごい、人、人。どれだけの人がいるんだ!
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