第22話 表の活動

side ある辺境伯???


 ギルマスから謁見の申し込みがあった。またリーダー絡みのようだ。


 今回は人数が多い。ギルマスとSランク冒険者のパーティとリーダーとあと1人。


 それに要望がきていた。知り合いの中で信用がおけて、医師やポーションでも癒せなかったどうしても助けたい者をぜひその場に呼んでほしいと。


 病気でも怪我でも、過去の癒えない傷でもかまわないと。


 今回は何をする気だ。


 謁見の刻限になった。広間に集まり、一同の視線がわたしに集まる。


 「みな、よく来てくれた。ではギルドマスター、早速本題に移ろう。今日はどのような要件か話を聞こう。」


 ギルドマスターから最近入手した情報で、帝国の動きが不穏なため警戒が必要と思われること。帝国に戦の影が見えるため情報収集と各国への呼びかけを行えないか?と、それはギルドマスターの考えなのか?


 やはりリーダーか!周辺国への呼びかけとなれば、わたしではなく陛下にお出ましいただくことになる。


 陛下を担ぎ出すからには、それ相応でないといけない。


 それ相応だと今この場で証明できる?


 ギルマスの要望通りこの場に同席させている。理由は伏せた。彼らをどうするつもりだ。本当なら彼らもこの国を守る大きな戦力だったはず。しかし負傷が元で第一線から引かざるをえなかった。彼らが無事であったらどれほど心強い味方となったことか。


 それ以上に、これほど己の心身を捧げて国のため、民のため、友のため、家族のために尽くしてきた彼らに家族と共に健やかに過ごしてほしかった。


 わたしの、そして彼らの家族みなの願いでもある。


 彼らこそ治してやりたい!友と囲む晩餐をまた楽しめたなら、どれほどわたしの心も救われるだろう。彼らを戦地へ送ったのはわたしだが、亡くなったものたちは無理でもせめて彼らにも希望がほしい!


 わたしがそれを望んだらいけないだろうか?


 わたしの剣の師であり、陛下の剣術指南だった剣聖。わたしの護衛を長年勤め、わたしの身代わりに半身不随となった護衛騎士。先の帝国との戦の際陥落する城塞都市から民を避難させるために、最後まで都市防衛のため防御魔法を展開し続けて老化が促進してしまった大魔道士。


 彼ら以外にも助けたい者たちがたくさんいる。助けてくれ!戦争など起こらなければ戦地になど行かず、この地で田畑と共に変わらぬ日々がおくれていた。


 戦争など起こしたくない!帝国はなぜわからない!


 彼らの前にリーダーが進み出る。スッと手をかざすと彼らを光が包み、つぎの瞬間には昔と変わらない逞しい姿で立っている。さすがに本来の老化はあれど、損なわれた四肢は癒え、魔法の影響で年老いていた大魔道士は若々しい姿となって!


 椅子から立ち上がっていた。


 信じられない!治ったのか?治せるのか?夢ではないのか?


 彼らも信じられないと言った様子で呆然としている。


 ギルマスが進みでる。


 「リーダーになら治せるのです。回復を必要としている者たちを集めるつもりです。広場で癒しを行い、その後、王都に向かいながら癒しを広めるので、力をお貸しください。リーダーは、王都に向かいながら浄化を合わせて行うと言っています。」


 まてまて、以前は教会の対応が厄介みたいなことを言っていたではないか。もういいのか?いつのまに方針が変更になったのだ?それにしても大々的にやるのだな。もう隠せないし、目立つし、無かったことにはできなくなると思うがいいのか?


 広場で浄化と癒しを行い、巡礼のように町や村を通りながら王都でもはでにパフォーマンスを行うのか?きっと他の国からも来てほしいと要望が国王陛下の元に寄せられることだろう。えっ?いくの?つまり各地や各国を周りながら帝国に対する同盟関係を強化していくということか。


 ちなみに、今の話が表向きの話?じゃあ裏の話は一体?えぇ〜、知らない方がいいなんて何する気なんだ!


 しかしだな、表だけの話にしても教会はついてきそうだぞ。大丈夫?もう隠さないことにしたって?不安だ、不安しかない。ギルマスの目もなんだが白目になっていたように思う。


 リーダーが言うには姿を偽るつもりなのだそうだ、それにより本当の姿は守られるはず!とのこと。そんなに上手く偽れるものなのか?なんと!


 わたしの目の前で、リーダーに付き従っていた若者が変身を解いた。なんと帝国民ではないか!こんな魔法があったのか!するとつぎにリーダーが姿を変えて見せた。


 歳の頃は18歳くらい、茶色の長い髪の乙女になって見せた。人前にはこの姿で出るらしい。よくできている。知らなければまるっきり分からないはずだ。これなら身元は隠せそうだ。


said あるギルドマスター???


 広場にはまず元冒険者を集めた。他にも救貧院や治療院からも重症者を集めた。クランも独自に家族などに声をかけて治療したくてもできない家族などを連れて来させた。おかげですごい人数が集まった。


 実を言えば、俺でさえ表の話しか噛んでいない。噛ませてもらっていない。きっと俺たちの安全のためだろう。いきなり神の恵みを配り始めた乙女。胡散臭い!それでもギルドは今までの積み重ねの信用があるから、呼びかけが成功しているのだ。

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