第17話 島

side 主人公


 スラムの顔役と会った後、わたしは明日の夜に備えて動きはじめた。


 もともとアジトにする場所は目をつけてあった。候補はいくつか考えたが、森の中、洞窟、山、砂漠、なんとなくピンとこなかった。地続きなのが気になるのかな?隠しても見つかるかもしれないから?より襲われにくい環境、守りやすい環境、生活基盤を整えるまで落ち着いて暮らせそうな環境。


 しかしたくさんの人が、自給自足していくには土地の広さも必要。農作業できるような水と平地の組み合わせ?


 わたしがあちこちで討伐と浄化をして回っていた時、海も軽く見てきたことがあった。あのときはちょうど地形の確認やこの世界の環境の確認が面白くて、この大陸や周囲の海の様子を結構観察したなぁ。飛行魔法を習得して飛ぶのが楽しくて仕方なかったから、飛行魔法をガンガン使ってた。


 そんな時、海上に島を発見した。ひとつ発見するとほかも見つかることがある。そうして発見した島の中に今回の目的にぴったりな場所があった。

 

 わたしの鑑定は土地の鑑定もできるようで、島を観たとき頭に浮かんだのだ。


 火山島?!とか海賊の寝ぐら?とか無人島・居住可能・開拓に最適・外敵のリスク(低)とか?!


 それら鑑定結果の中には、大陸との位置関係やつながりも掲載されており、島の中には帝国の軍事施設あり?!とか載っていたりした。そんなことまで分かっちゃうなんて、わたしの鑑定スゴすぎる!あっ、ちなみに海賊は討伐した。


 そんなわけで移住先には心当たりがあった。あとは入植準備なのだが、食糧と環境、道具、生活必需品、鍋とか食器とか武器とかだろうか?


 見つけてから少しずつ島に人を連れて行く準備を進めていた。そのために必要かな?と思っているのが、物資もそうだが施設?設備?関係かなぁ?と思う。


 キャンプもそうだが、野営で考えると物以上に地味に重要だと思う。そう、トイレ!たくさんの人がいきなり生活をはじめるなら、処理をきちんと考えないと不衛生になってしまう。


 アジトにと思っている島は、美しい島で環境はくれぐれも維持してほしい。生き物を食べ尽くしたり、水を汚染したりしてほしくないのだ。


そうなると、ゴミ処理問題もある程度考えなくてはいけない課題なのだ。


 そこで参考にしたのが街の建設。まず街を解析し水周りを理解する、コピーして再現できるか?鑑定で分析結果を共有し、街で仕入れた設計資料や過去の史料も鑑定と情報共有する。そのうえで、島の開拓、村の建築を踏まえて、汚水処理、ゴミ問題、土地の区画など住居に関するアドバイスを鑑定に頼んだ。


 情報不足となったので、追加として人数の想定を10000人としてみた。場所、規模のつぎは?男女比?えっ!出生率?イヤッ、いきなりそんなことには?人の増加速度予測?えぇ〜!


 わかった!開拓初期は結婚は許可しても子作りは遠慮してもらおう。あと数年たって落ち着いて、実際ほんとうに子供を作る時期になったら、みんな一緒じゃなくてずらしてもらおう!うん、これでいいかな?


 というわけで、どんな感じで村を作り、下水処理するか鑑定が提案してくれた。なにしろ、わたしには治水の知識はないし、そもそも村づくり、街づくりなどする予定ではなかった。予定は未定とはよく言ったものだ。


 ただ人を逃すことを考えて、隠すことを考えて、生活することを考えていたらこんなことに!


 大丈夫!あくまでリハビリだけしたら、スラムロンダリングってことで違う国や街で生き直せばいいのだから。だってわたしは新しい国を作るとかそういうのじゃない。


 あくまで、スラム出身というレッテルを貼られないで済むように、みんなが色眼鏡で見られないための場所。


 ある程度の教養、ある程度の学力、そして個人の才能やスキル、興味によって、ある程度の魔法だとか、ある程度の護身術(闘う知識)とかを身につけてもらう。そうすれば、他所の街から働きに来た普通の人って思ってもらえそう。そうやって職場復帰ならぬ人生復帰をしてもらいたい。


 毎日、街や村から物資を調達するのは難しいだろうから、島でも少しは生産できるようにして、裁縫や鍛冶もできたらとは思うがそこまでの設備は用意できないよ!針と糸、布とかならまだなんとかなるけど。


 普通の身なりをできるようにして、島を旅立つときには旅支度も持たせてあげられるようにしたいなとは思うが、島で生活しつつも各自稼いでもらわないとまずいよね?


 いったいどうやって稼ぐか?どこかに毎日出稼ぎに行く?どこかのダンジョンに行く?素材を採りに行く?森とか?


 いやいや……ウーン。なんかそれでは本末転倒?身近で、豊かで、人があまりいなくて?珍しいもの?……アッ!


 あった!あったよ、海があるじゃない!


 海の魔獣に魔物!魚に貝類、海藻にもしかしたら真珠!あくまで自然破壊にならないように自重して!そのためには、人をまとめる役の人が必要だ。人が増えるなら何人も!でないと秩序が保たれない。モラルもルールも礼節も、人間の品格にかかっている。


 まずは彼らが島で生活できそうか、確認しないといけない。設備を整えるために、時間を作っては島に行く。転移で移動し、上空から全体を確認、鑑定からの提案に沿って土魔法とコピー魔法で下水処理を構築していく。


 下水、汚水、ゴミ処理の問題は、この世界にもいるスライムを活用する。たとえば、残飯や解体のゴミが出た時、すぐにスライムに来てもらう。


 すぐ来てもらうためにも、スライムの溜まり場?のようなものを作るつもり、溜まり場?はゴミが出やすい、またはゴミをまとめて置きやすい場所の近くをイメージしている。


 下水は下水の専用の通り道をつくり、汚水は煮炊きや風呂などから発生するので各家の近くにもスライム溜まりを配置、処理水を戻す形で循環。あくまでざっくりとだが!

 

 スライムは島にもいたので、捕獲して養殖?している。飼育していて気づいたが、養分を摂ると増えるのはまぁ分かる。処理能力に個体差があるのも分かる。弱っているものに回復魔法を掛けると元気になったり、増えたり、魔法が使えるようになったりする。


 そして飼育?養殖しているスライムは、なんとなくしっかり?してきて強くなったような気がする?


 奥が深い!とにかく島の居住環境を整えよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る