THEME【イントロ〜アウトロ】
この物語のテーマはテーマだ。表面上で語られる題材ではなく、奥底に芽生えるテーマだ。
無数に転がる物語を拾い上げ、中身を開ける。
このキャラクターが好き。この展開は好きだ。このキャラクターは嫌いだ。この展開は嫌いだ。開封して、ただそれだけをただ感じる。表面だけを舐めまわして、満足げな顔をする。アーモンドチョコのチョコだけを食べて、アーモンドの美味しさに気づかない。ラーメンの汁だけ吸って、麺を食べない。
物語は面接じゃない。一目見て分かるような浅いものじゃない。作者の伝えたいメッセージ性がきっとあって、そのメッセージ性を全世界に発信したくて、その物語を全世界に解き放って、結果何が残った。面白い、面白くない。ただそれだけ。それだけをロボットのように連呼し続け、知ったような口を利く。
俺はお前らに物語を書き続けた。俺のこのどん底の生活を、小説にして、発信した。テレパシーのようにそれらは伝わると思った。同じような境遇をした仲間ができると思った。一人暮らし。ゴミ箱のような部屋。カップラーメンを毎日すする。損な生活をしている俺に仲間が作れると思った。しかし現実は俺の部屋以上にゴミだった。
俺の作品を見てくれる数少ない人は、ガムを路上へ吐き捨てるように言った。
「面白くない」「卑屈」「的を得ていない長文」
何を見た。まだお前らは味がしなくなるまでガムを噛んでいない。文章だけを読んで、水面上だけを見て、中身を知ろうとはしない。面白い。面白くない。それが物語の本質だとしたら、書くだけ無駄だ。時間をどぶに捨てる行為だ。消えた方がマシだ。物語自体に価値がない。見たところで、お前らの価値観が変わらないのなら、価値のない価値だ。じゃあ何故見ている。見ても変わらないのなら、なぜ見る必要がある。面白い作品が見たい、それだけの事を体験するために、見ているのか。他は何も見ずに、惨状から目を背けて、綺麗な景色だけを見るのか。
「綺麗だねー」「素敵だねー」
そう言って、インスタで写真だけ撮って、食べ物を捨てる。物語を見て「面白い!」と騒いでいるお前らも同等だ。お前らにインスタ映えを指図する資格はない。同じ穴のムジナだ。
だってそうだろ。作者は一生懸命テーマを考えた。そこを味合わずに物語を捨てた。何も変わらない。何か違うのなら、反論をしてみろ。
自殺。電車に飛び込んで、大幅に発車を遅らせる大迷惑自殺者がときどきニュースに上がる。奴らが何故そんなことをしているのか。それは自分を見つけてもらいたかったから。奴らなりの人生の辞表を、この社会に叩きつけた。奴らの肩を持っているわけじゃない。自殺はダメだ。だから本質を見ろと言っている。何故わざわざ電車に飛び込んだのか。頭で考えろと言っている。「迷惑」そんな二文字で片づけていいような問題じゃない。
俺は昔『自殺』をテーマにして小説を作った。登場人物の設定を練り、起承転結を心がけて、シーンを明確にした。もちろん「面白くない」という言葉で、簡単にその物語は閉幕した。ならば、物語を作る必要はない。テーマを物語の中に隠す必要はない。かくれんぼをする気はない、見つけてほしいのだ。
だから今、俺はこうして物語のテーマをテーマにして、文章を書いている。俺はお前らと遊ぶつもりはない。探してくれないのなら、こちらからさらけ出すしか道はない。
だから今、俺はこうして、一人でキーボードを奏でている。この音を聴いているのはもちろん俺一人。苦労を知るのは俺一人。
この作品が世に出れば、世界はもしかしたら変わるだろうか。物語の全てを飲み干して、潤ってくれるだろうか。一刻も早く、物語に隠されたテーマを、作家の思いを、探って掘り起こして。見つけて探し出して。
どうしてだ。この作品を投稿して一日経った。なのに、お前らは何も変わらないじゃないか。現在放映中のアニメを、面白い。面白くない。現在放映中のドラマを面白い。面白くない。現在好評の小説を面白い。面白くない。現在好評の漫画を面白い。面白くない。
それが当たり前の楽しみ方だと自分を信じて疑わない。
LGBTをテーマにした作品を書いたとしても、希望を諦めるなという言葉をテーマにした作品を作ったとしても、親と子の絆をテーマにした作品を作ったとしても、君だけの道があるというテーマの作品を作ったとしても。女性と男性の固定観念に対する偏見をテーマにした作品を作品を作ったとしても、SNSの怖さをテーマにした作品を作ったとしても、障がい者をテーマにした作品を作ったとしても、いつまでもその人がいるわけじゃないという事をテーマにした作品を作ったとしても。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。面白い。面白くない。
ただそれだけを連呼する。
デモのように。
ライブ終わりのアンコールのように。
仕事が始まり終わり、また始まるように。
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