月見団子

 地域によって月見団子の形が異なると知ったのは、結婚して関西を離れた時だ。私が育った地では、里芋型の白い餅がまん中にペロリとこしあんの腹巻きをしている。デパートで西の菓子屋が作る、里芋のしっぽまであんで包まれ、丸い頭だけ出しているものともまた違う。結婚後初めての月見で、里芋の形をした、ピンクや白、黒、色とりどりの月見団子をほおばった時、ういろうだった衝撃を今も忘れない。毎年ういろう団子を供えてきたが、どうも月見の気分が乗らない。

 暇人年寄りとなったある日、海辺近い町に和菓子屋を見つけて立ち寄ると、あのぺろんと腹巻きをした月見団子が!「宵だんご」と名乗って並んでいた。狂喜乱舞し買って帰って月に供える。月見にはこの腹巻き団子がしっくり落ち着く。そう、この、餅にこしあんの味。

 それ以来、毎年月見になると、海近い町まで2時間近く電車を乗り継ぎ腹巻き団子を買いに行く。今年は月見の日がちょうど和菓子屋の定休日と重なりどうしようかと迷ったが、いつまで買いに行けるものやら・・己の歳を顧みて、「宵団子」なら前日の月に供えても良かろうと理屈をつけて買いに行く。車中にひとりゆらり揺られて、白髪頭のバアサンが、月見団子を買いに行く・・酔狂を通り越しすっとん狂。

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