不具合自慢~その3 耳の不具合 

 地域のイベント会場で、「あなたの耳年齢計ります」という学生さんたちのブースがあった。手持ち無沙汰らしい様子にヒヤカシまでにと立ち寄ったが、耳を澄ましてみても、ヘッドホンからはいつまでたっても音が聞えてこない。結果、六十代の私の耳年齢は80代!イベント気分は一気にしぼんでしまった。そう言えば、この頃地域の会合で、声が聞きづらいと思うことがある。相手の言ったことを聞き返すことも多くなった。耳の老化は年並み以上、加速度的に進んでいるらしい。

 七十歳を越えたある日、耳がぼお~んと遠くなったきり戻らなくなった。あくびをしても飲み込んでもダメ。自分の声だけがやけに大きく脳天に響いて来る。そんな状態が二週間ほど続きガマンの限界を超えて、耳鼻科に行った。耳と耳骨の聴力検査の結果は、「右耳の方が良く聞こえるくらいですね」と、耳には異常がないと医者は言う。「最近急激に痩せましたか?」と思いも寄らぬうれしい?質問が来た。のだが・・、“耳管開放症”の可能性があるが、治す方法はないとのこと。要は、加齢による筋肉の衰えにより、耳管が開いたままの状態になることだとか。うぬ?待てよ、そう話す医師の声が前よりは聞きやすく、しゃべる自分の声からこだまも消えている!病院から家に帰り着く頃には、すっかり元の耳に戻っていた。八十歳代の耳年齢だが、耳管の方は、まだ少し余力があると見た。

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