不具合自慢~その2 歯の不具合


 フランスパンをかじったら、歯が裂けた!縦半分、とれた部分を携え、A歯科病院にかけこんだが、欠けた歯を元の歯に接着は出来ないと、新しい歯を作って接着された。「我ながら良く出来てる!」。診察の度ごとに若い医師は自画自賛しながら、私のつぎ歯をホレボレ眺める。確かに、人工の冷たい感触も忘れるほど、私の口の中に馴染んで十年以上、自画自賛医師もすでにこの病院を去っている。

 産後に虫歯で親知らずを1本抜いたほかは、今でも総生歯を誇る身だが、フランスパン事故以来、歯があちこちで欠けはじめた。舌で触ると、ざらっとした感触で、ここも欠けたと知る。更に、半世紀以上に渡る食物浸食のせいで、下の前歯は、背丈を半分くらい低くして、仲良く4本ちびちび並んでいる。その分噛み合わせが深くなり、口元が定まらず疲れる。鏡に映った自分の顔を見てギョッとなる。総入れ歯で口元が小さくすぼんだ父にそっくりな年寄り顔がそこにはあった。歯ぎしりがあると言われ、夜は透明な上の歯カバー(マウスピース)をはめているが、その高さがこのところしっくり落ち着くほどに歯が磨滅してしまっている。

 

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