不具合自慢~その1 眼の不具合

 初めて行った病院で白内障と診断され、説明もないまま「手術はいつにしましょう」と問われ、即逃げ帰り二度とその病院には行かない。近くの眼科で、先の病院では「おまじない」と断じられた目薬をもらいつつ、定期検診を受けながら様子を見ることにする。元々の近視は、老眼とともに少しばかり視力を戻していたが、加齢に伴う乱視が混じり、眼力は弱った感がある。

 ある日、地域で会議のさ中、眼にごみが入って、取れなくなった。ごしごしこすっても黒い輪っかのようなごみはとれず、広がりを見せはじめ、すわや失明かと時間外の眼科へ駆け込む。が、「飛蚊症です」と一言。直す手立てはないとのこと。「私など高校生から、ほら、いつも目の前に見えますよ」と医師は慰めの言葉をかけるが、この汚い輪っかが常に目の前に見えるのは神経に触る。左眼の輪っかから一年、ぷちんと今度は右眼に音がして、世の中が白く弾けたかと思うと、あの汚れた輪っかが現れた!今度は慌てず、眼科の診療時間まで待ち、思惑通り飛蚊症と診断される。両眼の輪っかは年寄りのわがままそのもの!勝手気ままに違う動きをする。最も不便なのは、本物の蚊の出現時だ。蚊は分身の術を駆使して三匹四匹と幻じ、しとめるのに困難を極める。この飛蚊症、「白内障の手術をしたらなくなりますか」と問えば、医師いわく「いや、もっとはっきり見えるようになるかな」。それなら、寿命と白内障の駆け比べ、じっくり腰を据えて見極めましょうかい。


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