第11話

 酒を飲んでから寝るとしよう、と考えたアスターは着替えた後、食堂にやってきた。そこで彼は、スミレとアサガオが2人で酒を飲んでいるのを目撃した。


 スミレがビール瓶をカウンターに叩きつけながら吠える。


「なんなのよあのババアは!! もっと言い方ってモンがあるでしょう!?」


「でもきっと、貴女のことを思って言ってくれたのよスミレちゃん」


「いーや違うわね、絶対に私怨が混じっていたわ! 私の美貌への嫉妬! 失ってしまった若さへの羨望! そういうのが混じっていたわ、絶対!」


「そうかしらねぇ……あ、マスター。カシスオレンジ頂戴」


 無愛想な店主が頷き、材料を手に取る。スミレが吠えた。


「マスター、私にも同じやつ頂戴!」


 アサガオが嗜める。


「ペース早すぎよスミレちゃん」


「いーや早くない!」


「この10分でビール何本飲んだか覚えてる?」


「2!」


「3よ。もうよしときなさい。マスター、この娘にミネラルウォーターを」


 店主が頷き、スミレの前にペットボトル入りのミネラルウォーターを出した。スミレが吠える。


「水!? 水でストレスが流せると思ってるわけ!? ストレスはアルコールに溶けるって中学校で習わなかったワケ!? あとスペルマにも溶ける!!」


「そんな中学校あったら怖いわよぉ。……これは本気の忠告よスミレちゃん、下層アンダーで学歴ネタはおやめなさい。殆どのコが小学校にすら行けてないんだから」


「……ごめんなさい」


 スミレはしょぼくれ、ちびちびと水を飲みだした。アサガオがそれを慰める。


 アスターはその様子を柱の陰から見守っていたのだが、自分が介入する必要はないなと察し、自室に戻ることにした。後日アサガオに何か奢ってやらねばなと思いながら。

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