第23話 駐屯地の影

黒い雨が降りしきる夜が明け、シホは航空自衛隊の駐屯地に到着した。雨はすでに止んでいたが、地面にはその痕跡が残り、周囲は湿った空気に包まれていた。駐屯地の入口をくぐると、そこに広がる光景にシホは息を呑んだ。


駐屯地内は静寂に包まれ、人の気配は一切なかった。建物の中は薄暗く、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。あちこちで衣服が散乱しており、まるでその場にいた人々が突如として消え去ったかのようだった。これは、以前テレビスタジオで起きた事件と同じ状況だ。


シホはビークルを待機させ、駐屯地の更なる奥へと進んでいくことにした。彼女の手には脇差がしっかりと握られており、何かあった場合に備えていた。


建物の中を進むにつれ、シホは地面に残された奇妙な跡や、壁に描かれた不可解な記号に気づき始めた。それらはケトル人の仕業であることを示唆しているようだった。


最深部にある大きなハンガーの扉を開けると、中からは異様な冷気が吹き出してきた。ハンガーの中央には、大型の装置が設置されており、その周囲には様々な機械やモニターが並んでいた。装置は何らかの実験に使われていたようだが、その目的は一見して不明だった。


シホは装置や周囲の機械を慎重に調査し始めた。そこで、ケトル人がこの駐屯地を利用して、人間を対象とした何らかの実験を行っていたことを示す証拠を見つけた。


しかし、その時、背後から物音が聞こえてきた。シホは振り返ると、自分を取り囲むように複数のケトル人が静かに立っているのを発見した。彼らは、シホがここに辿り着くのを待っていたかのようだった。

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