第2話 影に潜む
夜の街に溶け込むように歩くシホの目は警戒心を隠さない。竹串を握りしめたまま、彼女は情報屋からの指示に従って、ケトル人が目撃されたという古びた倉庫に近づいていった。倉庫の扉は少し開いており、中からは異様な静けさが漂っていた。
シホはゆっくりと扉を押し開け、暗闇の中へと身を滑らせる。彼女の耳には特別な鈴が装着されており、ケトル人の存在を感知することができる。倉庫の中は、静かで、何かがうごめく気配がほのかに感じられた。
突然、シホの背後から不気味な声が聞こえた。「おいで、おいで」というその声は、人間のものではないように聞こえた。シホは反射的に身を翻し、脇差を抜いた。そこには、人間のようでいて、何か違う存在が立っていた。ケトル人だ。
「なぜ、私たちを狙う?」シホは冷静に問いかけた。ケトル人は不気味に笑うと、ゆっくりと近づいてきた。「私たちはただ、生きるために…」
それ以上の言葉は、シホの脇差がケトル人の影を切り裂くことによって遮られた。しかし、ケトル人はただ消えるのではなく、何かを呟きながら土に還った。
シホは深く息を吐き出し、倉庫から出てきた。しかし、彼女の心には疑問が残っていた。ケトル人は本当にただ生きるためだけに人間を襲っているのか?それとも、もっと別の何かがあるのか?
夜の街に戻り、シホはふと空を見上げた。星は輝きを失い、闇が深まるばかりだった。彼女は再び竹串を口にくわえ、次の行動を考え始めた。ケトル人の謎は、まだ解けていない。
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