第5話

「というわけで、よければチャンネル登録と高評価よろしくお願いします!」


 一時間にも及ぶ撮影が終わった。俺の家は部屋が大きいので部屋紹介に一時間もかかってしまった。


「ふぅ~...アイスってあったっけ?」


「うん」


「じゃあ一緒に食べよ!!」


「わかった~」


 手を洗って向かう。

 ふとテレビの方に目を向けると、バラエティ番組が放送されており、そこには見覚えのある人がいた。


「姉様、この人誰?」


「この人は南北悠乃さん。なに?大知気になるの??」


「いや、なんか見覚えがあったような気がしたんだけど名前聞いても思い出せないしいいや」


「ふーん」


 名前が思い出せないぞ...少なくとも南北でも悠乃でもなかったはずだ。あれは前の世界でいつも行動を一緒にしていたうちの一人のはず。

 テレビを見続けると芸人さんが南北(仮)さんにフリをかました。


「悠乃はなんか恩返ししたい人とかおるんか?」


「まぁ~、昔離れ離れになった都道k...さんに」


 都道は俺の旧姓だ。間違いない、前世一緒だったほ...なんちゃらさんだと思う。15年だぞ?覚えてる方がおかしいって言うもんだよな。あっちが俺の旧姓を覚えてる方がおかしい。


「それはなんでなん?」


「この世界に導いてくれたので」


 あれ?この世界って『芸能界』じゃなくこの『男女比が狂った世界』じゃね?

 俺が死んだのは恐らく10月1日、文化祭1日目の11時くらい?か。その時俺の交友範囲で誰も死んだ人はいない。

 いや、それにしてもおかしいな。俺が死んだからってこの世界に来る意味が分からない。この世界に来る方法もわかっていないのに。


「どうしたの?考え事しちゃって」


「いや、なんでもないよ。アイス溶けちゃうし食べよっか」


「うん!!」


 謎は深まるばかりだが、今考えてもどうせ会えないんだから仕方ない。会ったらできるだけ話す事にしよう。名前は..ほむら、そうだほむらみたいな感じだった気がする。

 

「そういえば誕生日もうちょっとだけど芸能界入りとかするつもりある?」


「いまのところないよ」


 まぁVtuberとかなれたらなぁとは思うけども


「Vtuberとかなるつもりない?」


 えなにこのお姉様、心見透かしてくるじゃん。


「えぇ~」


「迷ってるんだ?」


「まぁね。出るなら芸能界にきっぱり出る、出ないなら出ないほうがいいのかなって」


「ま、風道プロは私たちの天坂芸能事務所の傘下だしなりたかったらいつでも言ってよ!お姉ちゃんが推薦してあげよう!」


 天坂というのは天野家初代の天野桜さんが設立した有望な人材しか入ることができない事務所だ。

 傘下には色んな界隈のトップ企業がある。風道プロはその一つで、世界一のVtuber事務所だ。


「考えときます」


 とりあえず濁しておこう。いくら一番信用できる涼香姉様でもまだ決まっていないことを伝えるのは良くないだろうしな。

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