34 こんばんはー、マフィア1個くださいなっ
「──というわけで、明日は憲兵さんの派遣をお願いしたいんですが」
「分かった。住所は分かるかい? パイアちゃん」
「ええ。1つ目は──」
隠しアジトの場所を、地図を見ながらザルデルさんに伝える。これで明日は、マフィアをぶっ飛ばすだけでオッケーだ。
「5か所ともサクッと終わらせて、ベルグレさんのほうへ行きましょうね!」
「モグー!」
「能力者同士の、本気の戦闘が見れるかもですね」
「モグモグ。モ・グーモ、モグモグモググっ」
「ねー」
僕だと相手に力を発揮させない動きを、しちゃうからなあ。だからまだ見たことないので、ン・シーも楽しみみたいだ。僕らは種族特性というか、それで戦うことになるから見ておくのは大事じゃないかと。
戦闘系能力者の動き、知るのは大切なのだ。
「私も食べよーっと」
「モグ~」
一応食べたほうが、血の消費は抑えられるような気もするしね。気のせいかもしれないけど。ご飯だけじゃ足りないのは分かったけどさ。念のためっ。
ご飯を食べつつマフィアの構成員が、ベルグレさんたちの近くに来たら報告。というのを何度か繰り返す。まあ今の段階で見つかっても、たいした問題にはならない気はするけどね。
ある程度の警戒を、マフィアにさせるのが目的だし。
ほーら、集まれぇ~。いっぱい集まってるほうが、事後処理が楽ちんなのだ。明日のことにはなるけれど、マフィアもまさか昨日の今日で攻め込まれるとは思うまい作戦。
明け方までマフィアを弄んだベルグレさんたちは、昼過ぎまで休むそうだ。その間の監視は僕らがやっておく。彼らが起きたら交代して、僕らが夜まで休憩を取ることにした。
寝ててもマフィアらが変な動きをすれば、気付くことは可能だからな。万全の態勢で深夜のイベントを待つのみなので、一旦宿に戻ることにした。寝るならお風呂入ってからのほうが気持ちいいしね。
「尾行はありそうですか?」
「んーん、知ってるマフィア臭はない」
「イイ感じにアジトに集まってますね」
隠しアジトにも10人程度の増員はあったようだけど、それくらいなら問題はないな。ウロチョロしないで、そのままのキミたちでいてください。
幸いにも僕ら担当のマフィアは、誘拐を生業とはしてないようで、それっぽい人はいなかった。閉じ込められてたら、動かないからね。行動範囲で分かるよ。
ってことで人質の不安もないから、ベルグレさんたちが暴れ散らかしても、まあまあ大丈夫でしょう。
そして夜が再びやって来た。
「もっと人数がいるものかと思ってましたけど、こんなものなんですか?」
「ああ、ほとんどは準構成員ってヤツだな。実権を握ってんのはもっと少ねえし」
アジトには80人くらいしかいない。隠しアジトのほうは5か所で50人くらい。僕らだけでやったところは、もっと少なかったはず。なんかマフィアって1000人規模ってイメージがあったけど?
「地球とは人口が違うと、ン・シーは考察」
「それほど差があるようには思えませんけど……まあいっか」
神様が1人1人に能力をくれる世界だしな。わざわざ悪事に手を染めるようなことには、なり辛いのかもしれない。
手を染めてるなら、根っからのクズってことかもね。
「ところでベルグレたちは80人、ダイジョブ?」
「うーん……色々とぶっ壊しちまいそうだなあ」
「じゃあ私たちが終わらせてから、一緒に行きましょうか? すぐ済みますよ」
今回は雑にやってもオッケーだそうで、殲滅するだけなら細かい制御も不要。この街からマフィアの排除と、資金の確保が目的らしいからな。運が良ければ生存してるはずだ。
「そうすっか。頼むぜ、パイアちゃん」
「ではさっそく。操血っ」
「「「おおっ」」」
ベルグレパーティから声が上がる。
「やる時のパイアお姉ちゃんはカッコイイ」
「なにがですか」
「目が深紅に光ってるぜ」
なにーっ!?
「し、知らなかった。それは見たいかもです!」
「なんで本人が知らねえんだよ……」
「鏡見ながらしませんしー」
手鏡くらいは持っておくべきだったか。しかし確認はあとにしなさいということで、残りの隠しアジトも処理していく。奪った血で入り口を固め、他人に入られないようにする。
憲兵にはノックしてくれたら解除することを無線で伝えた。
「終わりました」
「よっしゃ、行くか!」
僕がいたら楽な仕事になりそうだと、足取りも軽いベルグレパーティ。まあねえ、既にくっ付けてる糸で、血を吸ったらいいだけだしねえ。僕的にもあんまり手間はかからないんだけど、なんか1人だけ働いてるような……。
これは報酬を多くせしめることが可能なのでは、なーんてことを考えている内にアジトに到着した。
僕に頷くベルグレさん。
まずは足の速い運搬役たちを無力化する。続いて1階入口近くの15人。
「完了」
「おう。ならお邪魔しようぜ!」
「りょーかーいっ」
ベルグレさんとン・シーの暢気な掛け声で、制圧班冒険者チームは敵陣地に突入した。
「ン・シー?」
「うん。幹部2人とボスは地下っ。他の幹部は2階にいるよ」
「ベルグレさん、ボスを逃がします?」
「おう!」
じゃあ先に2階にいるヤツらを、無力化していくことになるね。でも僕が全部やると楽ちん過ぎるとのことで、僕だけ掩護役になった。
ならじっくり見させてもらいましょう。能力者の戦いってヤツをね。
「何者だテメェら!」
「聞く前に倒すべきっ」
「あギゥッ」
ン・シーにペェーンッッ、されて沈む構成員。ン・シーの言う通り、侵入されてんだから口より先に手を出さなきゃ。
「俺たちも行くぜ!」
「「「おう!」」」
ガチャバタガチャバタとドアを開けて、人がいる場所を騒がしく捜索するベルグレパーティ。「1」とか「3」とか言ってるのは人数のお知らせか。どうやら5人以上いる場合のみ全員で当たる様子。
聞こえてくる悲鳴で、容赦のない攻撃をしていることは分かるな。
「奥の大部屋から増援。13!」
「パイアお姉ちゃん、それ幹部ー」
「ハーイ」
部屋の中で暴れてたン・シーからの報告が、廊下に響いた。
「貴様!」
「こんばんはー、マフィア1個くださいなっ」
おおっ! 2人ほど強いのがいた。加速して僕に迫る凶刃。だけど服に穴が開くのはイヤなので、キッチリ血の盾でガードする。血で絡めとって行動を阻害。
「やれッ!」
幹部に武器と声援をもらった武闘派から、再戦を挑まれる僕。
「部下はちゃんと働いてるのに、態度だけの人はダメなんじゃあないかと」
「ッ、なんなんだコイツ!」
「私を狙ってたのに知らないんですか?」
「貴様が? 貴様がパイアだというのか!?」
話が違うみたいなことを言われても、僕のせいじゃないしなあ。
「勝手な想像で、私が弱いって決めつけたのが失敗でしたね」
最後の1人が奥の部屋で、まだモゾモゾしてるな? なにか荷物を集めてるんだろうか。逃げ場はないし、ここのマフィアは終わらせていいか。強い2人は身体強化系っぽくて、速いとか力が強いとか程度だ。火を飛ばすみたいな、魔法っぽい能力じゃないなら見なくてもいいや。
「パイアお姉ちゃん終わった?」
「モゾモゾしてるのがあと1人です」
奥の部屋に指をさす。返り血を浴びてるベルグレさんらの血を綺麗にしながら、2階のラストマンのところへ向かった。
「あ、待ってください。地下のヤツらが移動を始めてますね」
「ボスとか判別できるのか?」
「ここからじゃムリっ」
「ですね。ン・シーが分かっても、私に伝わらない」
その返事で、僕らだけ地下に向かうことになった。バラけてるならまだしも、一緒に行動されてると見ないままじゃ分かんない。
ボスだけを逃がすためには、そうしないと他のを吸血できないからね。印を付けるとか、特殊なことをしたらバレそうだしさ。
「こっちを終わらせたら、すぐ向かう」
「ハーイ。行こっ、ン・シー」
「うんっ」
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あとがき
読んでいただきありがとうございました!
私に乗り移る予定だった異世界人様とつくる妖精郷 ~万能作業台はチートだそうです~
https://kakuyomu.jp/works/16818023212806311871
コロロの森のフィアフィアスー ~子エルフちゃんは容赦なし~(完結済み)
https://kakuyomu.jp/works/16817330652626485380
こちらも読んでいただけると嬉しいです!
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