27 にぱぁって笑顔になった。

 健康的なのはいいけど、時間が早すぎるね。日の出とともに行動開始だとさ。あさごはんをゆっくり食べても、お店が開くまでたっぷり時間があるよ。


「どうしましょうかねえ」

「ダンジョン行って時間潰す?」


 うーん……ダンジョンをファーストフードみたいに利用するのも、なんだかね? しかし結局は他の案なんて出ず、狩りにお出掛けすることに。ゲーマーは時間があったらゲームしちゃうのだ。


 しかも今なら狩りで得られるのは、リアルマネーってことになるしな。


「チョロっと稼ぐ。ハフスク岩窟がんくつがベスト」

「えっと、そこはー」

「ゴブリンのとこだよ」

「そうでした、そうでした。そこなら短時間でチョロっと稼げますね」


 そう思ってギルドに向かったんだけど、ダメって言われた。僕らは取りすぎるからだってさ……。代わりに勧められたのは、不人気ダンジョンNo1の「ヨクソベのコープスファーム」ってところ。難易度は★★★なんだけど、戦闘力高めのパーティで、ダブルスターになってるなら許可が出るそうな。


「コープスファーム……ですか」

「ぜひお願いしたく」

「ン・シーは臭いのイヤかもっ」

「1層目はスケルトンですから」


 死体牧場とか死体農場みたいな所に行く羽目になった……。アンデッドだからって、アンデッドだからってぇっ。

 対アンデッド戦は、そこまで得意じゃないんだけどね。


 血抜き使えないしなあ。まあ生身の人よりはマシかな。僕らは怪我をしても割と平気だしさ。不死性に関しては、実験なんてできないから謎のままだ。死なないように頑張りましょー。


 地図を見せてもらって、飛んで行く。比較的近場らしいし。山のふもとに広がる大霊園。その奥、山に地下への入り口があって、その先が第2層らしい。

 今回は第1層の大霊園でのスケルトン狩りが僕らの勤務先。


 素材となるのは装備と核宝石コアジェムだね。骨も残るならミミック行きかな。ゴミでガチャる場合は多ければ多いほど、出てくるものがマシになるからねえ。使えるものはなんでも入れちゃうのだ。


「到着した途端コレですか」

「大歓迎」


 なるべく効率よくやって行かないと、疲れが溜まりそうだな。地面からモコモコ現れては、僕らにぶっ飛ばされるスケルトンたち。元々徘徊してたのも結構な数だったから、相当な数の骨と装備と核宝石が散らばってる。


「拾う隙もありませんね!」

「ン・シーは直接もぐ・・ことにしたっ」

「それもそうですね!」


 わざわざ切り結ぶ必要なんてないか。相手は骨だし、核宝石の位置は見えてる。そして残念ながらスケさんの核宝石は星1。数でカバーするしかないなあ。空飛ぶ神殿のロボは儲かったのになあ。


「ホント、残念なアンデッドたちですよ」

「ン・シーたちが面倒な部分をやらされた感あるー」

「ねっ!」


 僕たちがスケルトンいっぱい狩ったら、2層に行きやすくなるもんな。戦車を呼び出せるような能力者がいたら楽そうなのに。


「そろそろ終わりにしましょう」

「だいぶ減ったもんね」


 血でこっちに来させないようにして、散らばってるアレコレを回収していく。回収するのも一苦労だなあ。でも苦労した甲斐くらいはある……ような気もしなくもないような、ないような気がするような?


「1時間くらいで135ですか。多いですけど安いんですよねえ」


 平均すると1分で2体くらいか。始めは5秒で1体くらいのペースだったけど、少し経ったらリポップも落ち着いたしね。時給は40万だったよ。


「ロボのせいでパイアお姉ちゃんが贅沢っ」

「だってしょうがないですよぉ?」


 ここも半日以上潜ってると、100万超えるのかなあ? 今日はスケルトンが貯まってたから、時給が40万なんだけど。

 でもやっぱりさ、僕はロボの国のほうがいいなあ。

 だってここの2層からはヌチャッとかグヂュッとからしいし……。


 さて、少し離れたところに運んだアレコレを生贄に、mimizonからアイテムをゲットしましょうかね。


「ゴミは全部として、装備関係はどうしましょうか?」

「剣10本くらいは持って帰る?」

「そうですね。状態の良さそうなのだけにしましょう」


 あとはガチャに利用。そして核宝石だけど、100個は売って、残りの35個は自分たち用にする。ここでやると荷物も増えるしから、核宝石分はギルドで。


 ってことで、さっそくミミックを呼び出して、大量の骨と鉄であろう装備たちの処理をしてもらった。食でガチャして出てきたものは、チョコ味のプロテイン2.5㎏。シェイカーも付いてたよ。


「チョコ味だっ!」


 ン・シーのテンションが上がって、にぱぁって笑顔になった。

 かわいっ。


「牛乳が美味しいですからアタリですね!」


 ムキムキは不要だけど、このプロテインは美味しいと評判のもの。いいもの出すじゃあないか、骨くんたち~。

 骨からプロテイン。なんとなく皮肉が効いてる気分かも。


「じゃ、帰ろっか、パイアお姉ちゃん」

「ええ。そしてギルドに文句を言います」


 スケルトン多すぎ問題っ。アンデッド広場に1時間、諸々を集めて休憩がてらのガチャで1時間。この2時間が濃ゆかったのよ。

 1層限定でダブルスターじゃなくても、入れるようにすればいいのにさ。


 ここのスケさんは、そんなに強くないよ。


「あ、憲兵さんの訓練がてらっていうのもアリかもしれませんね?」

「徹夜明けの俺に、パイアちゃんが仕事を押し付けようとしてくる件」

「お疲れさまです」


 街の門のところでザルデルさんに呼ばれたんだ。昨夜のマフィア関連のことだね。正直言えば、お金に関して以外は関心がない僕とン・シー。ふんふんって頷いて流しちゃっても、仕方のないことだと思うんだ。


「聞いてるのかな?」

「「エヘー」」

「オイオイ……」

「だって正直言えば、お金に関して以外は関心が……ありませんし。マフィアがどうなろうとフーンって感じです」

「マフィア1つ潰しといて……あのな、パイアちゃん。これは勢力争いが激化する可能性があるんだ。縄張が丸々空いたからね」


 忙しくなる可能性が高いんだって。

 ガンバレ憲兵っ。


「ハハ、涼しい顔してられるのも今の内さ。協力要請は出ると思ってくれ」

「あぁー、そうなりますか」


 なんて報告を受けて釈放された。しかし協力要請かあ。それならさ、依頼の報酬だけじゃなくて、アジトの金品も欲しいよね。


「アジトさえわかれば大規模掃討可能。儲かる可能性アリとン・シーは判断」

「人には相性がいいですからね。ヴァンパイア能力は」


 そういえば魅了系の能力とかはないのだろうか?

 アンデッド成分の調整で削除されてるのかも?

 結構危ない能力だしね。僕的にも、持ってないほうが平和かもしれないかあ。


「ところでギルドに着いたらガチャする予定ですけど、ン・シーはカテゴリーをなににしますか?」

「ン・シー的に乗かなっ。ダンジョンで移動速度上げたい」

「ふーむ、それもまた正義ですね。私もそうしよーっと」


 35個中の17個ずつ使って、5万相当の乗り物を狙うことになった。このくらいなら変なものは出ないと思うんだけどな。どうだろうか。

 できればオフロード使用カモン。すっかり忘れてたけど、カートでも可。荷物運ぶのが楽になるしね。


 1つ余る分は、電化製品ならぬ核宝石コアジェム製品用に、ストックを追加することにするよ。


「ただいま戻りましたー」

「お帰りなさいパイアさん。早かったですね?」

「ン・シーたち頑張った。135スケルトンっ」

「そうなんですよ……多すぎです。1層のみランク下げて許可、とかできないんですか?」

「それは上が判断することですねえ」

「良き判断をお願いしたいです。はいこれ、お願いしまーす」


 剣10本と星1核宝石100個を1番嬢に渡す。


「さて、狙いましょうか、ン・シー」

「うんっ!」

「ガチャするので訓練場借りますねー」


 中途半端な時間なので、冒険者は少ない。勤勉な冒険者は出掛けてるし、怠惰な冒険者ならまだ来てないという時間。つまり今このタイミングでギルドにいる冒険者は、優柔不断という診断結果が得られました。ゆえに、今日のガチャ商売はなしとなりまーす。

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