24 ゲーム脳でした。

 フォースだけで、弾丸をどれだけ防げるのか分からないからね。まずは僕が行かせてもらう。操血で盾を作り、ロボに向かって駆け出す。


「あ、ズルいパイアお姉ちゃんっ!」

「念のためですぅ」


 射線をン・シーから切るために、斜め移動をしながら接近していく。すると僕を狙って銃撃が開始された。連射力は高い。


「ですがミニガンほどの威力はなさそうです」

「ン・シーも参戦」


 チュルンと移動したン・シーが、僕より先に接敵。まんまと囮に使われちゃったんですけど。蛇の型で腕を取ろうとするン・シーに対し、戦闘ロボはブースターを吹かして僕に接近してきた。

 振るわれる剛腕を盾で受ける。


「こ、れはなかなかに強力です」


 ゴパァと弾け飛ぶ血の盾。これはフォースが貧弱だと太刀打ちできない出力を持ってるよ。

 しかも移動も、まあ速い。


「ダンジョン難易度★と★★の差が結構ありますね。ン・シーは気を付けて」

「分かったっ」


 再生できる僕と違って、ン・シーは「治る」だからね。怪我すると時間が必要だ。治療用のポーションは何本か購入済みではあるけど、怪我しないほうがいいに決まってる。痛くないからといって、目の前で実験・・されたらビックリするよ。


 お腹が半分吹っ飛んだり、ご飯にされてた僕が言うのもなんだけど。


「おかわりのほうは私がもらいます! スタンウィップッ」

「じゃあン・シーはコッチを無力化する」


 接近してしまえば、ン・シーも銃撃に対処できるだろうということで。僕は2号機のほうにダッシュ。凝った装飾の壁を足掛かりに、3角跳びをして的を絞らせないように動く。


 ワンテンポ遅れた場所を射撃する2号機ロボの上を取り、頭を掴んで引き倒す。左腕は震脚で破壊して、右腕は殴られる前にフォースを込めて硬化した爪で穿つ。無力化完了。


 飛べるから結構自由度の高い動きが可能でーす。


「謎の合金とはいえ、フォースの込め具合で破壊は問題なく行えますね」


 ダブルスタークラスの冒険者だったら、問題ないってことなのかな。ン・シーのほうも終わってたみたいで、核宝石コアジェムの位置を教えてくれた。取り除いちゃえば動かなくなる。


 ていうか、異世界から来たこのロボたちにも核宝石があるんだな? 適応したとかダンジョン化したせいとか、ファンタジー成分でどうにかなっちゃったのか。

 神のみぞ知るってヤツか。頭の中で、ミミックが騒いだ気がした。


「ねえパイアお姉ちゃん、この2体分で金貨10枚超えたよ!」

「もうですか!?」

「全部持って帰ればだけどねっ」

「私たちのアンデッドパワーなら平気そうです」


 とはいえ、大量には持って帰れないな。核宝石狙いに切り替えていくか。星2のものだから銀貨3枚。ロボ成分が高価買取対象なんだね。


「そういえば星2の核宝石のわりに、ハイパワーですね」

「オークチャンプより力持ちだった」

「それもロボ成分が影響してるんでしょうか」

「ファンタジーとロボの融合。ロマンパワーが働いてるとン・シーは思う。結果、ファンタロボは美味しい獲物」


 ジュースみたいに言う。

 とりあえず僕らは、お掃除ロボを見つけたら、逆さまにして戦闘ロボを呼ぶことにした。あとは普通に探索して行きましょ。


 神殿というだけあって、このダンジョンは神秘的な雰囲気。なのにロボが住人だ。ダンジョン自体はこの世界のもので、コアを守ってるガーディアンの女王が異世界転生したロボなのかな。


 コアはむき出しらしいし、狭いダンジョンなので見て帰るのも一興。

 東の入り口から入った僕たちは、北にある祭壇を覗きに行くことにした。コアを壊さなきゃ女王は壊していいみたいだし。


「ミニガン邪魔ー」

「邪魔ですねえ……」


 天井にいっぱい付いてるよ。

 トラップもいっぱいあるよ。

 メンドクサイよ?


「ン・シーは不人気理解」

「私もです。女王ガーディアン見に行くのやめましょう」

「賛成。コア壊すと怒られるだけじゃない」

「ええ。危ないですからねっ」


 やーめた、しました。幸いにも金貨10枚は収入あるので。メンドクサイは、なしの方向でいいと思います。追加で3個の核宝石は確保したしね。

 西の入り口には、北の祭壇から向かうことができるんだけどな。邪魔が多いので来た道を戻って、普通に西の入り口から散策しなおすことにしたよ。


「ロボ2機連れて飛んでみます。余裕があったら3機目をゲットしましょう」


 血の縄で縛ったロボ2機と、ン・シーを連れて飛行してみる。んー、イケなくもないかな? ギリってほどじゃないけど、余裕はないかもしれない……か。


「3機になるとバランスも悪くなるよ?」

「そうですね。やめておきましょうか」

「うん。そのほうがいいと、ン・シーは考える」


 2機なら両手にぶら下げられるけど、3機になるとン・シーの下に吊り下げる形になっちゃうか。

 無理は禁物かな。


「じゃあロボは高額のカメラアイと定番の核宝石ってことで、西口から再突入しましょう」

「了解っ」


 今までの成果は出口近辺に置いておく。ササっと狩ってササっと帰還すれば、晩ご飯の時間くらいになるだろう。僕らには1日で結構稼げる、いいダンジョンかもね。


 核宝石コアジェムが少ないのが残念だけど、残りの部分はミミックで処理して、ガチャってから帰ろう。機械仕掛けの神殿西口から祭壇までのルートは、東口の鏡写しだった。


 配置も同じだった。

 狭いというのも合わさって、獲物が少ないなあ。これが不人気になる1番の理由かあ。もしかしたらリポップも遅いのかもしれないな。長くて1泊程度のダンジョンなのかもしれないね。


 でも今の僕たちには美味しいダンジョンではあるな。他の★★難易度をまだ知らないから。

 今日の成果は、ミニガン1、掃除ロボ2、ロボ2、ロボアイ8、★★核宝石10。あとロボの残骸。


「ではミミックを起動します。カテゴリーはなんにしましょうか」

「パイアお姉ちゃん、そろそろシャンプーとリンスが欲しくない?」

「欲しいです。カテゴリーが住なのか薬なのか分かりませんし、試しますね」


 結果、住ではバスタオルが出て、薬からは美容液が当たった。


「ンーッ、惜しいっ」

「でも美容液は嬉しいです」

「あ、タオルもいいヤツだったっ」


 でもこれでシャンプーとかは、薬のほうかなって予想ができるかな。スキンケア、ヘアケア、ドラッグストア。これがあるから薬の可能性を考えてたんだけど、異世界の神様は僕たちに合わせてくれてたようだ。パクリのzonかもだけど。


「それじゃ、帰りましょー」

「ごはーんっ」


 ふふっ、いっぱい食べるけどそんなに腹ぺこキャラじゃなかったはず。でもン・シーは生身を手に入れて、食べるのが楽しいみたい。良かったね!

 そして頬張ってモグモグしてるの、ホントカワイイ。僕もニッコリのwin-winだ。



「おほー!? ダブルスター美味しいですっ!」

「パイアお姉ちゃん……お下品」

「んっ、んんっ、失礼しました」


 だってしょうがないじゃないかー。日給がさあ、185万3千円だったらさあ、誰だってさあ、おほ・・るでしょ?

 これはついに「パイアちゃん貴族街に行く」の回があるかもしれないゾ!


「そしてドレスを発注するのです」

「夢が膨らんでらっしゃいますが、許可もなく貴族街には入ることはできませんよ」

「なにをぶっ飛ばせば入れるようになりますか!?」

「エェ……?」


 ン・シーに頭をペェーンされる僕。


「落ち着くべきとン・シーは判断。そんな状態でスタンピードに挑むのは、危険と考える」

「確かに襲われた街を救うと、許可されそうですね。でもン・シー、発想が物騒ですよ。めっ」

「パイアお姉ちゃんが言い出したことっ!」


 う、ん。確かに、確実に、ゲーム脳でした。でもン・シーだっておほってるっぽいね、これは。


「お2人ともダブルスターなのですから、可能性としては貴族からの依頼というのもありますよ」


 それは……それで面倒な依頼になりそうだなあ。他の手段としては商人として大成功とかもあるっぽいけど。

 1番可能性が高いのは、僕らが有名になるってのかな。


「それが確実でしょうね。現にハンドレットの皆さんは依頼受けておられますし」

「ああ、それで最近会わないんですね」


 領主のとこのお嬢様を護衛してんだってさ。え? 王都の学校? じゃあしばらく帰ってこないのか。

 いや、そもそもアチコチ移動してるって話してたしな。お嬢様の帰省の時にエダに戻ったとしても、王都に行っちゃう可能性ありだね。


 なんとなく寂しい気分になった僕は、大金貨を見てもう1回おほった。

 今日の収入──大金貨1枚、金貨8枚、銀貨5枚、銅貨3枚。おほー。

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