22 天真爛漫は時と場所を選んで欲しかったよ、ン・シー。

「だってギルドが得るはずだった核宝石コアジェム、使っちゃうじゃない」

「あ!」


 これはひょっとして、かなり悪辣な行為なのではっ!?


「でも意見は分かれてる。ン・シーは望みありと考察っ」

「それはほら、ガチャの結果で異世界の便利なアイテムが出るでしょ?」

「あぁ……なるほどお」


 今回の自転車みたいにか。カップ麺だって保存食としてかなり優秀だしな。それで割れてるのか。


「パイアさんたちって、どれくらいの核宝石を獲得してるの?」


 私はランクアップ推奨派~だって。なので狩ってる数が知りたいみたい。上に報告して可能性を高めたいそうだ。


「えっと、前回のオークダンジョンは……ソロで、えー、確か40体くらいでしたか。内、2個がたぶん星2。ン・シーが生まれましたし」


 ゴブリンのなんちゃら岩窟は40匹くらいだったはず。

 今回は、えーっと? うろついてるのと、群れのと、うろついてるので──


「──100体くらいでしたよね? ン・シー」

「正確には128個の星1と、オークチャンプの星2が1つ」

「お、お前ら結構ムチャクチャやってんだなあ」

「おはよ、ベルグレ。パイアお姉ちゃんはン・シーのもの。手出し厳禁!」

「ス、スマン。感極まっちまってよ」

「ほとんどガチャに使ってるじゃないの!」

「だ、だって欲しいのいっぱいありすぎるんですもん」

「ランクアップの申請は出しておくわね!」

「俺もそのほうがいいと思う」


 他のパーティが獲物狩れない状態になるってさ。そ、それは申し訳なかったかも。今ここにいる人たちだけでスマンが、おごりってことで金貨1枚置いていくことにした。お詫びになるか分かんないけど、まあ喜んでるから良しとしよう。


 今いなくて、獲物奪われた人には諦めてもらう方向で。

 ホント、ゴメンネ?


 お昼ご飯は僕らも一緒に、ギルドのイートインで済ませることにした。お金払うだけってのもなんだしね。たまにはみんなでワイワイやるのもいい。これぞ冒険者って感じだし。


「パイアお姉ちゃんはもう食べない?」

「はい。お腹いっぱいです」

「チャンプ肉はチャンピオンなのに」

「食事量は一般女子並みですー」


 僕は食いだめできないんだよな。厳選して食べないと、すぐ満腹になってしまう。


「お肉は100gにしておけばよかったですね」


 パフェ食べれないじゃん……失敗した。


「じゃあ1口だけあげる」

「あーん」


 ン・シーが食べるのを見てたらくれた。

 ん、美味しい。ケーキもそうだったけど、食べ物全般が美味しいな。濃厚というか。能力とかフォースが、関係してるのかもしれないね。


「ん? どうかしましたか? 私の咀嚼姿に興味がありますか?」

「2人とも魅力的なのに、俺らには望みがねえからよぉ」


 そうだそうだと声が上がった。ユリユリオーラが出ていたか。


「私にはン・シーがいますから」「パイアお姉ちゃんがいる!」

「そういうとこだよ!」

「だって私、男は不要ですし」

「む……そうか、スマン」

「んん? ああ、別になにかあったわけではありませんよ。単純に女の子が好きなだけです」

「ン・シーはパイアお姉ちゃんがいればいい」

「あれ? 待って、ン・シー。それ言われると、私がただの女好きに見えちゃうようなっ!?」

「そうだよ?」


 不思議そうに言わないでくれないかっ!

 いや、待って待って? え? なんで?


「だってパイアお姉ちゃん、お風呂場で目がえっち」

「エッチじゃないですー! エッチじゃないですー!!」


 ン・シーいわく、お胸の揺れを追っているそうです。

 そ、そうだっけ?


「パイアお姉ちゃんがお胸を追ってる時、パイアお姉ちゃんのお胸も追われてると知るべき。あと気付くべき。ポンコツが過ぎると、ン・シーは判断」


 エッ? って男連中を見たら、サッと目をそらされる僕。オカシイじゃん。女の子になったら見られるのに気付くって、そうなってたじゃん? 小説とかだと。

 僕は気付けないというのか。

 見るのに夢中ってこと?


 深くない。むしろ出っ張り。だけどなんか僕、深淵を覗く時ってアレを思い出した。


「き、気を付けます……」


 今日この日、僕はエッチなパイアちゃんとして知られることとなった。

 巨乳好きで、女好きの、エッチなパイアちゃん。

 天真爛漫は時と場所を選んで欲しかったよ、ン・シー。


「女子には知られてた。男子に知られたところで、どうということもないとン・シーは結論付けた」


 だから逃げることなかったのに、だって。

 そんなこと言ったって恥ずかしいじゃんか。調味料も買わないとだし、ン・シーの服も届いてる予定だし。


「逃げてないですしー?」

「チャンプ肉、もうちょっと欲しかった」

「でも見たんでしょ?」

「うん」


 調理済みを鑑定して、ン・シーの中で最適化してるはず。調味料を買ってしまえば、ダンジョンバーベキューでも美味しいお肉が食べられるようになる。

 なんかやっぱり暴く者アプレイザーってカッコいい名前の鑑定能力を、無駄に使ってる気がしなくもない。


 「肉ダンジョン美味しい化計画」のための調味料を銅貨2枚分購入して、宿に帰る。ン・シーのカンフーマスター服を、カウンターで受け取った僕たちは、まずは身綺麗にってことで荷物を置いたらお風呂に直行です。


「パイアお姉ちゃんの顔が、無になってる」

「うっ、だ、だって気を付けないとっ。私は無我の境地を目指します」


 幸いにも僕たち以外は、誰も入ってないから練習しておかないとっ。もうバレてるらしいけど、失礼は失礼だからね。

 いや、ホント、失礼しました。


 だからといって、お胸を揺らして練習相手にならなくてもいいんだよ、ン・シー。目の前でやられたら、誰だって見ちゃうよ。


「お下品ですわよ、ン・シー」

「高慢ちきも目指すの?」

「すわよ部分がマズいですか」

「うん。パイアお姉ちゃんはキレイよりだし、嫌味っぽくなる」


 お上品も難しいな。湯船につかって、お上品について語り合ったけど僕らには無理じゃないか、という結論が出ただけだった。所詮は一般人の力量ですぅ。


「だからドレスに憧れるの?」

「憧れと言うより、私に似合うからってだけですよ」


 パイアちゃんのドレス姿は、ホントにいいものなのだ。スキンが出るたびに課金しちゃうくらいには。僕は自ら望んでカモになったのだ! 良いのだー!


 血に色が付けられたら、苦労せずに済むのになあ。


 まあでもアップグレードして衣類カテゴリが使える今、望みはあるね。課金ドレスじゃないにしても、手に入る可能性が高くなったしさ。

 ランクを上げて、高級核宝石コアジェムを使えばドレスの可能性も上がると思うんだよね。


 単純に稼げるようになれば、オーダーメイドという方法もあるし。チョットだけ目的に近づいたかもっ。


「すぐだらしない顔になるっ」


 ゆえに隙だらけに見えて、男子が寄って来るらしい。そのたびにン・シーが視線でブロックしてるんだそうだ。


「そんなに? 知りませんでした。無我の境地、急務っ」


 ありがとうン・シー。

 僕を毛の戦士たちから守ってくれて。


「人間世界にツルツルブームが来ますように~」

「パイアお姉ちゃん、個人の感想ですって言っとかないとっ」

「個人の感想です」


 脱毛サロンのパイオニアになるのもいいかな。とか言ったら、ドワーフからボッコボコにされるって反対された。別に、ドワーフとかケモ系に人たちまでツルツルにしたい訳じゃないよー。


 食堂の夕飯解禁まで少し時間があったので、チェックしておこう。って思ったらン・シーがしてくれるみたい。

 マヌケ姿を取るか、恥を取るかの2択を迫られる僕。


「くっ、マヌケな姿のパイアちゃんは許されません。お願いします……」


 なぜか夕ご飯が晩ご飯になった。

 ふしぎですわー?

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