13 ──続きはwebで。

「ただいま戻りました。1人追加したいんですけど」

「ン・シーはパイアお姉ちゃんと一緒の部屋」


 宿に戻った僕は、ン・シーのことをフロントで相談する。結果、部屋は一緒でも料金は取られるということが判明した。狭くなるだけではありませんかー。


「2人部屋に移ってもいいわよ。それから食事代は気にしなくていいから」

「いいの? ン・シーはいっぱい食べる」


 ゾウの獣人さんだって追加料金は取ってないそうだ。それなら助かるね。僕らは案内に従って2人部屋へ移動した。前の部屋に荷物なんて置いてないしな。そして置いていく荷物も持ってない僕ら。部屋だけ見て、そのまま店員さんと1階へ。


「今日のご飯はなんですかね~」

「楽しみっ」


 出された料理を見た僕たちは抱き合ってしまう。カウンター席だからね。抱き合えるんだ。

 そして抱き合ったって仕方ないじゃないか!


「トンカツです!」

「むげんのきゅうきょくむてきっ」


 2人の大好物ゆえ、抱き合っても仕方なしっ!

 むげんのきゅうきょくむてきわかるっ!

 抱き合っても仕方なーし!

 僕は2枚、ン・シーは20人前を平らげたところでストップが掛かった。


「そうだった……無限は迷惑。ごめんなさい」


 他の人のまで食べちゃダメだからね。残念そうではあるけど諦めて欲しい。でも代わりのステーキがあるということで、ン・シーのお腹は満たされた。


「お腹7分が丁度いいとン・シーは知ってる」


 腹8分にもなってなかった。リアルで見ると驚きの量だなあ。冒険者の35人前って凄かったです。あともう1個驚きの事実があったんだけど、トンカツのお肉は僕を食べたボスオークのお肉でしたとさ。


 ま、まあ太ももだけだったし消化前に処分したから、アイツの栄養にはなってないはず。だから平気平気。久しぶりにオークチャンプの肉が手に入ったとか、そんな言葉が聞こえてこなきゃ気付かなかったのに……。


 口とお腹は満足したけど、心にびみょーなものを残した食事だったな。これはもう、お風呂に入ってリフレッシュしかないだろう。


 除毛ポーション、買っておけばよかったな。せっかく中央区にいったのにケーキしか頭になかったよ。明日の買い物リストに入れておかなくては。部屋に戻ったところで、紙袋メモを取り出す。


「頭の中じゃなく、キチンとメモっておくべきでした」

「なにー?」

「買い物リスト~」


 僕の靴とショルダーバッグ。

 ン・シーのメイスとバックパック。小物入れる用に、小っちゃいバッグもあったほうがいいかな。星1の核宝石コアジェムは電池代わりに使う世界だし、持っておいたほうがいいから。


 それから2人の服と下着に除毛ポーション。かな? あ、そうだ、ン・シーの歯ブラシも必要だね。僕のはガチャで出てきたのがまだ使えるからいいや。


「とりあえずはこれで」

「除毛……ポーション?」

「ツルツルは正義なので。そのぉ、私自身じゃできない所をお願いします……ね?」

「分かったっ!」

「ン・シーのは明日処理します」

「え、ン・シー……も?」

「ツルツルは正義なので」

「むむ、昨日のパイアお姉ちゃんはツルツルだった。ン・シーが処せない」


 その内お願いする。恥ずかしいけど。

 髪と眉毛、まつ毛以外の毛は悪なのだ。男も女も、だ。

 処さなければならないっ!


 ケモの方々は逆に処すべきではない。が──夏はお辛いであろうがゆえに、心地の良いカットをなされぃ。

 冷たいマジックアイテムがあればなあ。魔法がないから錬金術師ガンバレ。ちょーがんばれっ!


「パイアお姉ちゃん、謎のこだわりが出てる」

「毛って不思議ですね?」


 同意は得られなかった。


「ン・シー、これ。電池みたいに使うから、お風呂に持って行ってください」

「核宝石?」

「シャワーで使うんです。お湯出すのに」

「分かった。じゃあお風呂行こっ」


 そういえばン・シーの下着も、今日買っておかないとダメだったじゃん。洗濯物はお風呂のところの売店横に、出せるようになってたけど替えがない。聞いてみたら売店にも一応あるけど、一応レベルのものだった。


「ン・シーは下着を洗う」

「買えばいいですよ?」

「カワイクナイ。あとは寝るだけ。なくてもいい」


 お風呂で洗うのはマナー違反だろうし、部屋で洗うってさ。ということで、今夜のン・シーはノーパンです。


「パイアお姉ちゃんも、ン・シーが洗うっ」

「アッひゃ、んーっ」


 か、身体がビクビク反応してしまうっ。この身体──高性能なりぃっ!

 敏感過ぎ、敏感すぎィ。これマッズイ。声が出ちゃいそ……っ。


「か……くすぐったいのですウッー……」

「分かったっ。パイアお姉ちゃんが、か……くすぐったくないようにするっ」

「ン・シー! 目がエッチ!!」

「ン・シーはいつだって冷静。えっちじゃない」

「ウソだあッ」

「これはただの洗いっこ。感じてるパイアお姉ちゃんが、えっちなだけ~」

「ヒィーーーーーー」


 僕は弄ばれた。おねだりしかけるテクニックで弄ばれた。カンフーのテクニックなのか、機先を制するというか。動くに動けない感じな上に、怪力も合わさって完璧な弄びだった。僕ら以外は入ってなかったとはいえ……危険が過ぎるんだよ、ン・シーってば。


「パイアお姉ちゃんのおねだりは、破壊力が究極」

「しーてーまーせーんんんっ」


 しかしン・シーは言う。僕のモジモジや、顔、目。それに彼女を掴んだ手が、おねだり以外になんだというのか、と。


「ちょっぴりイジメたくなる」

「むー……」


 弄び返ししてやる。

 20本手のパイア、参る!


「ニャーーーーッ!?」

「私のカワイイ子猫ちゃんはココカナ~?」


 操血で縛ったけど、身体洗ってるだけだよ。明日の除毛のために、隅々までチェックはしてるけどさ。ン・シーは青白い肌だから、黒毛が目立っちゃう。だから徹底してツルツルに処す予定。


「パイアお姉ちゃんっ、そ、そこはっっ」

「分かります……お尻、広げられると恥ずかしいですよね」


 僕も10本手のハンドレットに、やられたので知ってる。でも大事なんだ。


「私のも……ン・シーがしてね?」

「ン・シーのはしなくていい、よ?」

「ダメ」

「ン・シーは恥ずかしさに耐えれないっ」

「ダメ、処します」

「あーーーーっ」


 本番は明日だ。今日のところはのぼせそうだし上がることにした。


「「アッ」」


 他の宿泊客をお待たせしていたみたいです。

 入るには入れなかったそうです。

 ン・シーと2人で、身体を洗ってムダ毛のチェックしてただけだと訴えましたが、信じてもらえませんでした。絵にも描けないエッチな声が聞こえてたそうで……。


「やらかしてしまいましたね」

「うん。失敗した。でもあの人たち、いいもの見たって顔してた……」

「うっ……」


 もしや怒られたほうがマシだったのでは?


「パイアお姉ちゃん、早く部屋に戻ろ。服脱ぎたい」

「あー、ン・シーの服も買っておくべきでしたね」

「食べるの優先。仕方なし」


 ダメダメだなあ、僕。

 もっとちゃんと考えてあげないといけないのに。ってションボリしてる僕に、部屋に帰った途端襲い掛かって来るン・シー。大泥棒三世の脱ぎっぷりくらいの勢いで。


「ン・シーはこの時を待ってた。今夜は本番っ」

「エッ、私がン・シーに、の日じゃ!?」

「パイアお姉ちゃんは色々溜まってる。ン・シーがほぐす」


 全裸でうつ伏せで、マッサージを受ける僕の耳は真っ赤だったそう。だ、だって裸でガバァッて来たらさ、その……するって思うじゃん!

 ただマッサージしてくれるだけだった。鼻血が出たし、疲れが溜まってるだろうからって。普通にマッサージしてくれた。


 だからエッチを期待して、ドキドキしてた勘違いヤローの僕の耳は、真っ赤っかになってしまったのだ。

 し、仕方なし~?


「んふふ、ン・シーはパイアお姉ちゃんを騙してみた」

「もー」

「ン・シーもパイアお姉ちゃんも本物になった。いっぱい喋りたいし、いっぱい触れてたい」

「うん。私もン・シーと触れ合いたい。データの世界でも、ン・シーは念願の女の子でしたしンッ!?」


 ン・シーが生まれてきてくれたから、この世界は僕の宝物になったんだよ。って伝えたかったのに、それどころじゃなくされた。


「パイアお姉ちゃんの腰が、ン・シーを誘う……」

「だ、だって触りかたが、だ、だん……だんエチエチしてっ」


 まだ夜になったばかりだし、夜は長いのだってことさ──続きはwebで。

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