11 いったい、なにzonを参考にしたのだー、遊戯の神様あー。
「こんにちはー、登録しに来ました」
「あれ? パイアじゃないの」
あ、ハンドレット先輩だ。名前覚えてないのに5人全員いるからマッズイ。先輩と先輩方を使って誤魔化すしかない。
雰囲気ではあるけど、僕の中での認識は分かれてる。言葉遣いからなんとなーくだけど。
戦士女子。~だよ、~の、とかな感じで人懐っこい。
騎士女子。~だ、みたいな男っぽい喋り方。
斥候女子。~じゃん、って感じの男の子っぽい喋り方。
狩人女子。大人の女性って感じ。でも視線が一番エッチだった。
神官女子。ですますで話す人。僕の誤魔化し敬語を強化してくれそう。
装備が薄汚れてるから、彼女たちも帰還したばかりっぽいな。
「お疲れさまです、先輩方」
「パイアも帰還したところなの?」
そう言いながら、戦士女子がン・シーのほうを見てこの子は? みたいな顔をしてる。
「ええ。そしてこの子が私のパーティメンバーです!」
「パイアお姉ちゃんはン・シーのもの。手出しは厳禁と伝える」
「ン・シー!?」
グイグイ行くなあ!
「大丈夫なのか? 顔色が悪いようだが……もの凄く」
「ええ。もしよろしければ私が治癒の能力を使いますけど」
騎士女子が心配し、神官女子は治癒ったらもう神官じゃん。
「ン・シーも私系統と思っていただければ」
「ン・シーは無敵の身体を手に入れたっ」
「ダイジョブ、ありがと」ってお礼を言う、もじもじン・シー。なぜそこが恥ずかしいんだ。
「なるほど。ン・シーも異世界人だから珍しい服装なのね? 興味深いわ」
「確かカッサの街が管理してるダンジョンに、異界系統のがあったよ。もしかしたらそういうお宝が出るかもね」
そう狩人女子と斥候女子が続けた。僕の脳みそはもう限界なんですよっ。いきなり5人覚えるのはツライ。
しかし今日ハンドレットの人たちと会えたのは、ラッキーだったかもな。
「アニヤさん、ン・シーのギルド入会試験、頼んでもいいですか?」
なんと騎士女子先輩はパーティのリーダーではなく、戦士女子のアニヤさんがリーダーなのだ。だからこれ幸いと頼んでみたんだけど、答えはノー。試験官選びはギルドがするんだってさ。
「無駄な時間が掛かりますね」
「仕方ないじゃない。それが許されたら口裏合わせたりできるんだよ?」
「なら早く終わらせて、パイアお姉ちゃんの服を買いに行く。たのもー」
受付に突撃するン・シーは、元気いっぱいだなー。僕も付いて行って、ついでにボスオークを差し出した。あ、ここじゃない、と。
「パイア、こっちですよ」
「ありがとうございます」
大物取引の場合は、解体場のカウンターで受付みたいだ。獲物を渡して、あとは結果待ち。一緒にカップラーメンも出しておく。オークの核宝石はなにかに使うかもなので、4個とも残しておこう。
「私の能力、訓練所でやってみますか?」
「ええ。実はみんな楽しみにしていたんです」
「
ニッコリする神官女子。
なぜかコワイ。
僕がアンデッド女子だからだろうか?
「アニヤ、パイアが能力を使ってくれるそうです!」
「やった! 楽しみにしてたんだよ」
「だよね。ベルグレから聞いたわ! 伝説のお酒のことを」
「絶対に引き当てたいからさ、私たち核宝石狙いで稼いできたもん」
「すまないがン・シーの試験が終わるまで、待っていてはくれないだろうか?」
結局のところ、騎士女子が試験官になったそうだ。もちろん僕もン・シーも構わないと返事する。僕はン・シーの試験が見たいし、ン・シーは僕の能力が見たいってさ。
「ちなみに私の能力はアップグレードされました! 御用の際はお気軽に」
計画的なご利用をお待ちしておりまーす。ってギルドのホールで、声掛けしておいた。僕たちにはお金が必要なのだッ。僕の服もそうだけど、ン・シーの食事量は半端ないからな。たぶんだけど設定通りにいっぱい食べる系の女の子のはず。
他にも、もろもろと入用だしね。宿代とかどうなるんだろ?
同じ部屋なら代金も同じかな?
でも2食分が含まれてるなら、上がりそうなんだよね。個って数えるのか分かんないけど、ホールケーキ3個がオヤツのン・シー。割増料金が掛かっても不思議じゃない。
彼女の大量の食事は、怪力を発揮するための燃料だし必要なものなんだ。
「それではン・シーさんの試験を始めてください」
「不思議な
「ン・シーのは呪力と
あ、そうなんだ? なんというかネットリしてる感じがするなって、思ってたんだけど普通の
「異世界の力か……いいだろう、来いッ!」
「ン・シーはパイアお姉ちゃんとお揃いになる」
シングル狙いのン・シーが、カンフーの独特な歩法で騎士女子に近づいて行く。滑るように蛇行するその姿は、蛇拳のもの。
「イルジナは硬いわよ~」
「それは見たら分かりますー」
騎士女子イルジナの剣は……剣と言っていいのか謎な剣。鋼の板に持ち手が付いてると、言っていいような大剣だ。アレで盾代わりにもしてるんだろうな。当然、パワーも相当なものなんだろう。
「だけどン・シーの怪力に対抗できますかね?」
「ウチの守りの要だし?」
フッフーン、しかし異世界の技術をどこまで初見で耐えられるかな? とか思ってたら耐えるわけじゃなかった。振り下ろした大剣を地面に突き刺したと思ったら、即座に蹴り上げたのか土を跳ね上げてン・シーの視界を塞ぐ攻撃。
ただン・シーも、その可能性を考慮してたようで、騎士女子の姿が大剣の後ろに隠れた隙に移動をしている。跳ね上げられた大剣が振り下ろされる前に、鎌首をもたげた蛇の型が絡めとるように大剣に触れる。
「「むっ」」
息ピッタシじゃん、ン・シーと騎士女子のイルジナさん。
ン・シーは大剣を奪おうとして、できなかったことに驚いたみたい。
イルジナさんは、ン・シーの想定外の怪力に驚いたみたい。
「凄いじゃん。イルジナの
「ええ。ン・シーの
「転生したのが昨日なので、仕方ありません」
「これは将来が楽しみ、と言っていい実力ね。未帰還者になることは、そうそうないわ」
正直、僕らの戦闘能力は上位陣とタメを張るんじゃないかと。ただ冒険者としては初心者だからねえ。ゲームとは違うっていうのは、僕が食料になった時に痛感したかな。
ガーディアンにも営みはあるというか……ダンジョンで産まれて、群れを作って生活して、子供までいたし。
「攻守ともに問題ない。私はシングルスタートでいいと思う」
「やったっ!」
ピョンピョンしててカワイイ。キョンシー跳ねではないけど。そんなン・シーに、アドバイスというか忠告というか、大切なことを教えてくれるハンドレット先輩。
徒手空拳ではなく、武器は持ったほうがいいと。
「ゾンビやグールは臭いじゃん? ヌチャッとするじゃん?」
「あー、それもそうですね」
「ならン・シーはメイスを希望する」
ふむ、ハイパワーだし切断系じゃなく殴打系のほうが活かせるか。購入予定にメイスを追加。
「じゃ、さっそくパイアにお願いしようよ!」
「了解でーす」
僕は追加の選択肢を説明した。
「なるほど。まとめて1つか、それぞれか……ねえ」
「私の時はアップグレードが始まって全消費した挙句、なにも出てこなかったんですけど」
そうなってしまった時は、できる限りの補填はすると約束した。幸いにもン・シーの能力が鑑定だからね。でもまあ、すぐに次のアプグレになるとは思えないから、しばらくの間は大丈夫だと思う。
ただ、僕自身すら制御不能な能力だから、僕らじゃ無理な金額の時は諦めて欲しいことを宣言しておいた。
自分で引き当てたいしな。あまりに大冒険な核宝石の投入の時は断ろう。アプグレの次は、ゴールドラッシュの可能性が捨てきれない。なのでその時はガチャ中止を宣言した。これは内緒の案件です。なにが起きるか分からないから、ダンジョンでやってくると伝えて。
ズルくてもヨシ! ウヒッ。
「決めたっ。まとめて1つにしてもらうよ!」
「では──」
──ガチャサービスを開始しましょ~。
僕は呼びだした鋼のミミックに、星1の
「なにが出るかなー。楽しみだよね」
「ああ。これもある種の冒険だ」
「私的には美容系が嬉しいわ」
『ハッハー! ケッカハ カミノミゾ シルッテ ヤツサー!』
「少々下品な喋りが気になりますが……」
ドラムロールを表現するために、ガタガタと揺れる僕の能力。
「だだだだだだだだだだ」
「ドコドコドコドコドコドコ」
参加するン・シーと斥候女子。
楽しそうでなにより。
いつの間にか見守ってる冒険者からも手拍子が加わった。トカゲの人は尻尾をペーンペーンしてる。
トカゲの人っ!
これは色んな種族がいそうで楽しみだ。
『トレジャー! オア! トラァァッシュ! ハンドレットォォッ テメェラガ カクトク スルノハ コレダウギャァァァァァァ』
塵になって消えるミミック。ノーマルバージョンか。やはりゴールドラッシュはレアリティが高いんだろうね。
そして残される、ミミックのダンボール箱。いったい、なにzonを参考にしたのだー、遊戯の神様あー。ていうかさ「mimic.co.jpの文字に噛みつく牙」って、あのzonから発送した箱のデザインをマルパクリじゃん。
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