04 もう少し落ち着いて行動しましょうとか書かれちゃいますね

「これとこれ、あとこれも必要じゃて」

「多いですってば!」


 お婆ちゃんが僕にアレコレ渡そうとしてくる。服は1着でいいし、ドロワーズも1つでいいよ。サラシも1枚でいいってば!

 着飾りたい様子。


「そもそも今はお金を持ってませんし」

「娘のお古を手直ししたもんじゃし、着るもんもおらん。持ってお行き」

「じゃあ……ありがたく頂戴します」


 僕は、僕の全裸と性の秘具を晒した対価に、衣類を一式手に入れた。さっそく着替えさせてもらう。RPGの村娘っぽくなりました。クリーム色のチュニックに、緑のロングスカート。バンダナが赤。色は全部薄いよ。ブーツはサイズが合わなかったので遠慮しておく。


 今回のことである程度自由に使える血液を、装備しておいたほうがいいかなと思った。なのでキャラの衣装変更の時に出てくる、あの野暮ったい下着を纏っておく。スカートから出ない範囲でストッキングも追加。赤なので緑のスカートとは、合わない気がしたのだ。


 おっけ、これだけ準備してれば、服が破けても隠せるしね。


「ところでものを売り買いできるところ、ありますか?」


 お婆ちゃんに場所を教えてもらった僕は、道具屋さんへ向かうことにした。手持ちの核宝石コアジェム6個を売って、お金に変えておきたいんだよな。大きい街に入るためには、入場料が必要かもしれないので。


「おや、いらっしゃい。ウワサのお嬢さんだね?」

「こんにちは。ウワサのお嬢さんが核宝石を売りに来ました」


 僕は手持ちのものを、おっちゃんに見せる。内包されたエナジーを調べるためか、明かりのマジックアイテムらしきものに、核宝石をセットしているよ。初めて見て感動したので伝えると「マジックアイテム? そりゃいったいなんだい?」とか「魔道具? 児童書の?」とか返ってきた。


 魔法がないっぽい。ファンタジー成分の濃い世界なのに、魔法がない。そりゃサンダーアロー出せないはずだ。せっかく課金して、カッコいいエフェクトにしたのになあ。まあ能力はあるし、ヴァンパイアだしいいかあ。


「全部星1のものだね。1つ銅貨3枚だけどいいかい?」

「構いません」


 得たお金で革袋の水筒を銅貨2枚で1つ。それからタオル2枚と石鹸2つを銅貨1枚+小銅貨6枚で購入した。残金は銅貨14枚と小銅貨4枚。10進法でセーフだったよ。なじみ深いお金の数え方だしな。


 買い物も終わったし、隊長と話をして都会に行こうか。女王とガーディアンのことが、まだ聞けてないからね。探しながら村の人と挨拶を交わして、井戸の使用許可ももらった。一応新鮮な水とチェンジしておく。汲んだのは今朝だけど。体調を崩したこともないけど、湖のより井戸の水のほうが綺麗な気はするしさ。


「あ、隊長さん。少し時間ありますか? 聞きたいことがいくつかあって」

「構わない」


 女王、ガーディアン、それから都会の場所を教えてもらった。

 まず女王。これはダンジョン外にいつの間にか出てきてて、居付いちゃった強力な個体のことだそうだ。場合によっては配下なんかも従えてたりする、厄介な存在とのこと。隊長曰く、今までの女王は総じて敵対行動を取ってたようだ。


「君が転生者というのもあるのだろうな。まさか人を心配するものが現れようとは」


 そしてガーディアン。基本的にはダンジョン内で生まれる敵だって。野良にいるのは女王が生んだあとで繁殖して、広まっちゃったものと考えられてるみたい。いわゆる魔物ってことか。なんでガーディアンなのかといえば、ダンジョンの核宝石コアジェムを守るために、女王も含めダンジョンが生み出すからだってさ。


 僕的には魔物なんだけどなあ。野良ガーディアンなんて、なにも守ってないのに。

 でも魔物は通じず。クリーチャーもダメだった。モンスターは通じたけど、ガーディアン以外も指すことがあるから使わないそうだよ。クソみたいな人間だっているから仕方ないか。郷に従う。僕は郷っちゃったので。


 街の場所も聞いたし、さっそく向かっちゃおう。


「なに? 一緒に向かうものだと考えておったのだが?」

「フッフーン、移動速度の差がありますから」


 村長だったお爺ちゃんにも挨拶して、僕は旅に出るよ~。


「お世話になりました、村長さん。討伐隊の方々には、カッサの街でまた合うかもですね。お先でーす」

「おーおー、気を付けてのう、お嬢さん」


 飛び立つ僕にみんなが手を振ってくれるので、僕も返す。これは討伐隊の人の警戒もなくなったと思われる。

 ちなみに服はもうダメにしました。


 羽を生やしたら、背中の部分がビリビリになっちゃったよ。血の糸で補強して、背中の部分がパカーって開いた村娘の服というものが仕上がった。


 高くジャンプしたあとだから、気付かれるとしても僕がいなくなってからだろう。落ちた服の破片で……。もうここには来れない。来る理由もないけど。全部見られたし、お婆ちゃんには全部知られちゃったしさ。


 ちなみに「高くジャンプ」は、隊長に教えてもらった。フォースを全身に巡らせて行動したら、身体能力が数倍に跳ね上がるということを。よくよく考えたら気付けよって感じの回答。


「通信簿には、もう少し落ち着いて行動しましょうとか書かれちゃいますね」


 森近くの村だったので、ついでだし野良ガーディアンの索敵をしつつ、ここから北にあるカッサの街に向かうことにしたんだ。金策は必要です。金銀の硬貨も当然あるだろうしね。


 大中小って硬貨が分かれてたら、現在の所持金はたいしたことない額だろうから、稼がないと宿に泊まるのも厳しそうなんだよなあ。安宿が微妙だったら野宿も視野に入れるか? 川のある場所なら水浴びもできるし。


 どうせお金を使うなら、僕というよりパイアちゃんを着飾りたいという欲がある。ドレスで着飾って、血の鎧を装備したらドレスアーマーになったりしないかな?


「そういえば武器にも課金したんだから、血で作るとカッコいいのができるかもしれませんね」


 即お試し。鋭利なヴァンパイアクローで手首を切り裂く。あ、イケるっ!

 課金武器の見た目だけ剣・・・・・・が細部まで頭の中に映像化されて、勇者の剣と聖剣を形成できた。これは操血を頑張って鍛えるしかないよ。


 服や鎧もそうだけど、血の強度は僕のフォース次第だからな。どれだけ血を溜め込めるのかも把握してないし、チョット戦闘マシマシで考えておこう。動物なら相性もいいしね。血で刺せば相手の血液を、支配下に置けるから勝ったも同然っ。ガーディアンならお金にもなる。


 なるべく稼いでおきたいね。僕の生活費はもちろんだけど、課金要素。

 課金したのはパイアちゃんだけじゃない。

 ワンチャン来る~?


 って感じでアレコレ考えながら、戦闘したり移動したりしてたらエダの街に着いた。どおりで遠いと思ったよ~。日をまたぐ予定じゃなかったもん。僕は道に迷ってたらしく、カッサの街を通り越してたようです。川があって良かった。水浴びができたし。でも石鹸は臭かったのが残念。


「太陽を目印にしたら、確かだと思ったんですけどね」

「知ってるかい? 太陽は動くんだ」

「知、っ、てーまーすぅー。日の出の位置を覚えてたつもりだったんですよ!」

「ま、どっちでもいいさ。で?」


 街に入るのかと聞かれたので、僕は入ると答えた。だって別にカッサでもエダでも、どっちだっていいし。そう──都会ならね!

 能力を使ったらレシピも増えていきそうだしな。色々できるようになったほうがいい。つまり僕には色々ありそうな都会が必要なのだ。


「カワイイ服があるなら問題ありません」


 お金を稼いでカッコいいのもカワイイのも、コンプしてやるのだと伝える。門を守る衛兵は、ちょっと引いてた。はっ、パイアちゃんの可愛さが分からないとは、もの凄く残念な門番だね。


「ところで君、コドの村で憲兵隊に協力してくれたんだって? 報告をまとめたいんで詰め所に来て欲しい」

「ア、ハイ」


 遠距離通信が可能ななにかは、あるみたいだ。隊長め……カッサで捕まえる予定だったのだろうか? さすがにアンデッドをスルーするわけには、いかないようだ。僕が女王っていうのもあるだろうし。


 ダンジョンの守護者、ガーディアンの女王。正直言って、なってしまったものはどうしようもないけどさ。平和に暮らしたいよなー。


 お金を稼ぐ手段が、乱暴な方法しかないんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る