第55話 教頭室



「まったくなにをやっているんだ!」


 魔法科主任のガブリエル先生が声を荒げた。


「とりあえず犯人も捕まり大事に至らなくて良かったが」


 俺とミアとエマの三人は、教頭室に呼び出されていた。

 担任のハウ先生もいる。


「まあまあ、ガブリエル先生。無事だったんだからいいじゃないですか」


「ハウ先生!貴方は担任でしょう?これは貴方の監督不行き届きでもあるんですよ!」


「そうですね」


「そうですね、じゃないだろう!」


 ハウ先生は相変わらずの無表情の無感情。

 俺たちをかばってくれているのかいないのかもわからない。


「それにその女子生徒は誰だ!そんな子、貴方のクラスにいましたか!?」


「彼女はうちのクラスのヤソガミくんです」


「えっ??」


 ガブリエル先生だけじゃない。

 エマとミアも、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で俺を見た。


「ヤソミが??」

「ヤソガミくん??」


 でも一番驚いたのは俺だ。

 どうしてハウ先生は一発で見抜いたんだ?


「あ、あの、ハウ先生。俺......」


「ヤソガミ君。私の目は誤魔化せません」


「す、すいません。寮を抜け出して......」


「ヤソガミ君のわいせつ事件については、すでにジークレフさんとクレイトン君、そしてポラン君と神使のイナバさんから報告を受けています。冤罪えんざいだったと」


 ミアとエマが怯えるようにびくっとした。


「彼女たちへの処分についてはまた改めて考えますが......」


 ハウ先生が話を続けようとすると、

「それよりも!」

 ガブリエル先生がカリカリしながら割って入る。


「拉致事件のほうだ!本校の生徒二人があの魔法犯罪組織エトケテラに連れ去られ、それをそこのヤソガミが単身救出に乗り込んだって!?特待生だからって何か勘違いしているんじゃないか!?ジェットレディが駆けつけてくれたから良いものの......て、彼女は彼女でどこへ行ってしまったんだ!ったくどいつもこいつも自由にもほどがある!」


 ただでさえ神経質でお堅そうな中年男性のガブリエル先生は苛立ちを爆発させた。

 じっと黙って話を聞いていた教頭先生がハァーッとため息をつく。


「今回の件。ジェットレディからはくれぐれも温情ある措置を取るようにと言われました」


「なっ!あの女...失礼。彼女は今や我が国を代表する国家魔術師ですが、それは一教育機関に対する内政干渉では!?」


「そして理事長からはこうです。今回の処分については、担任であるハウ先生の一存に任せる」


 ガブリエル先生は言葉を失った。

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