第53話 ヤソミ②

「そうか!コイツら、ヤソジマを襲ったヤツらか!たしか......エトケテラ!」


「小娘。ヤソジマの島民だったか?まあいい。お前のようなイカれた女には付き合ってられん」


 ロテスコたちは窓からプテラスへ跳び移った。

 大怪鳥は悪党どもを乗せ、バサーッバサーッと羽ばたいていく。

 俺も窓際に駆け寄ったがもうどうしようもない。

 とその時。


「小娘!ひとつ忘れていたぞ!」


 悪党どもを乗せた大怪鳥がぐるんとこちら側へ向いた。


「借りを返すのは、早いほうがいいよな!?」


 ロテスコがにやっと危険な笑みを浮かべるのに続いて、大怪鳥の口がガバァッと開く。

 その瞬間、ヤソジマでの記憶が蘇る。

 俺たちに......撃ってくる気だ!


「マズイ!」


 予想通り、大怪鳥の口内にエネルギー弾が生成されていた。

 クソッ!どうする?

 エマとミアを抱えて飛び降りるか?

 ダメだ。もう間に合わない。

 

「死ねぇ!!」


 ロテスコの怒声とともに、大怪鳥プテラスからゴァァァンッ!とエネルギー弾が発射された。

 俺の瞳に破壊的な閃光が映る。

 万事休すか。

 でも、ヤソミの身体なら、ひょっとしたら耐えられるかも?

 考えている時間はない。

 やるしかない!


「ミア!エマ!ふせてろ!」


 窓に向かって飛び出した。

 ヤソミの全身で、あれを受け止めてやる!


「うおぉぉぉぉ!!」

 

 叫びながら目をつぶって構えた。

 死の恐怖に打ち勝つために。

 あとは祈るしかない......と思ったその時。俺は「??」となる。

 エネルギー弾が、来ない?


「!!」


 目を開いた瞬間。

 助かったと思った。

 これもヤソジマの記憶と重なる。

 そうだ。

 あの時もこの人が助けてくれたんだ。


「遅くなって悪かったな!」


 颯爽さっそうと窓際に着地し、肩越しに快活な顔を見せる、デッカい銃を携えたスタイル抜群の美女。


「プテラスの魔力弾が...相殺された!?いったい誰が......なっ!?」


 悪党どもの驚声が響いた。


「ジェットレディだとぉ!?」


「ほ、ホンモノなの!?」


 ぐったりしていたはずのエマが誰よりも先に声を上げた。

 ジェットレディは肩越しにウインクで応えると、空に向けて銃を構えた。

 

「〔激鉄ロック:グランス〕」


 ズバァァァァン!

 

 とどろく発砲音。

 ほとばしる閃光。

 空に鮮やかにはしる一筋の光線。

 それは一瞬のうちに巨大な鳥獣を見事につらぬく。


「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁっ!!」


 悪党どもの悲鳴だけを残し、大怪鳥プテラスは黒いちりとなってサーッと空に霧消むしょうした。

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