第50話 ミア・キャットレー⑤

 *



「マジなんなんだよ!」


「え、エマちゃん。とりあえず落ち着こうよ」


「拉致られたんだぞ?犯罪だぞ犯罪!はやくケーサツ来いよ!」


 わたしたちは今、手足を縛られ、何もない殺風景な部屋に監禁されている。

 ここは一体どこなんだろう。

 リュケイオンなのかどうかもわからない。

 気がついた時にはこうなっていたから。


「なんであーしがこんな目に遭わなきゃなんねーんだ......」


 騒いでいたエマちゃんも次第にうなだれた。

 そんな時。

 唐突にガチャッとドアが開いた。


「早い目覚めだな。まだ着いたばかりだというのに。さすがは魔術師の卵といったところか」


 趣味悪いスーツを着たおじさんが部屋に入ってきた。

 後ろには部下らしき者二人がついている。


「いやはや我々は運が良い」


 おじさんがニヤリとして、手に持った物を見せた。

 学生証。エマちゃんのだ。


「ヤソジマ占領計画が失敗し、資金も不足し困っていたが、こんなタイミングでまさかフィッツジェラルドバンクの一人娘に偶然出くわすとは」


「あーしの学生証かえせ!」


「こんなものはいくらでも返してやる。ほれ。お前が本当にエマ・フィッツジェラルドかどうか確認しただけだ」


「投げんなよ!それで、あーしのこと、どーすんだ」


「我々が用があるのは、お前のパパの会社だよ。大金をせしめるチャンスだ」


「そ、そんなことできんのかよ。ケーサツが黙っちゃいねーだろ」


「警察ごときじゃ、我々のようなは捕まえられん」


「ま、魔法犯罪組織?」


「エトケテラ。聞いたことはないか?」

 

 聞いたことある!

〔エトケテラ〕は、魔法を使った犯罪を行う魔法犯罪組織。

 ときには違法改造した魔物ゼノを犯行に利用することもあるらしい危険な存在。

 そんな人たちに、わたしたちは捕まったのか......。


「そっちのネコミミのお嬢ちゃんは知っているようだな?顔色が一気に悪くなったぞ」


「お、おい、ミャーミャー。そんなにヤバいのか」


 エマちゃんがおびえたようにいてくる。


「で、でもさ?そんなら国家魔術師が来てくれんじゃないの?」


「国家魔術師は前から〔エトケテラ〕を追っているよ。でも、捕まっていない」


「はっ??じゃ、あーしはどーなんだよ??」


「そ、そんなの、わたしにはわからないよ」


「フザけんなよ!あーしはなんも悪いことしてねーのに!」


「そ、そうだよね」


「オマエのせいだ!」


「えっ??」


「オマエがあーしの言うこと聞かずに逃げ出すから、あーしがこんなことに巻き込まれたんだ!全部オマエのせいだ!」


「え、エマちゃん?」


「なにもかもオマエのせいだ!あーしの足を引っぱってんじゃねえ!」


 わたしのせいなの?

 全部が?

 わたし、エマちゃんのために頑張ったよ?

 それに巻き込まれたって言ったけど、それはわたしの方じゃない?


「エマちゃんとわたしは......友達だよね?」と言いかけたけど、言葉を飲み込んだ。

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