第17話 国家魔術師とは

「では、授業を始めましょう」


 先生がチョークを手に持った。


「ヤソガミ君にとっては本日が最初の授業ですので、他の皆さんの復習も兼ねて、基本の基本から始めます」


 どうやら俺に合わせて授業を始めてもらえるみたいだ。

 良かった!......でも、みんなに不満はないだろうか。

 気になってチラリと教室内の様子を確認した。

 そういう雰囲気はない。

 むしろ無関心?

 とにかく、問題ないなら一安心。

 

「リュケイオン魔法学園は、その名のとおり魔法について学ぶ教育機関です」


 先生の説明が始まる。


「そして皆さんは、将来の国家魔術師となる、いわば魔術師の卵です。

 ご存知の通り、現在の魔術師は、国家資格を取得し、国家魔術師となって初めて、業として正式に魔術師活動を行えます。

 国家魔術師資格を取得するには魔術師試験の合格が必須であり、魔術師試験を受験するためには魔法学園の卒業資格が必要です」


 ここから先生は黒板にチョークを当てると、次のような表を書いた。



 【国家魔術師レース・マグスランク】

  Sランク:ダイヤモンド(金剛石)

  Aランク:コランダム(鋼玉)

  Bランク:トパーズ(黄玉)

  Cランク:クォーツ(石英)

  Dランク:フローライト(蛍石)

  仮資格者:タルク(滑石)



「こちらは魔術師のランクです。

 国家魔術師となると、魔法省管轄の国家魔術師協会によってこのようにランク分けされ、ランクによってできる業務が異なります。

 当然、危険度や難易度の高い仕事は高位ランクの魔術師のみ扱うことができます」


 魔術師のランクか。

 確かジェットさんって、コランダムクラスって言っていたよな。

 しかもダイヤモンドクラスに入れるぐらいって。

 ということは、限りなくSランクに近いAランク魔術師ってことか。

 スゴイスゴイとは思っていたけど、改めてスゴイんだなぁ、あの人。

 しかも美人だし。

 しかも巨乳だし......て授業に集中しろ、俺。


「また、国家魔術師のランクと同時に、こちらも覚えておかなければなりません」


 先生はさらに次の表を書いた。



 【ゼノ・ランク】

  Sランク:魔神

  Aランク:魔人

  Bランク:魔獣

  Cランク:魔物

  Dランク:その他。小魔とも呼ばれる。



「こちらが魔物、すなわち〔ゼノ〕のランクです。

 国家魔術師は、ゼノ討伐において、原則として自身のランクと同等以下の対象しか任務にあたれません。

 したがって、Dランク(フローライト)の魔術師は、Cランクの魔物討伐任務は行えません」


 ここで先生の視線がそれとなく俺に向く。


「例えば、大怪鳥プテラスは魔物、すなわちCランクのゼノになります。その上位であるプテラスキングは巨大魔獣、すなわちBランクのゼノになります」

 

「あっ...」


 思わず声を漏らしてしまった。

 やっぱり先生は島で何があったかを知っているんだ。

 何も言ってこなかったから、この人は知らないのかとも思っていたけど。

 それはそうだよな。担任だし。

 

「くれぐれもこの〔ランク〕は忘れないでください。

 これは国家魔術師のルールであり、自らの命を守るための基準でもあります」


 これ、ひょっとして俺が注意されているのかな。

 はい。今後は気をつけます。

 てゆーかイナバのせいです。

 俺は逃げたかったんです。

 

「今後、皆さんは卒業するまでの間でも、実技演習で実際に〔ゼノ〕と対峙たいじすることがあります。

 もちろん、その際はもっともランクの低い小魔を相手にすることになります。

 そして実は、皆さんは在学中にも、魔術師ランクに入ることができます

 もう一度、国家魔術師ランクを見てください」



 【国家魔術師ランク】

  Sランク:ダイヤモンド(金剛石)

  Aランク:コランダム(鋼玉)

  Bランク:トパーズ(黄玉)

  Cランク:クォーツ(石英)

  Dランク:フローライト(蛍石)

  仮資格者:タルク(滑石)



「こちらの一番下、仮資格者のタルクです。

 仮資格は在学中にも取得可能なんです。

 通常は二年生の終わりに仮資格を取り、三年生になるとプロの国家魔術師とともに実際の現場での研修が中心になります。

 問題がなければ、卒業と同時に晴れて国家魔術師となり、一人立ちすることになります」


 先生はチョークを置くと、生徒たちを見渡した。


「ということで、皆さんには卒業と同時に国家魔術師となれるよう、勉学に励んでいただければと思います。

 教科によってはつまらないと感じることもあるでしょう。

 ですが、明るい未来を目指して、是非とも頑張ってください」


 ......こうやってしっかりとした説明を受けると、魔術師というものが本当に現実的になってきた気がする。

 俺は本当に、魔法学園に入学したんだ。

 心の中であらためて実感した。

 ここに至るまでにも色々あった。

 怖い目にもあった。

 けど、にわかに気合いが入ってきたぞ。

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