第2話 ウサギ

 *


「俺、どうなるんだ」


 とりあえず生きてはいるけど......。


「本当になにがなんだかわからない」


 いきなり猟師に撃たれて、目が覚めたら牢屋の中。

 麻酔銃で撃たれたのかな。

 目立った怪我もしていないし殺されなくて良かった......て、そういう問題か!?

 そもそも現代の日本で、いきなり猟銃に撃たれるなんてことあるのか!?

 人権侵害にもほどがあるぞ!


「俺は人里におりてきた熊か!」


 なんて今さらツッコミを入れてもしょうがない。

 ......よし。いったん冷静になろう。

 冷静になって、現状とこれからどうするかをしっかり考えるんだ! 


「......んでね?」


 どう考えてもヤバいだろこれ!

 いや落ち着け!

 とにかく無実の罪だということを訴えるんだ!

 きっとわかってくれる!


「......わかってもらえなかったら?」


 そもそもいきなり撃たれている時点で普通じゃないんだ。

 話せばわかるとかそういう次元ではないのでは......。


「逃げるか......?」


 でもどうやって?

 ああクソッ!

 考えれば考えるほど絶望する!


「おい少年」


 ん?誰かの声?


「そこの少年」


 誰だ?誰もいないぞ?


「そこの中肉中背の黒髪の制服姿の少年。お主じゃ!」


 俺のこと?俺を呼んでいるのか?

 でも人の姿は見えないぞ?


「視線をさげろ!バカモノ!」


「視線をさげろ?......えっ?」


「オイラが見えたか?少年」


「う、ウサギがしゃべってる!?」


「なんじゃ。兎が喋っちゃ悪いのか」


 たしかに白兎しろうさぎが喋っている!

 なんだこれは?夢でも見ているのか?

 いや、すでに夢ではないってことはよくわかっているけど......。


「悩んでおるのぉ〜若いってええのぉ〜」


 白兎がニヤニヤとしている。

 え、なにこれ、ヤバい。


「キモっ!!」


「誰がキモイじゃ!失敬な!」


「兎が喋ってるとかマジできしょっ!」


「このタワケがぁ!!」


 白兎が、ウガーッ!と顔に飛びかかってきた。


「ちょっ!痛い痛い痛い!」


「こんなにラブリーでプリティーなオイラにむかってキショイとはなんじゃあ!謝罪して撤回せんかぁ!」


「わかったわかったわかったわかった!謝ります謝ります!撤回します撤回します!ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいっ!」


「わかればよい」


 白兎はパッと俺から離れてスタッと床へ着地した。


「まったく最近の若いモンは」


「あ、あの、ええと」


「まあ今はまだ混乱しているじゃろうから大目に見てやるが」


「は、はあ」


「だがオイラが来たからにはもう安心せい!八十神神社やそがみじんじゃのせがれ、八十神天従やそがみたかつぐよ!」


「ええ!?俺のこと、知っているの!?」


「もちろんじゃ!いいか?今から簡単に今のお主の状況を教えてやる」


「お、教えてくれ!!」


「むっふっふ。よく聞け!お主はなぁ?」


「う、うん」


「転移したのじゃ!!」


「てんい?てんいって...転移!?」


「そして選ばれし八十神天従は、我が国〔オリエンス〕の救世主となるのじゃ!」


「救世主!?てゆーかここ日本じゃないの!?はあ!?」


「以上じゃ」


「なーるほど......てわかるかぁー!!簡単すぎだわ!!」



※イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/nemon13/news/16818023213685409175

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