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昼食の場所を
大通りを外れて、またも路地に進みながら、なぜか私は
感情に引っ張られ向かった先は、小さなカフェだった。今の家に引っ越して来た時、最寄り駅周辺を散策していた時に見つけたお店。個人の住宅の一階を改装してお店にしたような、隠れ家のようなお店だ。庭には一つ、古い木目のテーブルと椅子の
数分駆けただけだが、日中座りっぱなしの私にとっては重労働だった。もう
私は木製の大きな扉を開け、店内に入った。「いらっしゃいませ」と言う店員さんに外のテラス席を指差し、居座る心に従い腰を下ろす。
住宅街の中ではあるが、よく手入れされた 背の高い植物や
まだ何も注文していないと言うのに、私はすでにこのお店が好きになりつつあった。気になっていたけれどずっと忘れていた。
昼食を食べに来たことを思い出して、私はメニューからランチセットの
先に入れたてのコーヒーが運ばれて来たので、マグカップを口に運ぶ。仕事中もよくコーヒーは飲むが、いつもはカプセル型のインスタントのものばかりだ。それに比べ、淹れてもらったコーヒーの美味しさは
コーヒーを堪能していると、クロワッサンサンドが
締めにチーズケーキを頼み、一緒にコーヒーをおかわりして、昼下がりの落ち着いた時間をゆっくりと
これもハゴロモのおかげだった。宇佐美さんに言われていた"できるだけいつもの一日"とは変わってしまったけれど、変化の中で私の情動も活き活きとしている気がする。それに、思った以上に自分の心は
ずっとこのお店に来たいと思っていた自分の気持ちには申し訳ないことをしてしまったなと思う。同時に、先へと自由に進む、自分自身の心が少し羨ましくも感じた。その情動もまた自分自身なのに、不思議だ。ちょっとだけ悔しい。
そんなことを考えていたら、2時間近くもカフェでゆっくりと過ごしてしまった。程よい満腹感に満足し、店員に「ごちそうさまです。また来ます」と伝え、先ほど駆けてきた道を戻る。
ふと家の冷蔵庫の中身が空っぽだったことを
心に追い付かれないように、と運動不足の足が少しだけ駆け足気味になる。もっと早く。足の疲れはすっかり取れていた。
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