第17話 13対1の入学試験(前編)

 野原と森林が広がる、緑豊かな場所。


 ビームライフルは狙撃用。

 ビームソードも、動きを止めないように――


 ウ―――ッ!


『始めっ!』


 その瞬間に、強い横G。


 視界が一気に飛び、肉眼では追いきれないほど。


 PS(パワードスーツ)のアシストで、長いライフルを撃つ。

 狙いは、俺がいた場所へ砲撃してきた『エイジス・キャノン』の小隊だ。


 今は足を止めて、踏ん張る姿勢。

 すぐには、動けないよなあ?


 事前のポジションで、どれかに当たればいい的に……。


 あ!

 二発とも当たったわ!?


 これで、『エイジス・キャノン』は残り1機――


 さすがにプロの方々だねええええええええ!


 地上ギリギリで飛びつつ、何とか地形による遮蔽しゃへいに。


 青いビームやミサイルで地面が弾け飛び、一帯を爆破したような惨状。

 制圧射撃をしながら、高機動タイプの『エイジス』5機が包囲してくる。

 フラッグ機で対戦相手のビンセルンは、参加せず。


 相手には、偵察用の『エイジス・リーコン』がいる。

 鬼ごっこや隠れんぼを行えば、追い詰められるだけ!


 高機動だろうが――


「こちらにセオリーが通用すると……」


 背部の可動式スラスター2つを展開して、強引に上昇する。


「思うなよっ!?」


 案の定、『エイジス』5機は地上から撃ってきた。

 他の支援タイプも、同様。


 けれど、当たらない。


 こちらはすでに、高度を上げている。


 空中で手足を動かし、向きを変えるまでに、『シルバー・ブレイズ』のセンサーが地上の全機をロックオンした。

 耳に残る電子音が続く。


「捉えた!」


 ロックオンしたPSに、両手で構えたビームライフルで撃ち抜く。


 高機動タイプは、回避行動に入った。

 けれど、電子装備を山盛りとなれば、そうもいかないよな?


 慌ててジャミングを始めても、遅い遅い!


『エイジス・リーコン1機、大破!』


 そういう時は、全力で移動するんだよ!



 高機動タイプの『エイジス』5機が、大急ぎで上昇してくる。

 このまま狙い撃ちをされれば、成す術もない。


「俺も降りますかね?」


 ビームライフルを投げ捨て、青いビームソードを抜く。


 今度は、下方向へメインスラスターを噴射!

 逆ロケットのように突き進む。


 見る見るうちに、敵の部隊へ。


 会いたかったよ……。


 片手にビームライフルを持つ『エイジス』が撃ちつつ、反対側の手でビームソードを伸ばした。


 まぐれ当たりを期待してか、ライフルの射撃を続ける。

 切り結ぶ姿勢ではない。


 空中で手足を動かし、ビームの軌道を避けつつ、撫でるように切り裂いた。


「1つ」


 その下にいた奴は、味方を撃つわけにもいかず、ビームソードだけ。


 けれど、その振りは縮こまっていて、カウンターで突きから切り裂き。


「2つ」


 マシンガンの弾幕。

 同時に、青いビームソードの光。


 火線が走るも、その前に加速!


 『エイジス』は背部バックパックの横から繋がっている可変式のシールドを前にした。

 両足で踏みつけつつ、相手を上へ。

 そのまま蹴り飛ばしつつ、メインスラスターを全開。


 一直線に宇宙を目指す、シールドを前にしていた『エイジス』。

 

 あ!

 衛星軌道を通りすぎて、どこかへ飛んで行った!

 パニックになって、操作をミスったようだ……。


「たぶん、3つ」


 残りは、地上で武器を構えていた。


 狂ったように弾幕を張っているが、その隙間を縫うように接近する。

 減速せずに……。


 慌てたように動き出す『エイジス』。


 いや、背中を見せて逃げ出すなよ?

 仮にも軍人だろ?


 ちょっと、宇宙から落ちてきたスピードを押しつけるぐらいだから……。


 あっという間に追いつき、また両足で接した後に蹴り飛ばす。


 その『エイジス』も、凄まじい勢いで地上と水平に飛んでいく。

 必死に姿勢を制御しようとしているものの、下の地形でぶつかり、跳ね回り続けた挙句に高く飛び上がり、力尽きたように落ちた。

 遅れて、剥がれ落ちたパーツも地面へ。


「4つ」


 接近戦に強い『エイジス・バトルマスター』が1機、巻き込まれた。

 お前こっち来るな! と味方にアピールしていたようだが、間に合わず。


 こちらは蹴り飛ばした勢いで、別の『エイジス・バトルマスター』に後ろから抱き着き、そのままメインスラスターで地上スレスレを飛ぶ。


 接触していることで、相手の声が届く。


『貴様、離せ――』


 男に抱き着く趣味はないが――


 最後の『エイジス・バトルマスター』に正面から突っ込んだ。


 相手は回避しようとするも、機動力を下げた機体。

 間に合わずに、正面衝突。


 併せて吹っ飛びつつ、地面に叩きつけられた。


 バズーカをあるだけ撃っておく。


 撃破!



 高機動タイプの『エイジス』が、青いビームソードで斬りかかってきた。

 滑るように移動して、逆手のビームソードで背中から貫く。


「5つ!」


 残りは、『エイジス・キャノン』1機と、フラッグ機のビンセルン。



 キャノンは味方の支援ではなく、奴の護衛をしているようだ。

 森林に入り込み、こちらの視界とセンサーの外。


 無力化された敵から、適当に武装を回収して、準備を整える。


「そろそろ、終わりにするか……」

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