第16話 戦うまでに勝敗が決まる

 エースが乗りそうな、2mの人型。

 全体的にネイビーブルーで塗装され、いかにも強そう……。


 要所にグレーや明るいブルーで、立体的な配色だ。


 そのPS(パワードスーツ)は、気障なイケメン顔のまま、地上を飛び跳ね、両手で持つ大型のビームライフルで狙撃する。


 ターゲットは次々に撃ち抜かれ、撃墜判定に。


 ピッと、対戦していた動画が止まった。

 部屋が明るくなり、正面のスクリーンが薄くなる。


 リモコンを操作した令夢れいむは、解説する。


「今のが、あんたの対戦相手となったビンセルンや! PS科2年で、シルバーソード持ち! 専用機は、量産機だけど軍のエース部隊でも使っている『エイジス』!」


「マルティナ先輩と同じ?」


 俺の質問に、令夢は笑いながら否定する。


「ちゃうちゃう! あいつは顔がええから、ウチの広報で義理許しや! 対等な条件で戦えば、マルティナが絶対に勝つわ!」


 隣に座っているキャロリーヌは、明るい声で言う。


「なら!」

「今度の対戦では、そいつをリーダーにPS20機を出すそうや……」


 びっくりした梨依奈りいなが、訴える。


「何、それ!? 仮にもシルバーソードが、恥ずかしくないの?」


「ウチに言われても、知らん! どうも、今回の入試を成立させるために、マルティナが自分を賭けたようでなー? 自分の進退もかかっていて、奴は手段を選んでいないようだわ……。あんたが負けたら、1週間はしゃぶり尽くされて処女も失うから、責任重大やで?」


 降りるのなら、今言え。


 視線で問いかける令夢に、返事をする。


「先に、全ての情報をください」


「ま、それもそうやな? PS用の武器弾薬が、ろくに入手できん! 間違いなくビンセルンの仕業だわ」


 怒り心頭の梨依奈が、叫ぶ。


「許されるの!?」


「証拠がない……。仮に立証できても、入試が終わった後や! 元々、PS用の武器は品薄だったし」


 これ以上の脱線を避けるため、口を挟む。


「稼働するための整備で、問題はありますか? 残っている武装は?」


「んー! 日程が早められない限り、整備は問題ないわ! 武装は……専用のビームライフルとビームソード。それに、汎用のバズーカが1つ。設定は?」


「このままで! 70%の稼働率でいいから、明日の朝までに仕上げられますか?」


「い゛っ!? できるけど、それ徹夜になるわ!」


 立ち上がって、深く頭を下げる。


「お願いします! たぶん、『緊急出撃と考えたら常在戦場』とかの理由で、いきなり対戦になりますので! 俺たちが伝手で対応する前に、叩きたいはず」


「いかにも、ありそうや……。うん、分かったわ! 何とかする! 設定を弄らないだけ、まだマシか。でも、こんな話やったら、センサー類をバラすんじゃ――」

「手伝います!」


 ブツブツと呟きながら、外へ歩き出した令夢。


 それについていく梨依奈。



 ――生徒会室


「ビンセルン君とチームの20人は、この資料にまとめてあるわ! ……勝てる?」


 不安そうな生徒会長に、返事をする。


「たぶん……。戦うフィールドの変更はないですよね?」


 首肯した風美香ふみかは、ジッと俺を見ている。


「対戦相手のデータを頭に入れますから……。資料、ありがとうございました」


「何か……手助けしようか?」


 風美香の問いかけに、俺は考え込む。


「でしたら――」



 ◇



 ゲストルームで、対戦相手の動画を見ていたら、寝オチした。


 甲高い警報が、目覚まし代わりに。


『――中学の和真かずまは、PSを用意のうえ、野外演習場へ集合せよ!』


 ハイハイ。

 こんな事だと思ったよ……。



 ゲッソリした令夢先輩から、『シルバー・ブレイズ』を受け取る。


「完璧に仕上げたで! 設定と武装は前に言った通りや! これで負けたら、承知しないからな!?」

「ありがとうございました」


 

 ――野外演習場


 『シルバー・ブレイズ』を身につけ、いつもより高めの視界。


 センサーが、対戦相手を捉えている。


 ビンセルンが乗っている『エイジス』と……。


 同じ『エイジス』シリーズで12機。

 それも、搭乗者はばかり。


 両肩にキャノンを載せた『エイジス・キャノン』。

 可動式の肩シールドを外して、接近戦に特化した『エイジス・バトルマスター』。

 センサーを増強した『エイジス・リーコン』。


 お前さあ。

 いい加減にしろよ?


 見たくもない顔が現れ、勝手に喋る。


『逃げずに、よく来た! この決闘は――』

「生徒会長? ルール説明を!」


 ザザッ

『えー! この実技試験では、以下を勝利条件とします! また、現在のPSを超える参加は認めません! リストに登録してあっても無効です』


 屋外にある巨大なモニターに、パッと表示される。


 【受験者:和真】


 <勝利条件>

 ・ビンセルンのPS撃破、または降参

 ・〃 に参戦しているPSの全滅、または無力化


 <敗北条件>

 ・自身のPS撃破、または降参


 対戦相手のビンセルンも、同じだ。

 しかし、俺は1機で、相手は13機……。


 ニヤニヤしている奴は、いかにもな軍人の後ろに下がった。


 生徒会長の声が、野外に響く。


『戦力差を考慮して、相手の武器弾薬を奪い使用することを認めます! この設定をしない場合は、即座に失格負けです!』


 ビンセルンは反論せず。


 奴らのチームは、武器をフリーに設定。

 こちらも、忘れずに……。



 さて、始めますか!

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