現世
蓮夜と玲香。
その二人が何処かへと連れ去られていた最中。
「……」
現世では大混乱になっていた。
全世界に二人が何か呑み込まれている様子はすべて生放送されていたのだ。
初めて見る現象にも驚きが広がったし、呑み込まれた二人も大人気配信者で人気も高い。
そんな二人がいなくなった喪失感でもう日本全体が沈んでいたと言ってもいい。
「……ふぅー」
そして、何より。
最も衝撃を与えられたのは日本政府である。
「来てしまったか」
日照神社。
日本の中で最も歴史深く、危険地帯であるここの管理を担っていた御仁がいなくなった。
これが日本政府に与えた影響は大きかった。
「……ですね」
ということで、日本政府は至急の対応を迫られていた。
「……行きますか」
幸いにも日本政府の動きは実に早かった。
高畑近衛が日照神社の前に到着。
「行くほかないだろうな」
そして、日本国の総理である岸柁文男も日照神社の前へとやってきていた。
日本国のトップと、すでに通いなれたダンジョン庁のトップが二人で来ているのである。
「天皇陛下にお越ししてもらった方がよかっただろうか?私たち二人で足りるかね?格として」
「それはそうですが……さすがに、天皇陛下をお連れすることは出来ませんよ」
「やはり、そうであるか。では二人で行くとしようか。どうせ護衛などいても仕方あるまい」
「ですね」
二人は、ただ二人だけで日照神社に向かうための階段を上っていく。
「それにしてもすまんな。死ぬかもしれぬ場に君まで連れてきてしまって」
「……トップである貴方が行っているのに私だけがいかないわけにもいきませんよ」
「はっはっは。そうかそうかであれば助かる……では、行こうか。死地かもしれぬ場所にな」
「えぇ」
日照神社の社殿へと足を踏み入れた二人。
「おやおや、お客さんかな?」
それを待っていたのは杖をついた一人の老爺であった。
「……っ!?」
「……おぐっ!?」
だが、それはただの老爺にあらず。
岸柁と高畑はその老爺を見た瞬間に崩れ落ちて胃の中のものを全力でぶちまける。
「……あぐっ、あぐっ……ぐぬっ!」
「……こ、れ……は」
二人の体が震え、本能からの恐れがこみあげてくる。
ありとあらゆる意思も通じず、ただ表情を上げることを拒み続ける。
視界が働かない。
「おぉ……まだわしの気配を抑えきれていないのか。待ちぃよ?人の子よ。ちぃとぎっくり腰で本調子ではないのじゃよ。わしは」
神とは、ただの人が見て許される存在ではないのである。
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