放浪

 白衣の男を倒すと共に急な形で現れた黒い点。

 そこに吸い寄せられた僕たち三人はそのまま何もない砂漠へと放りだされていた。


「……マジで、はぁー」


 僕は深々とため息を吐く。

 これでほぼほぼ振り出し……白衣の男の反応からして多くの情報をもっていそうだったのだが……。

 まったく、本当に最悪としかいいようのない話である。


「神薙さん。食料とかはちゃんと持ってきているよね?」


「うん、それはもちろん」


 僕の疑問の言葉に神薙さんがうなづく。

 

「ならいいよ……しばらくの間は命をつなげそうだね」


 僕も神薙さんもそこそこの量、食料を持ってきている。

 しばらくの間は食いつなぐことができるだろうから一番最初よりはまだマシだろう。


「それでイキシア」


 僕はイキシアの方に視線を送る。


「ちょっと聞いていい?あの塔以外、あの洞窟以外で何かいい場所、人がいそうな場所を知っている?」


「きゅーい」


 僕の言葉にイキシアは首を横に振ってこたえる。


「……そっか。ちなみにだけど、ここからあの塔と洞窟の位置がわかったりしないよね?」


「きゅーいっ!」


 正直に言うとまったくもって期待していなかった僕の疑問。

 だが、それに対して力強くうなづいたイキシアに僕は歓喜の声を上げる。


「マジか、それはよかった……よかったけど」


 問題はどれだけ黒点から飛ばされたか、だな。

 これで戻るのに一年なんて言われたら目も当てられない。

 できるだけ、短く、あってくれ。


「……なるほど。それはどれくらいかかる?」


「……」


 願いながらの僕の言葉に対してイキシアはそっと視線を外す。


「わかった。それじゃあ、僕が日数を言っていくから、そこだ!っと思ったときに返答して」


「きゅーいっ」


 僕の言葉にイキシアがうなづく。


「一日」


 それを受けて僕は最初の日数を口にする。

 最初は希望の一日だ。


「……」

 

 それに対して、イキシアは何も答えず、沈黙で返す。

 まぁ、ここは予想通りだ。

 かなりの距離を飛ばされたのだろう。


「三日」


「……」


 まだここまではね?


「五日」


「……」


 な、なるほどね。


「一週間」


「……」


「……二週間」


「……」


「さ、三週間?」


「きゅーい」


 震える僕の言葉に対して、イキシアは力なく声を上げる。


「そっかー、三週間かぁ」


 イキシアの反応を見た僕は深々と言葉を漏らす。

 持ってきた食料的には節約を心掛ければぎりぎり持つ量だろう……だけど、そうだなぁ。そんなに神社をあけることになるのかぁ。

 じいちゃん、帰っていて僕の代わりに神社の方を守っていてくれたりしかいかな?

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