大人
鬼が出るか蛇が出るか。
警戒心を持ちながら自分が待っていたところ、そこにやってきたのは白衣をきた一人の男である。
「ヒヒっ、今日も実験実験……って、何やつ?」
「それはこちらのセリフ」
白衣を着た男との距離を一瞬で詰めた僕はそのままこの白衣の男を地面へと組み伏せる。
「な、何をすりゅ!?き、さまらぁ!私が、この、私がいったい何者と知ってのろうぜきぃ、なのか!」
「い、いきなりそれはやりすぎじゃない……?」
「魔物と同じ気配。人と魔物の気配が混ざり合っている」
「そ、そうなの?」
「うん、そう」
僕は神薙さんの疑問の声へと簡潔に答える。
目の前の白衣の男からは人と魔物の気配が混ざり合っているうえに、邪な気配までもを纏っている。
碌なやつじゃないことは確かである。
「……ここに来てどんどん蓮夜くんの人外らしさが出てきているのだけど」
「いや、この状況下でもなければ使わないし」
僕にわかるのはあくまでなんとなくのこと。
これで犯罪者を見つけて使えるなんて無理だし、活用できることも非常に少ない。
「さて、と……少し、話を聞かせてもらってもいいか?」
弱い力で抵抗してくる白衣の男へと僕は疑問の声を投げかける。
「な、何を……」
「僕は西暦2024年。令和でいうと六年だ。何かわかることは?」
「き、貴様……な、何を言う、何を言うか……ここにきてほらを吹くというのか。れい───」
僕の言葉に答える途中。
唐突に白衣の男の内部から膨大な魔力の渦が溢れ出てくる。
「……っ!?」
それを見て僕が後方へと非難したその瞬間。
白衣の男の体が内部より炸裂。
ただの肉片となってこの場に散らばり始める。
そして───。
「なにあれっ!?」
白衣の男がいなくなったあと。
そこには謎の黒い点が浮かび上がっており、それがまるでブラックホールかのように周りのものを吸い込んでいた。
「いやいや!?マジでわからんっ!」
「きゃぁっ!?」
「きゅーいっ!?」
マジで、突然にもほどがあると思うな、僕は。
早く神社の方に帰らないといけないのに……っ!!!なんでこんな厄介なことに!
「きゃぁぁああ!?」
「いった!」
「うぅ……
「す、吸われるぅ……っ!」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ」」
牢屋に閉じ込められている子供たちが次々と鉄格子にたたきつけられて悲鳴を上げている中。
「あ……ダメそう」
「死ぬときは一緒……」
「きゅーいっ」
自分たちを阻むものがなかった僕たち三人はそのまま黒い点の中へと吸い込まれていくのだった。
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