いきしあ
高層ビルほどもある巨大な生物の死骸。
「……どう、しようか」
それを前に僕は途方に暮れながら独り言を漏らす。
「……何の情報もなくなっちゃったね」
「……そうだね」
あたりを見渡せば一面砂漠。
その中で唯一の情報源がこの、目の前にある建物だと思っていたものだったのだ。
これが何の情報ももたらさない巨大生物の死骸だったというのは最悪というほかない。
そして、それに加えて心強い味方になってくれそうな魔物たちとの応答も取れない状況にある。
これはいわゆる詰みとでもいうべき状況なのではないだろうか?
「どうしようか?」
僕は神薙さんと共に首をかしげる。
「そう、だよねぇ。本当に何もないような状況だもんね。このままじゃ何もなくて餓死しちゃいそう……さすがに餓死はつらそうだよね」
「その前に脱水症で死にそう」
一応、僕には切り札と言えそうな手札もあると言えばあるけど……これを使ってもそこまで状況を好転させてはくれないだろう。
「……水もないのか」
「うん、ないね」
神薙さんの言葉に頷いた僕は目の前の巨大な生物の方に視線を向ける。
「……ワンちゃん食えないかな?これ」
そして、そのまま疑問の声を上げる。
「えぇっ!?本気で言っているの?!」
だが、その言葉に神薙さんが驚愕する。
「見てわかるほどに、明らかにこれはやばいやつじゃん。ここまでしっかりと腐っているんだよ?匂いもやばいし……明らかに食べられる箇所はないでしょ!」
「いや、でもここまで大きければ逆に腐ってなくて食べられる箇所とかないかな?ここまで大きいのであればそんなこともあるかもしれないじゃん」
「いや、確かにそうかも……いや、冷静に考えてないよ。さすがに」
「そっか、ないか」
僕は神薙さんの言葉へと素直に頷く。
さすがに無理か、そりゃそうだよな。
もう肉が溶けているのだから。
「……それじゃあ、本当にどうしようか?」
「お互いのおしっこ飲む?」
「……はい?」
「一応水分じゃん?何回も繰り返したら凝縮されそうだけど三回くらいなら飲めるのじゃない?」
「……それは最後の手段だね」
さすがにおしっこは勘弁願いたい。
「きゅーいっ!」
「……っ!?」
僕が神薙さんの言葉に若干呆れも持っていた時、急に自分の後ろの地面から盛り上がって一つの存在がこの場に飛びだしてくる。
「イキシアっ!?」
慌てて後ろを振り返ってみれば、そこにいたのはイキシアだった。
なんでイキシアが地面の中から……?そんなことを僕が思っていた次の瞬間にイキシアへと勢いよく抱き着かれ、そのまま地面へと組み伏せられてしまう。
「きゅーいっ!?」
「いやぁ?!」
そして、そのままイキシアは僕の頬をぺろぺろと舐め始める。
「……仲いいんだね」
「待ってーっ!?助けてー!こいつが誰かわからなぁーいっ!」
そんな様子を見ていた神薙さんに対して、僕は慌てながらSOSを出すのだった。
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