第七章 ???

「どこだ、ここは」


 空間の亀裂。

 それに呑み込まれてやってきた世界を前に僕は困惑の声を漏らす。

 自分の前に広がっている世界は実に奇妙なものであった。

 空は赤く光り輝いており、光源となる太陽や月、星々がないのにも関わらずこの場はかなり明るかった。

 

「……砂漠か?」


 そして、地面には広大な砂浜が広がっている。

 本当にどこまでも続く広大な砂浜である。

 遠くの方に大きな、建物?のようなものが見える以外には何もない。


「本当にどこなの?」


 僕の、知って知ったる世界ではない。

 ここには自分がよく知る神々の影響力がない……異世界か、何か?


「蓮夜くんっ!」

 

 神の手によって連れてこられた世界。

 ここが何なのかわからずに頭の中で思考を回していた中、僕の後ろから自分の名前を呼ぶ声が自分の耳に飛び込んでくる。


「……神薙さんっ!?」


 それを受けて僕は素早く後ろへと振り返る。


「な、何で一緒に来ちゃったの!?明らかにやばそうなところだったじゃん!」


 そして、そのまま告げるのは最後の最後で僕へと抱き着いて疑問の声を告げてきた彼女への疑問である。


「でも、蓮夜くんは受け入れていたから」


「……そ、その信頼はうれしくもあるけど僕はそこまで万能でもないから。何でもかんでもうまくいくわけじゃないよ?」


 僕は自分に向けられている神薙さんの激重感情にいつもの如くちょっと引きながら答える。


「それならそれでもいいよ?私は蓮夜くんと一緒なら死んでもいい」


「……そう」


 神薙さんの瞳と真っすぐな言葉。

 それを受けて、僕は彼女の在り方を受け入れる……おっかしいな?僕は神に近しい者として彼女に向き合ったことなんてないと思うのだけど。

 なんでちょっとやばいタイプの信者になってしまったのだろうか?

 ちょっと本気で反省である。


「来てしまったのならしょうがいないものね。それじゃあ、どうしようか。とりあえずここがどこなのかの情報はほしいよね」


「そうだよね。このままだと普通に餓死しちゃいそう」


「そうだね、草もない」


 僕の主食である草。

 お金がある今でもなんか抜け出さなくてたまに食べている草ですらここには生えていない。


「とりあえずはあそこ。あの建物みたいなところに行こうか」


「そうしよっか、えへへ。蓮夜くんと二人きりで遠出するのとか初めてかも?」


「よくこの状況を遠出って言い表せるね?神薙さんってもしかして僕よりも動じないの?」


 僕はずいぶんとのんきな神薙さんと共にとりあえず見えている謎の建物に向かっていくのだった。

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