堕ちる

 突如としてダンジョン内に出来上がった巨大な空間の亀裂。

 そして、その亀裂が限界を迎えたことによって出来上がったあまりにも巨大すぎる空間の穴。

 それに僕は呑み込まれていく。


「ちょ、ちょっ!?これは不味いっ!?」


「わわっ!?」


「……っ!」


「……っ!?れ、蓮夜くんっ!?」


 その穴を前に四人全員が驚愕し、各々でその場にしがみついて何もかもを吸い寄せようとしている空間に突如として空いた穴に抗っている。


「……ちっ」


 だけど、この力に僕は抗えない。

 何を、どうやっても拒むことができない。


『……ぁあ───あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ』


 幻視する。

 神の力を。


「どうして、貴方様が?」


 大きな、大きな手が空間より伸びて僕のことを優しく包み込む。

 日照神社の神主として、絶対に拒絶できない神の手を前に僕は何も抵抗することなくそのまま空間の穴へと吸い込まれていく。


「……っ!?ま、まずっ!!!」


「な、何をしているの!?ちょ……っ!!!」


「蓮夜くんっ!……え、えっと、とりあえずこの弓にでもっ!」


 声に。


 

『貴方は、こちらに』



 声だ。


「蓮夜くんっ!!!」


 何も、迷うことなく。


「……っ!?神薙さんっ!?」

 

 僕の方へと飛びついて抱き着いてきた神薙さんを前に僕は驚愕の声を上げる。


「な、何をっ!?」


 何が起こるか。

 それもよくわからないまま、それでもこの場に出現した神の力を前に抵抗することを許されない僕の方へと迷うことなく飛びついてきた神薙さんを前に動揺と困惑をあらわにしてしまう。


「ふふっ、これで蓮夜くんと」


 そんな僕の隣で。


「一緒に死ねる」


「多分死なないよっ!?いきなりなんてことを言うのっ!」


 ゾッとするようなことを、喜色の色と共に言葉として吐き出した神薙さんに僕はツッコミの声を入れながら、そのまま穴の中へと取り込まれていくのだった。


 ■■■■■

 

 堕ちて、堕ちて、堕ちていく───


『あぁ、我が子よ、愛しの我が男よ』


 その中で、見えてくる。

 大岩が、そこより伸びてくる一筋の光が。


『おぉ、おぉぉぉ、見えるぞ。見えたるぞ』


 大岩が動き、そこより一つの大きな存在があらわになる。

 山ほどの大きさの女性が僕の前に現れ、ちっぽけな僕という存在へとその大きく、されと美しい顔を近づけてくる。


『ひさしゅう、ひさしゅう』


 神だ、まさしく。

 僕は自分の中の存在感を高めていきながらゆっくりと口を開く。


「───」


『───』


 堕ちて、堕ちて、堕ちていく───

 その果てにあるものを僕はいまだ知らない。

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