順調
上級下層にどんどん潜っていっている僕たち一行。
「案外何とかなるものなんだね」
「そうだね。僕はここまで深くに来ることないから……レベル具合を知らなかったけど、結構楽に勝てるね。これなら魔物たちと共に軽くダンジョンを走り回れそう」
「蓮夜くんであれば人類未踏地域にも行けてしまいそう」
「どうかなぁ?そこまではキツイような気もするけど。それでも、もしかしたらいけるかもね」
そんな道中、僕は神薙さんと雑談を繰り広げている。
「……緊張感がない」
そんな僕たちの様子を見ていた生徒会長は思わずと言った形で言葉を漏らす。
「いや、話さなきゃ配信者失格じゃない?」
「話さない配信なんてないわよ?配信でやるというのならリスクを承知で視聴者を楽しませないと」
それに対して僕も、神薙さんも共に即答で答える。
喋らない配信者など配信者としては失格なのではないだろうか?
コメント
・プロ意識出たなぁ
・流石はずっと配信者をやっているレイナちゃんか
・まおーくんもそっち側なのか
・この発言からもわかるこの事務所の異質者
・別に圧倒的な力を見せてくれるだけでも十分だけどな。上級下層なんてまずお目にかかれないわけなのだし。
配信者である以上、視聴者たちを楽しませることが最優先だろう。
「むむぅ……そう、か。いや、そうであることはわかっているのだが、やはりそれでも危険はつきもので」
僕と神薙さんの言葉に生徒会長が頭をかしげる。
彼女はここにいる全員の命を預かる立場にあるパーティーのリーダーとしての自覚と責任を感じているのだろう。
「あっ、魔物」
そんな中で、ダンジョンのほうに現れたたった一体の魔物を前に僕は反射的に声を上げる。
「ふっ」
そして、僕が構えをとろうとするよりも前に。
琴葉が動き出し、その手にある弓で魔物の脳天を打ち抜いて確実にその命を断ってみせる。
「あっ、ナイス」
「うへぇぇ、ショタに褒められたぁ。これであと数年は生きていられるぅ」
そんな琴葉に対して、素直な感嘆の声を向ければ彼女は実にだらしない表情で笑い始める。
「……っ!?見ていてくれ。次は私の力を見せてあげるから。ぜひとも楽しみにしていてくれ」
そして、それに対抗するかのように垣根も声を上げてくる。
「はぁー、もう考えなくともいいだろう。こんなことで悩んでいる私が馬鹿らしくなってきた」
そんな二人の様子を見ている生徒会長は深々とため息を漏らす。
もう全部をあきらめてしまったようである。
「それで?そういえば聞いていなかったけど、このダンジョン探索の目的は何なの?」
そんな生徒会長へと、僕はふと思ったことを聞いてみる。
「……来る前に言ったはずなのだが」
「えっ?」
「まぁ、良い。私たちの目的は上級下層にある薬草の採取だ。見つけたら私が回収するからそこまで気にしなくていい」
「なるほど」
僕は生徒会長の言葉に頷くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます