女装配信

 始まってしまった事務所全体での配信。

 この日のために多くを準備し、みんなでいろいろなことをしてきた。

 だがしかしだ、僕は今日という日が来ることをとことん望んでいなかった。


「ということで始まったな。私たち全員で行くガチ配信が。プロレベルである五人の配信者によるダンジョン攻略が」


 生徒会長はカメラの前で堂々と言葉を話していく。


「「……」」


 そんな生徒会長のそばにはどこか不安げな様子の垣根と琴葉の二人が控えている。


コメント

・まぁーじでこの日を待っていた!

・とうとう始まるのか……

・あれ?主人公いなくね?

・おぉぉぉぉぉ!!!

・いないじゃん、まおー

・まおーくんはどこ?


 そして、コメント欄で言及されているのは僕についてである。


「まぁ、今この場にいないまおーの話には当然なるわな。あいつが今、どこにいるのか。もしかして休みなのか?そう心配している人は安心してくれ、ちゃんといる。心配をかけるようなことはなく、むしろ配信頻度の少なさゆえに心配を与えることになったことを謝罪するためにある」


 僕が配信していなかったから罰ゲーム。

 それはしっかりと生きていてどこまでもついてきていた。


「では、登場してもらおうか!遅れてやってくるヒーローというものをなっ!拍手喝采でもって迎え入れてくれ」


「……うぅ」


 これまで、自分が出した武器の力で姿を隠していた僕は満を持して己の姿をこの場へとさらす。


コメント

・えっ?誰や、こいつ

・まおー、くん?ちゃん?えっ?どういうこと?

・かわっ!?

・言っただろぉー!?蓮夜は女装いけるってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

・ま、ま、まさかここまでのレベルとは……


 そんな僕の格好はいつもの格好ではなく、しっかりとメイクまでした完ぺきな女装姿である。

 着ているのは無駄に装飾の多いドレスである。

 これで戦闘をするとかちょっと正気の沙汰とは思えないくらいである。


「ふふーん!」


「「……っ!?」」


 僕の女装姿を前にこの話を事前に聞いていなかった垣根と琴葉は異常なまでの動揺を示している。

 ちなみにこの服を選んでくれやがった神薙さんはどこか誇らしげである。


「……配信頻度クソ雑魚でごめんなさい」


 そんな中において、ドレスを身にまとう僕は深々と頭を下げてみせる。


「ショタぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああっ!?」


「ロリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」


 そんな、僕の言葉に対して。


「っ!?」


 垣根と琴葉が急に大きな声を上げるのだった。

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