頻度
生徒会長の事務所であるラブスタ。
ここの知名度は圧倒的な飛躍を見せていた。
話の盛り上がりと話題の高さでいえば世界でも屈指である僕の加入と、裏打ちされた実績と根強いファンを抱える神薙さんの移籍はかなり大きなニュースであった。
なおかつ、事務所のトップである生徒会長と僕に神薙さんが同じ高校であるということも話題に一役買った。
ということで、ラブスタは一気に世界でもトップの配信者事務所となっていた。
「もう私が貴方に言いたいことが何か、もうわかっているわよね?」
そんな事務所において。
「うぅ……」
僕は生徒会長の前で正座して座っていた。
「最近の貴方は更新頻度が低すぎる!」
そんな僕の前で生徒会長が告げるのは簡単な一言である。
「い、いやぁ……」
僕はそんな追求を前にそっと視線を外す。
「わかっているだろう?」
「……むむぅ」
自分と神薙さんが事務所に加入してから早いことでもう一ヶ月。
この一ヶ月の中で、僕の配信回数は脅威の三回。
神薙さんが合計で20回。
生徒会長が合計で14回。
垣根が26回、琴葉が31回毎日更新であるということを考えると僕の配信頻度は飛び抜けて低かった。
ショタコンの十分の一である。
「加入配信の頃に何を話したか、忘れたか?」
「え、えっとぉ……メンバー五人でダンジョン攻略を目指すって話だったよねぇ」
「あぁ、そうだ。現在。私が準備中のガチ攻略だ。その前にみんなで知名度を上げていこうという話をしただろう?」
「した、ね」
神薙さんは普段よりも配信頻度を高めている。
方や、僕は三回である。
「なんでこんなに少ないの?」
「……お金、あるから」
僕が配信する理由は簡単。
金である。事務所に入る前の、準備期間中の一ヶ月でもう十分僕の目的は達してしまったのである。
「その、モチベが」
お金あるし、まぁいいかの精神になってしまうのだ。
自分のダンジョンの方で楽しみ、神社を掃除し、それで一日が終わる。
土日は舞や武芸の練習に励んだり、祈祷したり……色々と。
「……神社の方も忙しくて」
「でも、蓮夜くん……いっぱいゲームしてなかった?」
「……むにゅ」
生徒会長と僕の会話。
それを傍で聞いていた神薙さんが話に割り込んでくる。
初めて、やるゲーム……楽しい。
「どういうこと?」
「すぅ……」
僕は息を吸い、そっと視線を外す。
「いや、その……悪いとは思っているのです。自分だけ、で少なくて……でも、その、そう!よね?でも、今のところ僕が一番チャンネル登録者数多いし、まぁ……良いかな?みたいな」
「それを言われたら何も言えぬ」
僕のカウンターパンチで生徒会長が沈む……すぅ、ちょっと切る札ミスったかもしれない。
「でも、結局あれじゃない?普段の配信は私たちのと同じくらいよりちょい下でしょう?」
神薙さんの強烈な一撃。
「んぐっ」
あっ、大丈夫だ。
僕の方が弱かった……別に意地の悪いやつによるマウントにはならなかった。
でも、僕のカウンターパンチが消滅し、言い訳が終わった。
「じゃあさ、ほら。罰ゲームしようよ」
「……罰ゲーム?」
完全に僕の口が閉じた中、意気揚々と神薙さんが口を開く。
そして、そのまま───。
「次の事務所みんなでやる配信において!蓮夜くんには女装してもらおうよ!」
「……はひっ!?」
彼女は悍ましい提案を口にするのだった。
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