王の魔物

 下層辺りから。

 他の魔物とは一線を画す強力な魔物が姿を表すことがある。

 いわゆる、王の魔物と呼ばれるそいつらは圧倒的な力を持っているために多くの冒険者から恐れられており、会った場合は早急に逃げるよう言い伝えられている。


「なるほど……これが王の魔物ってやつですかい」


 そんな王の魔物が今、僕とイキシアの前に鎮座していた。


コメント

・待って待って!?これは、これはやばくない!?

・やばぁ……えっ?やば

・流石に不味くない?

・おっとぉ?

・これは、これは……

・逃げてぇぇぇえええええええええ!


 多くの配信を見てきたであろう視聴者たちも面くらい、動揺をあらわにしている。


「……さっきの移動は一体どういうことニャ?なんで普通の道に進んでいたはずがただ広い空間へと転移させられたニャ?そんな兆候……なかったはずニャけど」


「良し!イキシア!」


 僕は自分の隣でぶつぶつと独り言をもらしていたイキシアの方へと声をかける。


「ニャニャ!?」


「今日の配信はあの王の魔物を倒すことで終わらせるよっ!流石に王の魔物を倒してみた!って配信は珍しいはず!切りぬこう!切り抜きが今の時代一番稼げるって言っていた!」


「ニャっ!わかっているニャ、端からそのつもりニャ。圧倒的な力でねじ伏せてやるニャ!」


「わかっているよっ!」


 僕はイキシアと共に迷いなく王の魔物の方へと突っ込んでいく。


コメント

・おぉー!王の魔物の討伐の一般公開とか初やろ!

・いやぁぁぁぁぁぁぁああああああ!

・待って、流石にそれは無謀だって!

・これはこれは……非常に見ものだね

・いやいや!?逃げてよっ!


 王の魔物。

 今、自分の前にいる王の魔物は馬鹿みたいにデカい空飛ぶクジラである。

 体長は本当に規格外の大きさであり、東京タワーくらいあるような気もする。マジでそれくらい規格外。

 普通に山だ。


「よっと。武器の雨だよーっ!」


 僕はそんなデカい王の魔物の上空を脚力で進む僕は武器庫より大量の武器を落としていく。


『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 普通の武器では蚊が指すようなもの。

 だが、僕の武器庫には自分じゃ扱えないような巨人用の武器も、何なら巨人でさえ使えないようなアホみたいにデカいものもある。

 そこら辺を落としてやれば山のような王の魔物であっても問題なく削れていく。


「ニャニャニャーっ!」


 そんな僕とは傍らで。

 イキシアが大規模な魔法を連発しながら大暴れしていた。

 一人で巨大な竜巻を起こし、雷雨を吹きあらし、山火事かと思うほどの大量の炎をぶちまけている。

 ちょっと規格外と言う他ないほどの威力であった。


『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 そんな中で、やられっぱなしではなかった王の魔物はその体をよじらせ始める。


「っとと」


 だが、それは空を飛んでいるイキシアには問題なし。

 王の魔物の背中を蹴って飛んでいる僕には少し影響はあれど、そこまで深刻な度合いでもない。


「このまま行けば楽勝ニャっ!」


 あっ、フラグ……。


『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 イキシアの発言に僕がそんなことを思った瞬間、急に王の魔物の背中の一部が変色していくのだった。

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