詳しい話

「……何、あくまでそう捉えてもらってもという話だ」

 

 特に何の反応も見せなかった僕に対して、何故か不満げにしている生徒会長が再度口を開く。


「そうだよね。それで?その本筋は何処にあるの?」


「……一応、プロポーズ発言もそこまでの冗談でもないのだが」


「それはありがたいことだけどね」


 何となくではあるけど今のところ人間に対して異性として特別視するような感情を抱いたことはないが、それでも僕は自分の後継者を作らなければならない。

 そういう意味では僕と結婚してくれると言ってくれる女の子の存在は非常にありがたい……自分の相手として生徒会長はあいそうにないけど。

 

 生徒会長はかなり良いところの生まれらしいし。

 自分のところに婿へと来れる人をお願いしたい、神社のことを考えると。

 多分、自分が子供を作らなくとも他の親戚筋の方から神主となってくれるであろう人が出てくれると思うが。

 僕の他にも神主になれる直系の人たちはいるのだ。

 今日、自分が死んでも神社は変わりなく回り続けるだろう。


「本題を聞いても?」


「うむ。それではまず、私の自己紹介からさせてもらおう。君は私のことをどこまで知っている?」


「金を持っている一族に生まれた自分たちの学校の生徒会長……ってところかな?」


「まぁ、そんなものであろう。では、まず自己紹介から。私は近衛碧衣。この学校の三年生で生徒会長をやっているのは知っての通り。それで、私の実家である近衛家の方であるが昔から政界にも経済界にも広い顔を持つ昔ながらの名家なのだ。元々、商売の世界ではかなり存在感を示していた私たちの一族はダンジョンの発生と共にその地位を絶対的なものにしてな」


「はい」


 政界にも……高畑近衛さんとも繋がりあるかな?

 苗字と名前が同じだし。


「私たちの一族はダンジョン対策へと誰よりも早く乗り出してな。その勢いでダンジョン関連トップ企業群に仲間入り。元々手広く広げていた事業との相乗効果も含めて圧倒的とも言える存在感を誇っているわけだ」


「おぉー」


 要は授業でやった財閥のような存在に近いというわけだろう。

 それは凄い……何でこんなに凄い人がうちみたいな学校に通っているのだろうか?


「私が通っているのは長年の伝統でな。我が家の人間は大体、何処かでこの県の高校か大学に通うことになっているのだ。私が高校に通っているのはその経緯だ」


「……はぁ」


 何で自分が内心で考えていたことがわかるの?なんてことを思いつつ生徒会長の言葉に頷く。

 それにしても随分と変な伝統だな。


「もうすでに君は自分の影響力は理解しているだろう?」


「……何となくは」


 既に自分の各種SNSのフォロワー数が1000万人を超えている。 

 明らかに自分がだいぶおかしな存在であることには気づきつつある。


「私たちの一族はそれを求めているわけだ……ところで、最近君は配信を初めてみたそうだね?」


「そうだね」

 

 僕は生徒会長の言葉に頷く。


「実は、だ。私が最近、運営を開始させた配信の為の事務所があってね。私を始めとして少数先鋭ながらも圧倒的な力を持った探索者が在籍し、ダンジョン配信に精を出している。どうだろうか?ぜひ、私の事務所に入ってくれないだろうか?」


 生徒会長は僕に向かってそう告げるのであった。

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