苦楽

 四苦八苦に四苦八苦を乗り越え。


「おぉー!出来たぁっ!」


「お疲れ様ニャ」


 ようやく僕は配信を始めることが出来た。


コメント

・おぉー!

・わこつ

・配信が無事に出来たようで何より

・良かった、良かったっ!

・わこつ…本来の意味で久しぶりに使ったわ

・ようやくだねっ!


 しっかりとコメント欄にはコメントが流れているし、僕とイキシアの顔も映っている。すべてが完璧だ。


「ごめんねぇ?僕ってばカメラとかスマホとかあまり触ったことがなくて全然うまく出来なかった」


「そうなのかニャ?人類はいつも、スマホとやらに憑りつかれているのニャろう?ずっとここのコメント欄見ていて思ったのニャが」


「いや、僕ってば単純にお金がなくて……何なら食費すらも怪しくて、毎日草を食べて生きているような生活で」


「ニャ?」


コメント

・んんっ?

・はっ?

・今までの質問が全部飛んだ

・どうっ、えっ?

・はぁ?


「いやぁ、実にお恥ずかしいかぎっ!?」


「どういうことニャっ!?」


 僕が自分の醜態を笑ってごまかそうとしたところで予想外にもイキシアが強い反応を示し、自分の体を勢いよく掴んでくる。


「い、いや……文字通りの意味だけど」


 僕はイキシアの言葉に答える。


「く、草……そ、そこらへんに生えている草を食べて生きているのか、ニャ?」


「うん、そうだよ」


 僕はイキシアの言葉に頷く。


「……ば、馬鹿ニャぁぁ」


 そんな僕の言葉を受け、イキシアは体を震わせ始める……一体どうしたのだろうか?


「に、人間どもっ!早く主様に食事を上げるニャっ!以前、私たち魔物はお前ら人間たちの為に戦ってやったニャっ!ちゃんと正当な金を寄越すニャぁっ!」


 そんなことを僕が考え始めた瞬間、突然イキシアが大きな声を上げる。


「ちょっ!?」

 

 い、いきなりなんでそんな乞食みたいなことっ!?

 人々を導くはずの神主が乞食なんて最悪じゃないかっ!辞めてほしい。


「主様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ」


「だぁー、なにぃ?」


「気づかなくてごめんニャーっ!主様がぁ、主様の為にある私たちが主様の苦難に気付いて上げられなかったニャなんてぇぇぇえええええええ!」


「いや、別に……三歳とか、そんな小さな頃からずっとでそこまで同情されるほど僕が悲しい思いをしているわけでもぉ」


「主様ァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


「駄目だこりゃ」


 泣き始めるイキシアに対いて僕は肩をすくめて返す。

 もうどうしようもない。


コメント

・駄目なのはまおーの方じゃね?

・草……三歳から。

・まさかそのショタボディは

・ね、ネグレクト?

・あわわわわ


 とか思っていたのだが、コメント欄の反応的には僕の方がおかしい扱いだった。


「……僕が、ズレているっ!?」

 

 衝撃。

 これ以上ないほどの衝撃を受けた僕は言葉を続ける。


「い、いやいや……別に、僕以外にも草を食べている人だっているでしょ。仕事がなくて路頭に迷った人とかが。何も食べれなくてがりがりになっている子供とかだっていっぱい……っ!


コメント

・いや、スラムかよ


「えっ、日本にないの?スラム」


 僕はコメント欄に流れた一つのコメントに反応する。


コメント

・っ!?

・流れが変わったな

・ないよ

・日本にはスラムなんてないよ?

・トー横は流石に

・あるわけ


「うっそぉー、授業でスラムをやって以来日本にもあるものだとばかり……あぁ、なるほど」


 僕は頷く。


「も、もしかしてだけど……僕が思っているような底辺の人って実は少、ない?スラムが当たり前のようにあって、子供が餓死するのが当たり前で、薬物を打ってそこら辺を彷徨い歩いている人がデフォでは……」


コメント

・ないな

・俺は親無し職歴無しニートだが無事に生活保護で太っている模様

・あるわけないだろっ!

・えぇ……

・マジかよ


「な、なるほどぉ」


 どうやら僕はすさまじい思い違いをしていたようですね……自分のような底辺に過ごす人間は当たり前のようにいて、自分以下の人もいるとぉ。

 僕はまだ自分の学力で高校に通えている分、勝ち組だと思っていた。

 うぅ、これもそれも僕がこの街から出て行ったことがないからだ。

 てっきりここは超絶富裕層が集まる場所だと……。


コメント

・な、なんでそんなにお金がないの?

・草を食べて生活って…

・一番の衝撃

・マジで色々と衝撃過ぎる

・お金なさすぎらろ」


「仕方ないじゃん。僕の神社ってば参拝客が全然来ないせいでお金が入ってこないんだよねぇ」

 

 僕はコメント欄に流れる言葉に対して不満げに言葉を漏らす。

 そう、これは仕方ないことなのだ。


「あぁーっ!もうこの話はお終いっ!話を本筋に戻して質問コーナーやるよぉーっ!思ったよりもコメント欄に飛び交っているコメント多いから、僕がモロレンの方に質問ボックスを置いたから、そこに質問を投げかけて欲しいな」


 僕は強引にこの場の流れを軌道修正させて質問を募集していくのだった。

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