初配信

 月収いちお……日本人に神様の尊さを伝えるため。

 配信活動を行うことに決めた僕は早速神薙さんから借りたカメラを弄って配信を始めようとしていた。


「あー、これってば配信出来ているの?カメラなんて高価なもの使ったことないからわからないよぉ」


 なのだが、僕はカメラの扱いに四苦八苦していた。

 神薙さんから借りたカメラってば色々と複雑でうまく出来ていなかった。


「……ボタンが多い。こんなにいっぱい何に使うというのだ。忌々しいぃ。もうちょっとわかりやすく」


 スマホの方とカメラの方をワイヤレスで接続。

 カメラで撮っている映像をスマホの方に流してくれる……らしいのだが、それが上手くいっているのかどうかがイマイチわからなかった。

 これは録画回っているのか?頼むから配信出来ているかどうかの確認のため、配信出来ているよとカメラの方に教えてほしい。

 僕は複雑に色々なボタンがついているカメラを操作していく。


「主様」


 そんな僕の方へとイキシアが声をかけてくる。


「んっ?何?」


 僕がそちらの方を見ると。


「これを見るニャ。小さな箱の中に閉じ込められた哀れな人類は見えていると口々に言っているニャ」


 そこにはスマホを手にしたイキシアの姿があった。


コメント

・見えているよー

・顔が近いwww

・きれいすぎない?この子……ナニコレ

・見えているでぇー

・めっちゃ映っているで

・顔立ちは綺麗だけどちょっと地味とか思っていたけど、近くで見たら信じられない綺麗さなんだけど、これが本当に人間なの?

・問題なく見えるよっ!

・肌きれっ!?ひげや毛穴はどこっ!?

・見えているよー

・見えているよー


 スマホに流れているコメ欄には見えているという言葉で埋め尽くされていた。


「出来ているかどうかの反応はこちらのコメントの方がわかりやすいニャ」


「……確かにそうだね」


 僕はイキシアの言葉に頷く……確かにその通りである。実は僕ってば神薙さんの言葉を否定出来ない抜けてて阿呆っぽいのかもしれない。

 ちょっと信じられないようなことではあるが。


「まぁ、いいや!それじゃあ、気を取りなおして配信していこうっ」


「そうするニャ―。それじゃあ、主様。私の足の中にどうぞニャ」


「失礼するよぉー、よっこいしょ」


 僕はスマホを片手にイキシアの足の間に挟まる。


「うしっ、配信準備はこれで完了だね」


 カメラにはちゃんと僕とイキシアが映っている。

 これで配信は出来るだろう。

 ちなみにイキシアがいる理由は人集めである。

 魔物がいた方が物珍しさがあるかな?って思ってイキシアを召喚したわけである。 

 地味にダンジョン外に呼びつけるのは初めてである。


「ちょっと待つニャ」


 満足げに頷いて配信を始めようとする僕を若干厳しめな声を上げるイキシアが止めてくる。


「んっ?」


「今日の配信はそのスマホに来た質問に答えていくのニャ?」


「うん、そうだね」


 僕はイキシアの言葉に頷く。

 今日の初回配信は雑談配信である。

 僕のモロレンの方に寄せられたコメントを見ていくと、どうやら自分に対して聞きたいことを持っている人が多いみたいだったので、そのリクエストに答えていくことにしたのである。


「それならあのカメラである必要があるのニャ?別にこのスマホでも配信出来るのニャろう?私たちがスマホを見て配信している間、あのカメラは主様の顔じゃなくて後頭部を映し続けることになるニャー」


「……確かに」


 僕はイキシアの言葉に頷く。

 彼女の言う通りではないか。


「流石に後頭部を見せる配信は駄目だよね?」


「何をどう考えても駄目ニャー。絶対に顔を見せた方が良いニャ」


「……コメントの方は、ちらりっ」


 イキシアからは非難業業であった。

 だがしかし、コメント欄の方ならどうだろうか……別に僕の顔に興味がある奴なんてぇ。


コメント

・顔をみせろまおー

・蓮夜くんの顔みたいなー

・後頭部を映し続ける配信はあまりにも画期的すぎるだろうよ

・問題しかなくて草

・駄目に決まっているやろ

・かお見せてぇー


 おっと。

 コメント欄の方でも非難だった。

 

「……悲しい。それじゃあ、ちょっとカメラの方を止めてこのスマホを使って配信するね?だから、一旦止める。初めての配信で色々と苦戦しているけど、許してね」


 配信を切り替えるため、僕は今一度立ち上がるのであった。

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