決意
月収一億……ゼロが幾つだ?
「よしっ!神薙さんっ!配信を始めようかっ!」
「……っ!やってくれるの!?」
「もちろん、前からやってみたいと思っていたのだよね」
ずっと前から、もう生まれ落ちた時から配信者になりたいと思っていたのだ。
もう配信者になりたくて、なりたくてしょうがない。
……け、決して金の為というわけではない。金が理由で動いているわけじゃないよ?神に仕えたる僕が一億なんていう欲に負けたわけじゃない。
広報活動を通して僕は自分の神社について広め、神々の御力を市井の皆にも届けてあげようという話である。
僕に悪意があるわけでは決してない。
「まずはSNSでの広報からかな?ちょっとさ、この機会にスマホの使い方教えてくれない?」
「もちろんいいわよ……ちょっと隣失礼するわね」
神薙さんがその席を自分の隣へと移してくる。
「さっ、スマホ借りるわね」
「どーぞ」
僕は神薙さんの言葉に頷き、彼女の方に自分のスマホを渡す。
「それじゃあねぇ……簡単にどこで何ができるのかを教えた後にSNSについて教えていくね」
「お願いします」
自分の隣に座っている神薙さんの説明に僕は耳を傾けていく。
「……ふぅむ。何となくわかったかな」
それからしばし。
神薙さんから色々と教えてもらった結果、僕はエルを利用しない形である程度スマホを使いこなすことが出来ていた。
色々タップ出来るところがあり、どれがどれかイマイチ理解出来ていなかったが、神薙さんのおかげでなんとなく理解することが出来た。
「あっ?本当?わかってくれた?イマイチ、インターネットについてわかっていなさそうだからこれでわかってくれて良かった。あまり教える自信はなかった」
「別に僕はスマホが使えないだけでインターネットに精通していないわけじゃないもん。学校の授業で受ける情報科目は常に満点だよ?ただ、授業で扱うのはパソコンばかりでスマホの使い方講座ないからだし」
「……確か、蓮夜くんってちょっと抜けてて阿呆っぽいけど、校内のテストは常に単独トップで模試も全国一桁だったよね」
「それはどういう意味?抜けてて阿呆って」
「いや、これはいい意味でだから」
いい意味で抜けて阿呆って何……?
でも、ここでその深くを神薙さんに聞いたら面倒なことになりそうだから黙っておこう。多分、これこそが賢明な判断だと思う。
「アプリを入れるときはこれだったよね?これで、何だっけ。まずは配信アプリと文字や写真などを投稿出来るSNSアプリを入れればいいんだよね?」
「そう。DTubeとモロレンね」
「ふんふんふーん」
僕は慣れた手さばきでスマホを操作し、神薙さんの言うDTubeとモロレンをスマホの中に入れていく。
「アカウントの作成だよね。まずは」
「そうだね。自分で頑張ってみて!」
「……謎の子供扱いムカつくぅ。アカウントの作成なら授業の最初でやらされるからなんとなくはわかるってば」
僕は手早く二つのアプリのアカウント登録を終わらせていく。
自己紹介はどうしようかなぁ?簡潔にわかりやすく……政府からも一目置かれている魔物を使役せし日照神社の神主。
よし、これで行こう。
インパクトはあるはずだ。
「ヘッダーは神社かなぁ」
僕は前に撮っていた写真を引っ張りだしてヘッダーに登録する。
それでアイコンは……。
「神薙さんっ」
僕は自分の顔を神薙さんの方に近づけながら彼女の名を呼ぶ。
「んっ?何?」
「はい、チーズ」
「えっ?」
僕は自分と神薙さんのツーショット写真を一枚取る。
「これをアイコンにしよう」
別に神薙さんの有名人パワーを利用しようとしているわけではない。
ただ、仲の良い友達との写真をアイコンにしようとしているだけである。
僕は二つのアプリのアイコンを揃えて完成。
「これで完璧」
「……わ、私とのツーショットで良いのぉ?」
「うん」
「そ、それなら待ってよ!?後一時間くらいメイクして、服もドレスにして、最高のカメラマンを雇ってじゃないとぉ」
「たかがアイコンの為にどれだけお金をかけようとしているの?」
貧乏人でもわかるぞ。多分そこら辺のは高い。
「よぉーし。それじゃあ初投稿。挨拶から行こうか」
「……うぅ。とりあえず私の方で拡散しておくね」
「うん、おねがい」
どれだけの人が見てくれるだろうか。
ワクワクとした気持ちで待っていた僕はスマホの様子を前に首をかしげる。
「……んにゅ?」
一体、これはどういうことだろうか?まったくもって、通知が途切れてくれない。
永遠と通知が鳴り響き続けている。
「……えっ?いきなりフォロワーが一万人を超えたのだが。どうなっているの?」
アカウント開設から一時間。
僅かそれだけの時間でフォロワーが一万人を超えた自分のアカウントを前に僕は困惑の声を上げるのだった。
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