切り札

 相手が何を目的としているのか。

 それを考える上で、これらの一連の流れをカメラで撮影し、長く表舞台には立っていない少々特殊な神社を管理し続けてきた我が家の情報を表に晒すことなのかもしれない。

 そう思った僕ではあるが、そんな考えなど今更だと割り切って思考を隅へと追いやってしまう。

 未だにスマホもまともに使えない僕がこんなことを考えていても仕方ないだろう。


「……カメラだと?この場にカメラなど」


「お前の言葉は信用するに値しない」

 

 僕の独り言へとしっかり反応してきた劉淵の言葉を一蹴する。


「ぐぬっ」


 それを受けて、劉淵はようやく本格的にその表情を忌々しそうに歪ませる。


「ど、どういうことなの……?」


 そんな劉備に対して、彼と同じくらい表情を移ろわせていたのが神薙さんである。

 いきなりダンジョンパンデミックを引き起こしただの、迷宮進歩教だの、幹部レベルだの。

 自分がよくわからない単語が飛び交う会話を聞かされていた神薙さんは


「神薙さんが知る必要はあまりないかな?」


 そんな彼女へと僕は素っ気なく言葉を返す。

 実は僕もあまり深くは知らないし。

 以前、迷宮進歩教が僕の神社に来たという情報と学校でもやるような内容をまとめてそれっぽく話しているだけだもん。

 詳しく語れと言われても困ってしまう。

 ダンジョンパンデミックを引き起こしたのかどうか、なんてただの状況証拠で何の証拠もなかったからね。

 劉淵の反応を見るからに正しそうだけど。


「な、なんでっ!?」


 そんな思惑をもって軽く告げた僕の言葉に対して、神薙さんは予想以上の強い食いつきを見せる。


「えっ……いや、その」


 僕はそんな神薙さんに若干戸惑いながらも口を開く……そ、そんなに気になる話かな?迷宮進歩教。


「後で話すよ……今は、敵の前だ」


「あっ、そ、そうだね!」


 神薙さんは僕の言葉へと素直に頷いて、そのまましっかりと劉淵の方へと視線を送る。


「ふぅー」


 そんなこんなで、僕からも神薙さんからも視線を受けることになった劉淵は深々と息を漏らす。


「こんなことでいらついていても仕方ない、だろうに……さて、それでは蓮夜様。私は私で自分の職務を全うさせていただきます」


「うん、早くしてね?」


「……最初に、申し上げておきましょう。私の職務は蓮夜様の殺害となります」


「それで?」


 殺害……殺害?迷宮進歩教が?ふぅーむ、どれだけあの組織が自分たちの神社のことを知っているのかわからないから予測しにくいけど。

 とりあえずこれは嘘の情報かなぁ?


「当然、私だけでは勝てないことは百も承知しております」


 あっ、これは完全なるブラフだな。

 劉淵からは俺一人でも勝てるのにという不満と合わせて、己の強さへの確固たる自信と自負を感じられる。


「故に、こちらとしても切り札を用意させていただきます」


「……?」


 僕が彼の言葉の審議を勝手に判別していた中で。

 劉淵は懐から一つの水晶玉を取り出し、それをそのまま地面へとたたきつける。

 それに合わせて魔力が膨れ上がり、一つの魔物がこの場へと姿を露わす。


『驕??陋サ?・闕ウ荵滄?邵コ?ョ驍?ケ昴?堤クコ繧?ス』


 この場へと姿を現したのはまさに得体のしれない化け物であった。

 

「おー、これはこれは」


 イキシアたちのような可愛い女の子たちでは決してない。

 なんか、こう……うねうねしていて足やら手やらがどれだけあるのかすらもいまいち判然としない。

 何か、背中みたいな部位から大量の腕が生えていない?マジでSAN値が削れそうなエグい見た目をしている。


「わぁ、強そう」


 思ったよりもちゃんと強そうだ……これは、本気で殺しに来ている可能性もあるのかな?


「……まぁ、でも。考えるのは後かな。様々なことが終われば自ずと何が起きていたのかもなんとなくわかるようになるだろう」


 僕は自分の思考を一旦棚の上に置き、目の前にいる魔物へと向き合うのだった。




 あとがき

 愛され作家NO.1決定戦特別企画

 期間中毎日特別ショートストーリ公開、七日目!

 本日は『日照神社について』です!

 特報ですっ!今回、自分リヒトが奇跡的に超常的な力によって人の目に触れても印象に残らぬようになっていた一つのデータを入手致しました!データの内容は赤城蓮夜が現在、神主を勤めております日照神社の歴史となっております!日本の歴史をひっくり返すほどの大発見がなぜ、ここまで埋もれていたのかは謎ですが。これでようやく日本の歴史に革命が起きるでしょう!

 興味があればぜひ、ギフトを頂けると嬉しいです


 本文においても、自分がエタって更新しなくならない限りは描くつもりである蓮夜くんの神社である日照神社について、小説形式というよりは広告形式で書いたものになります。

 内容の価値としては、本文中でも書くつもりなので、先読み出来る点と万が一の場合に見れないかもしれないものを見れる点です。

 それと、本文よりも一応は詳しく知れる形となっている予定です。

 興味がありましたら、見て頂けると。

 ちなみに、自分の伯父の形見である御朱印帳の中に挟まっていた神社の案内書の内容を参考にしたとかは秘密ね?

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