ダンジョンパンデミック

 一万円をどう使う、そんなことばかりを考えて数日が経過し、結局一円足りとも使わかなかった今日頃ごろ。

 ダンジョンパンデミック対処のために駆り出される当日となっていた。


「やりますかぁー」


 日本にあるダンジョンの数は全部で二十八。

 そのうちの二十五個が僕の担当エリアである。日本のダンジョンのほとんどが僕の対処事案である。


「きゅーいっ!」


 そんな中で、僕とイキシアは自分の管轄の二十五個のうち、最も規模の大きいと言われているダンジョンへとやってきていた。

 ここの特徴として、魔物は強いが異常なまでに通路の世界場所があるというところである。

 ダンジョンの下層から地上へと上がるのには絶対に通らなくてはならない狭い道。

 そこに陣取る僕とイキシア……完璧な布陣である。


「さてはて、暇やな」


 先人たちの努力、技術開発のおかげでダンジョン深くにまで問題なく飛んでくる電波、それを用いて僕はスマホを操作して行く。

 見ているのはエルに表示させたニュースである。


「……んなっ?」


 そんな風にニュースを眺めていると、自分のスマホが元気酔うk軽快な通知音を鳴り響かせる。


「……神薙さん、ダンジョンでの配信を始めたんだ」


 通知の内容は神薙さんの配信が始まったというもの。

 僕は神薙さんの『通知が来るようにしたから、私の配信は絶対に見てね!』という言葉を思い出しながら、通知画面に触れて配信を表示させる。

 スマホに映っているのは元気な様子の神薙さんである。


「タイミングが、随分と良いな」


 僕はなんとなく胸騒ぎを覚えながらスマホの画面に表示されている神薙さんをぼーっと眺める。


「きゅーいっ!」


 そんな時だった。

 魔物が来たことを知らせるイキシアの鳴き声が響いたのは。


「来たか」


 イキシアの隣に立っていた僕はスマホから視線を前へと向けると共に、自分の元へと一瞬で距離を詰めてきた数体の魔物を斬り刻む。

 僕の手には武器庫から取り出した刀が握られている。


「きゅーいっ!?」


「問題ないよ。イキシアは魔法の準備を」


 自分たちへと迫ってくる魔物の数は多種多様。

 その中に加速力を自慢とする魔物がいてもおかしくない……他の魔物の集団から飛び抱し、切り込み隊長として迫ってくる魔物を次々と斬り伏せていく。


「きゅーいっ!」


「ぶちかませ」


 それからわずかばかり。

 魔法の詠唱を終えたイキシアが魔法を発動。

 膨大な炎の渦がダンジョンの狭い道を包み込み、すべての魔物を一切の遠慮なく焼き焦がしていく。


「……後はこれを超えてくるものがいるかだな」


 イキシアの魔法は永続的だ。

 彼女が発動を辞めない限り、この魔法による炎が消えることはない。

 

「きゅーいっ!」


「おー、よしよし。可愛いなぁ。イキシアは。この調子で頼むよ」


 僕は神薙さんの配信を表示させたまま、イキシアの体を撫でつつ炎によって焼き焦がれている魔物を眺めるのだった。

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