大金

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 高畑近衛さんとの交渉を終え、無事に一万を手にした僕は一万円を掲げながら歓声を上げる。

 これだけの大金を一度に得たのなど初めてである。

 ちなみにもう高畑近衛さんたちは帰っている……結局のところ、あの人の護衛には聞かせられない話って何だったのだろうか?

 ダンジョンパンデミックのことはあの二人もきっと知っているだろうし。

 謎だ。

 まぁ、そんなことよりも大事なのは僕のお金だ。

 

「これだけあれば何でもできちゃうじゃん!これはもしかすると……水道代をまた払えるようになるかもしれないっ!」


 僕の神社には電気とガスは通っていない。

 ただ、下水道だけはしっかりと通っている。ちょっと前に払えなくて止められたけど、これだけの大金があればまたあの水道代を!


「いや、ダメだな。そんな贅沢が許されるわけがない。水道代なんてうちの家は一度たりとも払ったことなどないのだから!」


 これまで水道が出ていたのはここに暮らしている僕がお金を払っていたから、などではなく爺ちゃんの縁のおかげなのだ。

 爺ちゃんの友人の一人である金持ちの男性が大量に前払いをしてくれていただけ。

 我が家の神社の収益では決して水道代なんて……夢のまた夢である。


「これは、僕の食費にでも当てよう。美味しいものを食べるとしよう……ふへへ、ここ最近の僕の懐事情は素晴らしいですなぁ」


 もう僕はニヤニヤを止められない。

 この前も3000円くらいの収益を得た。

 神薙さんとダンジョンに行った日のことだ。

 あの時は彼女の精神面のことも考慮して、金稼ぎよりも娯楽に重きを置いていたがために換金出来た素材も本当に少しだけだったのに、5000円を超える大金になって驚いたものだ。

 本来の探索者は金を稼げるんだろうなぁ……僕とは違って。


「……ん?よくよく考えてみれば一万円ってそんな高くなくね?国単位で考えると。あれ?現社の授業で……」


 あれだけで5000円も稼げるのであれば、政府はもっと稼いでるはず。

 せ、政府の財政って確か何十兆円とかいう規模だったような……い、一万くらい屁でもないのでは?


「まぁ、いいや。僕にとってはしばらく金に困らないであろう圧倒的な大金だし」


 一万もあれば僕は十分生活できる。

 少なくとも現在の僕の最大出費であるおにぎりはたくさん買うことができる……いやぁー、もう両親が残した遺産も消えそうだったし助かった。

 これで和人と秋斗の二人への乞食もしばらくはしなくとも済みそう。


「……いやぁ、この貧乏生活を振り返ると大変だった」


 小学生の頃に両親が死んでから辛いことしかなかった。

 自分の手元に残ったのは両親が残した一万円だけ。

 そこから一年の収益が何千円という次元で生活をしていた。

 当然、給食費など払えないので食べれなくなりそうだったところを担任の先生が自腹で払ってくれたり、修学旅行もクラスメートからの乞食でしのぎ、高校は優等生の特権で全額無償で通う日々。

 諸事情によって神社から離れて施設で暮らすことも出来なかった僕がここまで生きてこれたのはここまで多くの人の助けがあったからだ。

 

 それでも、今後からは僕の極貧生活もさようなら。

 政府に仕事乞食していっぱい一万円札を貰おう。

 ダンジョンパンデミックをしっかり収めれば今後とも信頼して僕に仕事を恵んでくれるだろう。


「ふふっ、初めてスーパーになんかいってみようかなぁ?」


 僕は大切な一万円札を眺めながら、どう使うかを考えていくのだった。

 あぁ、幸せだ。これがお金のある喜びってやつか。




 あとがき

 愛され作家NO.1決定戦特別企画

 期間中毎日特別ショートストーリ公開についてはすみません……ちょっと今日はお休みさせてもらいます。

 ちょっと久しぶりにあった高校投稿で時間が死んでしまいました。

 毎日二回、五作品更新なんて駄目だね。死んでしまう。

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