第三章 炎上と
熱愛報道
神薙さんの熱愛報道。
その内容としてはダンジョンライバーとしても活躍している男性探索者の劉淵さんとの報道であり、スクープ写真として劉淵さんと神薙さんが共にマンションの中へと入っていく様子を撮られたものも掲載されていた。
「あの報道はどういうことなのっ!?」
「ねぇねぇ、あの報道って?」
「玲香ってば、彼氏いたのか!?」
そんなものが掲載された次の日には、学校中での大騒ぎとなっていた。
学校全体のアイドルである神薙さんの熱愛報道とか学生たちにとって最大のゴシップだろう。
ちなみに一番荒れそうな山田は長らく学校に来ていない。
「そんなことないよー。私ってばこの人に一回会っただけで恋仲でも何でもないし、そもそもこれは家じゃなくて相手方の事務所。全然熱愛でもなんでもないよー」
神薙さんは笑顔で自分の周りに集まっている生徒たちに説明していく。
その説明に一切の淀みはない。
「どう思う?あれは」
「いやぁー、流石に神薙さんに彼氏はいないでしょう。まだきっとちゅーだってまだのはず」
「昨日、僕がスマホで連絡した時も同じ答えを返してきたね。ワンチャン作っている可能性もあると思う!」
そんな中で、僕たち陰キャ三人衆もクラスの端っこで神薙さんについて色々と話し合っていた。
「待てや、こら」
「いつの間に繋がっているねん!?」
「えっ?僕ってばかなり前に話したことくない?」
「……あぁ」
「お前が現代機器を持っている驚愕で押し流されたわ」
「君たち二人の間で僕はどれだけお金ないの?」
「中学生の頃、金なさ過ぎて修学旅行代をクラスメートから貰っていたり、成績最上位であれば無料で通えるからという理由で県トップの高校に行けるのを蹴って、こんな辺鄙な高校に来たり」
「金なくて毎日のように草を食べているせいで実体験で食べれる草と食べれない草を見分けられるようになっていたり」
「「それくらいの貧乏だが?」」
「……おっしゃる程度で」
山田を含め、秋斗と和人は中学生の頃からの付き合いである。
僕の貧乏ぶりも彼らは存分に知っている……確かに、両親が死んでからの僕を見ればスマホを手に出来るなどととてもじゃないが思えないだろう。
「でもよぉ、俺たち陰キャ三人衆の中で一番神薙さんを知っているのはやっぱりお前になるか」
「あの熱愛報道、真実だと思う?」
「そんなこと知るわけないじゃん。でも、可愛い陽キャな女の子だしいてもおかしくないんじゃない?」
神薙さんと色恋沙汰の話なんてしたことがない。
「あっ……でも」
「でも?」
「いや、良いや……」
彼氏持ちの人が別の男の服を剥いで巫女服を着せようとするかな?なんて思ったけど、これを言えば別方面に傷が広がると判断した僕は口を閉ざす。
それに、そういえば神薙さんは恋とかよくわからないとか言っていたな。陽キャなら恋だの愛だの難しいことは抜きにして恋仲になっていそうではあるが。
陽キャって、実際にどれだけ恋仲発展するのだろうか……?陰キャたる僕にはイマイチわかりかねる。
「何だよ!?気になるじゃないか!」
「ここまで来たら言えよ!何だ、ちゅーでもしたのか!?」
「するわけないじゃん、何を言っているの?」
僕が神薙さんとちゅーなんて、あの人に彼氏どころか既に子供がいることよりもあり得ない。
「まぁ、でも総合的に考えたらやっぱりいないかも」
もしかしたらあの熱愛報道は本当かもしれない……!そう思った僕ではあるけど、色々と考えた結果。
やっぱりいないだろう。
神薙さんが彼氏のいる身でありながら別の男の服を剥ぐような節操のない女の子だとは思えない。
「お前の発言にはかなりの信ぴょう性があるな」
「なぁるほど……今のところはいない可能性が濃厚か」
「別に僕の情報に信ぴょう性なんてないでしょ」
「何言っているんだ。地味にお前の情報を信じて、結構な数のクラスメートが俺らの会話に聞き耳を立てているぞ?」
「流石にもう注目されることにも慣れたけどね」
「というか、注目される中心であるお前が何で気づいてないの?」
「……えっ?」
和人と秋斗。
その二人の言葉を聞いてようやく自分が注目されていることに気付いた僕は顔を赤らめながらそっと顔を両手で覆うのだった。
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