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 当然始まった襲撃イベント。

 そのボスである丙Ⅰ型襲撃魔物ゲルトナーを無事に討伐した後、ただの乗り物でしかなかったこの亀が非常に使える素材の宝庫であるということが判明。

 今、自分の魔物たちが総出で亀を解体している最中であった。

 当然のように亀の解体以外の作業はすべて止まってしまっている。完全なストップである。


「お、おぉ」


 何の作業も出来なくて暇な間、僕はイキシアと共に難攻不落の現代機器、スマホに挑んでいるところだった。


「きゅーいっ!」


「すげぇ!この液晶にタップするだけで操作できるのか!そんなこと学校の情報の授業に習わなかったぞ!てっきり、PCと同じでボタンしか使えないものかと!」


 僕は自分の隣でスマホを持ち、スイスイと液晶に触れながらスマホを操作しているイキシアに感嘆の声をあげる。


「きゅーいっ!」


「僕にも貸して!」

 

 僕はドヤ顔しているイキシアからスマホを受け取って液晶での操作を開始。

 するすると動くスマホに驚きの声を示す。


「じゃあ、このボタンは何の為にあるの?」


 そんなスマホに驚きつつ、僕はスマホの下の中心にある丸いボタンが何の為にあるのか、疑問に思いながらそれを押してみる。


『はい、何でしょう?』


 すると、急に画面が切り替わって謎の声が響きだす。


「うぉっ!?スマホがいきなり何喋り出した!?こ、この声は誰のもの?」


 この声の主……僕の知り合いにこんな声の人はいない。別に誰かに通話をかけてしまったわけではないよね?


『私はエル、あなたのバーチャルアシストです』


 そんな疑問に答える形でこの謎の声はダンジョンで響くあの声とは違い、しっかりと己が何者であるかを答えてくれる。


「ば、バーチャル、アシスト?」


 仮想的な補助。

 つまりは、このスマホの中にある仮想化された情報を操作するのを補助してくれるということか。

 何それ、便利やん!


「えっ?何ができるの?」


『様々なことをお手伝い出来ます。リマインダーを設定したり、天気を調べたり、目ぼしいニュースを検索出来たりします』


「おぉー!」


 僕はエルの答えた答えに歓声を上げる。

 つまり、スマホとは電源をつけて液晶タップでロックを解除。そのあとにこのエルを使って様々なことをしていくツールということか!

 スマホ、破ったりぃ!

 なんだ、こんなにもスマホとは簡単なものだったのか。


「それじゃあ、ニュースについて表示してくれる?」


 すっかり得意げになった僕はそのまま続けてエルに頼みごとを告げる。

 これで簡単にスマホは動いてくれるというわけだ。


『わかりました』


 僕の言葉にエルは頷き、しっかりと画面を切り替えてニュースを表示し、てぇ……くれ、る。


「……えっ?」


 自分のスマホに表示されるニュース。


「神薙さんの熱愛報道???」


 その中でも最も目立つ場所に表示されている神薙さんの熱愛報道を前に僕は頭をショートさせて固まるのだった。

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