激戦

 僕の巨人たちの中でも最も巨大で血気盛んな四人がゲルトナーに突っ込み、その圧倒的な巨体と力でゲルトナーを足止めしてくれている間。


「きゅーいっ!」


 イキシアを筆頭に、中遠距離からの攻撃手段を持つ僕を含めた全員で亀に対して総攻撃を加えていく。

 蒼い龍の炎を始め、雷や水球、風の刃に投石、弓矢など。

 ありとあらゆる攻撃をゲルトナーに向かって浴びせるのだ。


「近距離タイプも攻撃してっ!このまま力押しするよっ!」


 こっちの強みは圧倒的な数である。

 それに伴って、このまま圧倒的な手数で削り勝ちするのが一番だろう。


「ただ!誰も死なないでねっ!」


 一応、魔物の欄にロストした魔物を回復させるところがあったので、ここで倒されても大丈夫なはずだけど、それでもあまり倒されているところは見たくない。

 彼女たちには全員が生きていてほしい。


「ガァァァァ!!!」


「きゅーんっ!」


「おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」


「きぃーんっ!」


 そんなことを僕が考えている最中で、近距離タイプの魔物たちは実に血気盛んに、各々拳を握ってゲルトナーの方に向かっていく。

 つるはしを持った魔物たちがまるで鉱石を掘るかのように亀の甲羅を叩き、斧を持った魔物たちがまるで木を伐るかのように亀の足を叩く。

 燃える拳を持った魔物がゲルトナーの腹を叩き、顔にある単眼から短くも高威力のビームを放たれる子がゲルトナーの腹を焼いていく。

 総勢二百近い魔物がゲルトナーに怒涛の遠距離攻撃を加え、総勢百を超える魔物が亀に群がって攻撃を加える様は圧巻である。


「すげぇ……」


 自分がちまちま弓を打っていることさえ無意味に思えてきた僕は目の前で繰り広げられている大怪獣バトルに感嘆の声を上げる。


「……ってて、そんなことに歓声を上げている暇があったら武器作るか」


 武器製造。

 自分の武器庫にも非常に深く関わっているこの欄は魔物が武器を作るのではなく、僕がディスプレイ上で作ると言う謎仕様。

 僕はこいつを操作して魔物たち向けの武器を作っていく。

 今までは必要ないだろうと思って放置していたが、こんなイベントがあるなら作っておくべきだっただろう。


「ふんふんふーん」


 魔物たちに戦闘は任せ、僕はせっせと武器錬成を行っていく。

 巨人サイズのハルバード、アラクネー用の複雑な弩級弓。その種類は多岐にわたる。


「どんどんと取っていってぇー!」


 そんな武器の多くを作っていく僕は魔物たちに配っていく。

 今のところ、ゲルトナーは攻撃手段として体を揺らしたり首を動かしたりしかしていない。

 まともな攻撃らしい攻撃は何もなく、あまり脅威となっていない。

 このままいけば僕たちの勝利も


「きゅーいっ!」


 イキシアの魔法による威力も圧巻であり、武器を手にした魔物たちの活躍ぶりも圧倒的である。

 とうとうゲルトナーが持つ硬い亀の甲羅すらも一部、破壊し始めている。


「このままいけば」


 完全勝利まであと少し。

 そんなところで僕がフラグともとれるような発言をしたのが悪かったのだろうか。

 


「メェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」



 急にゲルトナーが大きな咆哮を一つ。

 空気全体を震わせるような圧倒的な咆哮が僕たち全員の鼓膜を打つ。


「ェェェェェェ……っ」


 ゲルトナーの口元に何かエネルギーのようなものが溜まっていく。

 その様はまるでブレスを吐く前段階であるかのよう見えた。


熾天之盾アイギスッ!!!」


 それを見た僕は慌てて熾天之盾アイギスを展開させるのだった。

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