警報
総勢385体の魔物たち。
それらを総動員して建築するのはイキシアの像である。
このダンジョンには我が魔物たちの頂点であるイキシアの像が必要だろう。思い付きで建築しているだけなので、特に深い意味はない。
「きゅ、きゅーいっ」
少しばかり恥ずかしそうに手で顔を覆っているイキシアを横目に、どんどんと建築が進んでいく。
「すぅーばらしいっ!」
そして、実にクオリティーの高い超巨大なイキシア像が出来上がった。
これは我がダンジョンの新しいシンボルとして永遠に刻まれるだろう。
「きゅ、きゅーいっ!」
満足げな僕に対して、表情を赤く染めているイキシアが抗議のためにポカポカ優しくその手でじゃれつくように僕のことを殴ってくる。
「らーっ!」
「~~~!!!」
「がァァァァァ!!!」
「にゃー!」
だが、今回出来上がった像に対して不満そうにしているのはイキシアだけ。
何もイキシア像の完成に喜ぶのは僕だけじゃない。
力を合わせて作り上げた魔物たちもその完成に各々鳴き声を上げて喜びを露わににしている……何なら、魔物たちの中には像に向かって祈り出しているものもいる。
えっ?待って、信仰対象にまでなるの?
祈り出している魔物たちを見て僕が驚愕している───そんなときだった。
『警報、警報、警報』
何時ぞやの声が頭の中に響いてくると同時に、赤く染まったディスプレイがいきなり出現したのは。
僕はディスプレイを表示させていない。
『警報、拠点に向かって丙Ⅰ型襲撃魔物ゲルトナーが侵攻中。繰り返す。拠点に向かって丙Ⅰ型襲撃魔物ゲルトナーが侵攻中。至急、応対されたし』
「えっ、なになにっ!?」
急に響き渡る声と赤く輝き、警戒色を発するディスプレイに困惑しながら僕はあたりを見渡す。
すると、こちらの方に近づいてきている一つの魔物の影があることに気付く。
あれは僕の魔物ではない。
「しゅ、襲撃イベント。文字通りにかっ!」
襲撃。
文字通りに襲撃魔物が僕たちの拠点へと襲撃を仕掛けに来たのだ。
「ま、マンネリ化防止にしては中々ハードだねっ!?みんなっ!」
僕はいきなりの出来事に驚愕しながらも、やるべきことをやっていく。
「見てわかるように敵の魔物が襲撃してきた!全員で対処するよ!あまり拠点に攻撃を与えて傷を負わせたくはないから。みんな!敵の方に行くよ!僕についてきて」
僕は魔物たちへと命令を下しながら地面を蹴って走り出し、ゆっくりとこちらの方に近づいてくる襲撃魔物の方に近づいてくる。
迎え撃つ場所としては未だに建築物を建てていない大きな広場の一角である。
「えっと、とりあえず中遠距離タイプは後方に。近距離タイプは前に!」
広場の方に続々と集まってくる大量の魔物たち。
とりあえずは巨人などの近距離タイプを前に置き、イキシアなどの遠距離タイプは後ろに置く。
僕は弓を持ってイキシアの隣だ。
「……随分と、デカいな」
こちらへと近づいてくる魔物は巨大な亀である。
地上からは中々全容を把握するのも難しく、その亀の一歩だけでも軽く地面が揺れるほどの巨体だ。
うちにいるどの巨人たちよりもデカい。
「めぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええッ!!!」
亀の動きは実にゆったりとしており、進む速度は非常に遅い。
でも、その巨体が故に一歩も非常に大きく、少しもすれば全員で立ち並ぶ
「その鳴き声はヒツジじゃないかなっ!?」
僕は亀こと丙Ⅰ型襲撃魔物ゲルトナーの上げた鳴き声にツッコミを入れながら、弓を持つ手に力を込める。
「すぅー!ジェアン!リーゼ!ヒガント!アン!みんなでゲルトナーへと突撃!その足取りを止めて!」
「「「「オォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」
僕は自分の魔物の中にいる巨人の中でもひと際大きい四人たちへと命令を下す。
彼女たちはそれぞれ全員が10mを超える巨体である。巨大な亀の魔物であるゲルトナーに負けていない。
「その他の近距離タイプは四人の援護!僕たちは遠くから攻撃していくよ!」
そして、巨人の四人以外にも僕は命令を下していき、それに従って魔物たちも動き始める。
初めての襲撃イベントが今、始まるのだった。
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